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コラム

CSR視点で広報を考える

首都直下地震被害予想で明らかにされるサバイバルへの警鐘

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首都直下地震は全く新しいタイプの地震 過去の経験は役に立たない!?

東大地震研究所の地震確率が報道されて以来、にわかに「首都直下地震」という言葉がひとり歩きしている。この「首都直下地震」については、内閣府の「防災情報のページ」で詳細に説明しているので一度内容を把握しておきたい。

特に概要を見ていただければ、大体の被害想定を理解することができるはずだ。

内閣府の資料によれば、「首都直下地震」は3つのプレート(北米、フィリピン海、太平洋)のプレート境界、プレート内の地震のほか、マグニチュード7以上の活断層地震、地殻内の都心直下および中核都市等直下地震を含めた18タイプの地震を想定している。

その中でも地震学者が「首都直下地震」の想定として最も注意喚起しているのが「東京湾北部地震」(フィリピン海プレートと北米プレートの境界で発生する地震)だ。この地震は切迫性があり、都心に大きなダメージ(震度6強)を与えるだけでなく、震度6弱以上の区域が他県(神奈川、千葉、埼玉など)にまで及ぶ広域災害となる可能性が指摘されている。

揺れによる全壊建物は荒川沿いを中心に広範囲に広がり、冬場18時で風速15m/sでは、環状6号、7号沿いの木造密集市街地で顕著な火災による焼失が予測されている。揺れによる建物全壊棟数と火災焼失棟数を加えた合計数は、東日本大震災約13万棟、阪神淡路大震災約11万棟と比べても比較にならないほど大きい約85万棟が想定されている。

85万棟の被害建物のうち77%を占める65万棟の被害は火災焼失によるもので、揺れによる被害(18%相当15万棟)や液状化(4%相当3.3万棟)、急傾斜地崩壊(1%相当1.2万棟)による被害の比ではない。

また、死者数は約1万1000人とされているが、その55%相当6200人が火災による原因で亡くなるとされていることに注目したい。このような状況から、阪神淡路大震災が揺れによる建物倒壊で、また、東日本大震災が津波による原因で多くの方が亡くなったが、「東京湾北部地震」では火災が明らかなキーワードとなる。

さらに、「東京湾北部地震」では、重傷者3万7000人を含む21万人の負傷者が発生することも特徴となっている。これは、阪神淡路大震災の4万人、東日本大震災の6000人を遥かに凌ぐ大きな人数である。

首都圏直下地震から生き残るための知恵

最初の揺れから生き残ったあと、やるべきことは一時的な避難場所の確保と被災情報の入手である。通常、消防ヘリやマスコミの報道ヘリが直ちに被災現場を撮影し、状況が徐々に詳らかになっていく。その中で最も重要なことは火災の発生カ所に伴う危機情報と道路・橋などの封鎖に伴う地域の孤立化につながる情報だ。前者は複数の火災発生カ所が合流して全焼地域となる可能性となる情報であり、後者は避難するためのアクセスポイントに影響が出る情報で、いずれも生死を分けるものとなる。

火災がキーワードとなる地震では、単に所定の避難所に逃げれば安全というわけではない。火災現場の近くでは類焼が拡大して避難所が火に囲まれるということも想定されるし、建物の不燃物による有毒ガスの発生など、風下にいることで死に至る可能性が十分考えられる。

その意味から一時的に避難した後でも携行するラジオ、携帯電話などから直近の災害情報を入手し、さらに安全な場所への避難を検討する必要が出てくる。しかし、そこで厄介な問題となるのは、瓦礫、鉄筋、ガラス片など、崩壊した建物の残骸の中を避難しなければならないことである。阪神淡路大震災でも経験したが、負傷者の多くは避難途中で負傷する。頭、手、足を防御することが重要となる。ヘルメット、軍手、安全靴(または最低運動靴)がなければ安全な避難は望めない。ガスを少しでも避けるにはマスクやタオルなどがあればさらに良い。

生き残るためには正しい情報、サバイバルに対する知識、避難への英断が要求される厳しい事態も想定範囲と考えるべきだ。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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