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食の検定・食農フォーラム――北海道江別市の中橋賢一さん初代「食と農のかたりべ」に

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全国で活発化する「食育」の取組み

一般社団法人食の検定協会(東京都千代田区・代表理事/内田啓祐)は、食育基本法に掲げられている“国民運動としての食育”に共感し、その実現に寄与することを目的のひとつとして設立された。食と農への理解、食育の普及を目指し、教育プログラム「食農級」を開発し、2007年から検定試験を実施している。

「食農級」の教育プログラムは、日本人の食の基盤を支える「農」に着目し、「食農3級」「食農2級」と段階的にステップアップしていく構成で、これまでに2万5000人が受験してきた。2011年6月には「食農1級」検定試験が行われ、初の食農1級(161名)取得者が誕生した。これを記念し、12月10日には「食の検定・食農フォーラム」が開催され、プレゼンテーション・コンテストやトークセッションが行われた。


受賞者

選考結果発表と総評を述べる吉田企世子氏(女子栄養大学名誉教授、食の検定協会評議員)と食農1級取得者コンテスト応募者から選考された6名

『私の考える食育、それをどのように実践し伝えていきたいか。』と題する食農プレゼンテーション・コンテストには、食農1級取得者30名余が応募、選考された6名が参加し、さまざまな食育の取組みが語られた。

山口知恵さん

準グランプリを受賞した山口知恵さん(愛知県田原市、農業資材販売)。

中橋賢一さん

食農1級取得者によるプレゼンテーション・コンテスト『私の考える食育、それをどのように実践し伝えていきたいか。』でグランプリを受賞した中橋賢一さん(北海道江別市、IT企業勤務)。感激のあまり、思わず涙ぐむ。

小田和博さん(東京都八王子市)は『日本の食と食育。伝えたいものとその方法』と題し、食農ボランティアの仲間たちと一緒に始めた「食育ユニット」の活動を紹介した。

中橋賢一さん(北海道江別市)は、『子どもたちと創る地域の未来~北海道江別市での食育活動』と題し、大好きな北海道で育児と家庭菜園の趣味を活かし、家庭から娘の学校や地域へと広がる食育の取組みを紹介した。

岡田新一郎さん(東京都多摩市)は、『農業生産を通した「食育」の意義の浸透を目指す1つの試み』と題し、農と食の架け橋を目指す活動を報告した。

安井孝さん(愛媛県今治市)は、『地域を育み人をつなぐ食育の仕組みづくり』、山口知恵さん(愛知県田原市)は『食育―私のできること』、川西智子さん(愛知県尾張旭市)は、『1級取得者を最大限に活かして食育の大推進を』と題するプレゼンテーションを行った。

1人8分という限られた時間のなかで、熱のこもった発表が行われ、会場は感動に包まれた。すべてのプレゼンテーションが終わり、審査の後に行われた授賞式では、グランプリを受賞した中橋さんが、初代『食と農のかたりべ』に任命され、感動に涙ぐむ場面もあった。

食育基本法施行から6年 次のテーマは「旬」「躾」「自給率」

中村 靖彦氏

コンテストの授賞式のあと、トークセッションが行われた『“食育”―私が考える食と農の結びつき―』が行われた。コーディネーターは中村 靖彦氏(農政ジャーナリスト・日本食育学会会長)がつとめた。

服部 幸應氏

服部 幸應氏(服部栄養専門学校理事長・校長)

続いて行われたトークセッション『“食育”―私が考える食と農の結びつき―』では、まず、服部幸應氏(服部栄養専門学校理事長・校長)から「食育基本法」についての話題があがった。

服部氏は、「2005年に食育基本法が施行され、2006年からの5カ年計画で食育の認知度が上がってきたが、一般の人は、食育とは親子料理教室や体験農園のことだと思っている。そこで、2011年からの5カ年計画では、食育の3つの柱に立ち戻っていこうということになった」と基本理念の重要性を語った。

