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コラム

CSR視点で広報を考える

従業員の生存をかけて地震対応マニュアルを真剣に見直そう

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会社として行うべき喫緊の課題に対する対応

東大地震研究所の首都直下地震の予測発表の後、京都大防災研究所、筑波大、北大などからも巨大地震に対する警告が相次いでいる。試算結果はそれぞれ違うものの注意喚起という点では声をそろえて重要との認識だ。

大きな組織(会社)が時間のない中、対応できることは限られている。その中でも基本方針を決めるとすれば概ね以下のとおりとなる。

  1. 社員とその家族が被災した場合の臨時休業や事業の縮小・停止について、適時的確な意思決定と迅速かつ徹底した行動をとる。そのことにより社員と家族の安全、生命の維持を図っていく。
  2. お客様への安全供給事業の継続を図るため、状況に応じて休業範囲を店舗、食堂、作業所、工場、倉庫、オフィスの一部にとどめる。事業停止の事態は可能な限り回避し、弾力的な対応を図る。
  3. 外部の供給・取引先の中断・停止の恐れがあれば、事業縮小、事業停止の適否を検討する。
  4. 再開については、原則として1週間ごとに、また社会要請の高い特別の事業があるときは適時に、判断するものとする。
  5. 万一、社内に大きな被災状況・影響があった場合は、CSRの視点から適切な開示を行う。

実際の巨大地震が発生した場合は、各会社は、その被災状況に応じて関連業務の優先順位を決定し、個別の業務の縮小又は停止について判断することになる。会社の事業継続、事業縮小、事業停止のシフトへのイメージは図1のようになる。

また、今回発表された首都直下型地震に備えるためには、これまで整備していた地震対応計画では十分に対応しきれない部分が予想され、早急に見直しを行う必要がある。


図1

有事対応の基本は指示の明確化

会社が現時点で行うべきことは概ね以下のとおりである。

現状での課題点の確認

  1. 現状の態勢(組織、規程群、事業継続計画、避難計画など)のレビュー・見直し
  2. 今回の地震規模で想定される新たな危機管理項目不足への対応
  3. 規程体系の明確化による組織的対応(指示系統の明確化)
  4. 機能する危機管理視点からの初動アクションプラン(72時間)のレビュー・見直し
  5. 模擬訓練の実施とレビュー・見直し

ガバナンスの強化

  1. 地震発生時のステークホルダーは誰かを明確化する(従業員、消費者、取引先、近隣住民、行政、マスコミなど)
  2. 複数の事業間の統一ミッションを明確化し共有する
  3. 社内ステークホルダーの意識改革(ビジョン、向かうべき方向性・方針の明確化)

特に、従業員の生命・安全を優先することを考慮し、従業員配布用の地震対応マニュアルの作成、見直しをお薦めしたい。また、このマニュアルでは以下の項目を含めて検討されると良いと考える。

  1. 地震発生から復興までの全体の流れ(フローチャート)
  2. 地震発生直後の対応
  3. 避難場所
  4. 帰宅か社内に残るかの判断基準
  5. 社内外の避難所利用の手順
  6. 社内避難所の運営について
  7. 安否報告の手順
  8. ボランティア活動及び近隣住民との連携
  9. 社内施設・インフラの利用解放について
  10. 事業縮小、事業停止の再開について
  11. 日頃から準備しておくべき事項、物資
  12. 帰宅困難者への対応
  13. 帰宅支援ステーションの位置表示
  14. 災害伝言ダイヤルの使用方法
  15. 応急手当の方法
  16. 消火器の使い方
  17. 断水したトイレの使用方法
  18. 避難所生活のルール

さらに、名刺サイズの「サバイバルカード」を作成し、緊急連絡先、避難及びサバイバルに最低限必要な情報、既往症・アレルギーの有無・血液型などの個人情報、止血などの応急措置方法、日没情報などを書き留められるようにしておくと便利である。

有事の対策本部はコミュニケーションのWar Room

巨大地震が発生した場合などに設置される災害対策本部を一般的にWar Room(組織図の状況は図2を参照)という。混乱する危機的情報を整理し、分析し、発信する業務を一手に担っている。本来、有事の危機管理広報で行われている事実関係の精査や情報の優先順位・評価、ステークホルダー別の開示内容の作成などもWar Roomで行われている。常にHotな情報を扱っているが、最も重要なことは、被災拠点及び本社における信頼情報の確保と情報分析・評価である。


図2

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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