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コラム

「瞬」を読む!

シンプルに生き始めた僕ら

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ヴェリブは、フランス・パリ市が提供している自転車貸し出しシステム。市民の足としてだけでなく、観光客にも利用されている(c)Rcsmit

あなたは「シンプル」に生きているだろうか。

そう、シンプル。ここ数年、以前よりも生活者たちに見られる現象である。外食を控えて自炊の頻度を増やしたり、スキューバからランニングに乗り換えたり、スキルを活かして会社を独立したり、ブランドものよりファストファッションを好んだり、思い切ってテレビを処分したり――。要は、世の中と自分の間に介在する様々な要素を減らし、自分の嗜好に正直に、シンプルに行動する生き方。

その一つに、「自転車」もある。

最近、街でロードレーサーをカッコよく乗りこなす女性を見かける機会が増えたと思いません? 男女の嗜好の「先入観」を飛び越えることもそう。もっとも、「自転車に乗る」という行為自体が、シンプルライフの典型だ。事実、この5年間で自転車の販売台数は確実に伸びており、それも量販店で廉価なモデルを買うスタイルから、専門店で自分の嗜好に合わせたモデルを買うスタイルへと変化してきている。

近年、バイクの販売台数が落ち込んでいるが、要はその分、自転車に流れているのだ。昨年上半期の電動アシスト自転車の販売台数がバイクに並んだというニュースも、それを物語る。若者に限った現象でもない。かつてバイク乗りだった中年の男性たちも、最近は自転車に移行しているという話を聞く。自転車なら高級モデルでもバイクに比べれば安いし、購入した後に色々とカスタマイズできる楽しみもある。

僕自身も、かつては車がないと生きていけない人間だったが、2年前に車を処分して以来、すっかり自転車乗りになってしまった。仕事仲間でも、最近は自転車で移動する人が増えてきた。経済的だし、何より健康的だ。

なぜ、僕らの生活はシンプルに向かっている?

例えば、パリなどで一週間過ごしたりすると、日がな一日カフェで本を読んでいるだけで楽しいし、何日も同じ美術館に通うこともある。当然、テレビなんて見ないし、ネットに触れる機会も減る。何か特別なイベントなんていらない。街を散策して、路上で絵を売るアーティストの卵と、一言、二言、交わすだけで楽しい。移動は貸自転車の「ヴェリブ」。シンプルなデザインがパリの街角によく似合う。

僕ら日本人も、ようやくパリっ子たちと同じように、シンプルに日常を楽しむ術を手に入れつつあるのかもしれない。

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