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デザイナー2000人で取り組む「ユニセフ 祈りのツリー」プロジェクト

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クリスマス 被災地の子どもたちに笑顔のプレゼントを

広告界総出で被災地の子どもたちを笑顔にしよう――そんな呼びかけと共に「ユニセフ 祈りのツリー」プロジェクトが立ち上がった。アートディレクターの福島治さんが、HAKUHODO DESIGNの永井一史さん、電通ソーシャル・デザイン・エンジンの並河進さんに声をかけたのが発端だ。

「震災後、多くのクリエイターが被災地支援に名乗りを上げ、さまざまなプロジェクトが実施されました。そのこと自体はとても意義のあることです。しかし、個人がばらばらに動いていては大きな力にはならない。もっと、デザイン界や広告界全体が美大生など若いクリエイターも巻き込んで、全体で力を発揮できるような仕組みができたらと考えていました」と福島さんは振り返る。

広くクリエイターの参加を募り、大きな支援につなげる。その実現のためにふさわしいテーマとして選んだのが“クリスマス”だ。年末は震災から半年以上経ち、おそらく被災地への関心が下火になっている頃。何より、被災地の子どもたちはクリスマスを迎える準備も不十分であろうことは想像に難くない。ここで、デザインの力を使ってクリスマスプレゼントを子どもたちに届け、楽しいクリスマスの時間を提供できないかと考えた。

クリスマスオーナメントの例。家とツリー。博報堂プロダクツの内田成威さんがデザインした。このほか、トナカイ、くつした、ミラーボールの計5 種類が用意される。

このプロジェクトに参加するデザイナーは、5つのオーナメントのフォーマットから1種類を選び、同じ形のオーナメントを3つつくる。完成したオーナメントのひとつは都内で展示され、2つめはチャリティー用に販売され、3つめは被災地の子どもたちに届けられる。

「我々が震災の復興において少しでも貢献できることがあるとすれば、やはりそれはデザインの力だと思うんです」と永井さんは話す。オーナメントのデザインなら、多くのクリエイターが参加できるし、力を発揮できる。並河さんも「こういうときだからこそ、広告会社の壁を越えてひとつになって取り組みたいと思いました」と言う。

オーナメントが飾られたツリーは、被災地の子どもたちに贈られるだけでなく、さらに、クリエイターや美大生が直接被災地に赴いて、子どもたちとオーナメントづくりのクリスマス会も実施することにした。11月~12月には、都内の商業施設などに大きな「祈りのツリー」が登場する予定だ。

広告やデザインに関わるすべての人に参加を

このプロジェクトを主催という形で引き受けたのが、震災発生直後から、岩手、宮城、福島各県の被災地で子どもたちへの支援活動を続けている日本ユニセフ協会だ。同協会広報室の中井裕真さんは、被災地の子どもたちが次のような課題を抱えていると語る。

「学齢期の子どもたちに比べて、未就学の小さな子どもたちへの支援は、行政支援も含めて非常に限られていました。また、被災地の方々を励ますため、これまで多くの方が善意で避難所を訪れてくれました。それは素晴らしいことなのですが、ひっきりなしに開催されるイベントに、一種の“イベント疲れ”のような状況も生まれています。その一方で、多くの保育園や幼稚園では、混乱した状況の中、毎年行っていた年中行事の祝いごとすらままならない。現地で働く先生たちも悩んでいました」。

祈りのツリープロジェクトは、その課題の解決につながる可能性を持っていた。プロジェクトの中には、被災地の子どもたちを笑顔にするクリスマス会を開催するアイデアも含まれており、まさにユニセフの支援にふさわしい活動と考えられた。

このプロジェクトにはリーダーはいない。皆がフラットな立場で関われるようにしたいとの考えからだ。祈りのツリープロジェクトは、目標2000人の参加クリエイター全員によるプロジェクト。全体の骨格が決まった後、3人は仲間を募った。川口清勝さん、佐藤可士和さん、佐野研二郎さん、水野学さん、平林奈緒美さん、森本千絵さんをはじめとした20人あまりのクリエイターに、プロジェクトのメンバーとして一緒に動いてくれないかと声をかけた。「普段は個人の価値観を大切にし、行動している人たちなので、断る人も多いだろうと予想していました」と永井さん。しかし、ふたを開けてみればほぼ全員が快く参加を引き受けてくれた。

8月下旬には専用サイトがオープンし、参加の登録ができるようになる。「まずはとりでも多くの参加者を集めたい。12月にイベントを成功させることはもちろん、美大生など若い人に多く参加してもらうことで、次につながるノウハウを業界共有の財産にしていければ」と福島さん。デザイン界、広告界、美大生の力が結集した、祈りのツリーの実現に向け、プロジェクトは動き出したばかりだ。

ユニセフ「祈りのツリープロジェクト」

  • 主催:祈りのツリープロジェクト、日本ユニセフ協会
  • 運営:祈りのツリー事務局
  • 呼びかけ人:阿字地睦、上田壮一、内田成威、えぐちりか、川口清勝、キューリーメイ ジュリア、小杉幸一、佐藤可士和、佐野勝彦、佐野研二郎、澤田泰廣、戸田宏一郎、丹野英之、永井一史、中嶋貴久、長嶋りかこ、並河進、平林奈緒美、廣村正彰、福井崇人、福島治、福田秀之、細川直哉、松下計、水野学、森本千絵、吉田哲
  • 参加者:目標2000人以上(デザイナー、広告クリエイター、美大生 その他)
  • 世話人:福島治(福島デザイン)、永井一史(HAKUHODO DESIGN)、並河進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン)

月刊『ブレーン』もこのプロジェクトを応援しています。