その3つの柱とは次の3つ。

  1. 選食力を養う:旬の美味しさ。安心・安全な食べ物を選びバランスよく食べる。
  2. 食事作法を身につける(しつけ):食卓を通じて社会生活でのルールやマナーを見につける。日本の食文化を見直して子供たちに正しい作法を伝える。
  3. 食料問題:農業や環境問題、日本の食糧自給率など食の大切さを地球サイズで考える。

さまざまな主体がそれぞれの視点で取組む食育活動

平本 真樹氏

平本 真樹氏(三菱地所株式会社都市計画事業室エコッツェリア協会事務局次長)

中橋賢一さん

グランプリを受賞し、初代「食と農のかたりべ」に任命された中橋賢一さん

続いて、三菱地所㈱エコッツェリア協会事務局次長の平本真樹氏から食育丸の内の取組みが紹介された。エコッツェリア協会では、地域の良い食材、生産者と触れる機会として、丸ビルや東京交通会館、東京国際フォーラムなどエリア各所で定期的にマルシェを開催している。一般の来街者や就業者だけでなく、レストランのシェフやスタッフが購入に訪れ、実際に取引が活発化している。また、東京都の食材を見直す「都産都消」の取組みも行われている。東京の野菜生産者のマルシェへの出店や、東京食材の利用、丸の内シェフズクラブとの共同による、都産食材の試食会や、生産者視察ツアーも紹介された。

近藤 卓志氏

近藤 卓志氏(特定非営利活動法人青果物健康推進協会専務理事・事務局長)

久留原 昌彦氏

久留原 昌彦氏(株式会社イトーヨーカ堂セブンファーム開発担当チーフディストリッビューター)

次に、イトーヨーカ堂青果部セブンファーム開発担当チーフディストリビューターの久留原昌彦氏が、販売の最前線から畑の中に入っていくセブンファームの取組みを紹介した。食品廃棄物を削減するために、従来、規格外品として廃棄されていた小ぶりの野菜を販売する試みが行われ、販売実績が好調だったことが報告された。

「購入した主婦に規格外の小ぶりのにんじんを買った理由を聞くと、安価だからというだけでなく、ハンバーグの付け合わせには小さいほうが使い勝手がよいなど、生活者のニーズを理解すれば、もっと廃棄を減らせることがわかりました。農業に入っていくことで店頭だけではわからなかったことがわかってきました」(久留原氏)

次に、NPO法人青果物健康推進協会(ベジフルセブン)専務理事・事務局長の近藤卓志氏は、当協会認定のベジフルティーチャーによるキヤノン、NTTデータ、NECなどの企業と一緒に取組んでいる「大人の食育」活動を紹介した。たとえば、仕事中の軽食や菓子類の代わりにみかんを食べる「オフィスdeみかん」は、ヘルシーでリフレッシュ効果があると好評を博したという。また、企業向けのワークショップでは、ダイエットや栄養のバランスに関する高度な質問も出てきて、食と健康への関心の高さを実感、「食農級」などによるしっかりとした知識の必要性を実感したという。

清水 ほづみ氏

清水 ほづみ氏(酪農教育ファーム清水牧場/愛知県刈谷市)

次に、愛知県で酪農教育ファームを実践する清水牧場の清水ほづみ氏は、酪農生産現場である牧場を教育の場として開放し、小学生の子どもたちが子牛を飼育する体験型学習を行ってきたことを紹介した。しかし、口蹄疫の問題以降、外部からの酪農場への出入りが制限され、子牛の飼育体験ができなくなってしまった。そこで、現在は原寸大の牛を描いたツールを使うなどして工夫して出前授業を行っているという。

さまざまな意見交換が行われ、最後に服部氏は「電気、ガスなどのエネルギーや食は生きていくために不可欠のもの。しかし、これまで教育指導要領に食育がなかった。これから食育を指導要領に入れていく。その意味で食育はこれからが本番であり、学校だけでなく地域や家庭との連携が欠かせない」と述べた。これを受けてコーディネーターの中村氏は、「食と農、そして環境問題への理解これからもいっそうの教育啓発が必要であり、食農級取得者の活躍に期待が寄せられる」との期待を語った。

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