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コラム

WEB MARKETER’S view

【オウンドメディアマーケティング(1)】「ソーシャルな時代のオウンドメディア」

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井浦知久(ユラス 代表取締役)

ソーシャル全盛の時代なれど…

フェイスブックのIPO(新規株式公開)計画の全容が明らかになり、
グーグルをしのぐ資金調達力を世界に見せつけたことで、
ネット業界における検索ビジネスの次のビッグウェーブが
ソーシャルメディアであることをあらためて世界に印象づけました。

いまや世界中の老若男女が
夕食のテーブルや、子供や飼い犬の写真を撮って、
日々せっせとフェイスブックへアップすることに膨大な時間をつぎ込み
(自分でアップする分にはプライバシー問題など存在しない?)
見てもらったお返しとばかりに「いいね」「いいね」と社交にいそしんでいます。

筆者のような内気なタイプでも、たしかにオンラインの社交は苦にならないですし、
こうしてなんとなくソーシャルメディアで人と繋がっていることの安堵感は
困難をかかえる今の時代に対する不安を、少しでも緩和する重要な役割を担っている
ように思います。

企業にとっても同様で、半年先の市場や経済がどうなっているやもしれない時代に
藁(わら)にもすがる思いでこの便利なプラットフォームに救いをもとめて
何か画期的なマーケティング手法はないかと日々探っています。

実際、一部の企業はソーシャルメディアを使って成功を収めているという話も流れてきますが、
でもここは、眉に唾つけてしっかり現実を見て行きましょう。

企業がビジネスのプラットフォームにソーシャルメディアを選ぶというのは
他人の軒(のき)を借りるのとは訳が違って、
それこそ母屋(おもや)を借りて商売するのに等しいのです。

家主であるソーシャルメディアのポリシーや機能に全面的に依存することになりますし、
おまけに、そのポリシーは家主次第でいかようにも変えられてしまう可能性だってある。
それなりの覚悟が必要になるのです。

「いいね」と言ってもらったユーザーに、企業のアップデートをリーチできるのは
PRの観点からはたいへん効果的ではありますが、
もしも、企業がフェイスブックに登録したユーザーの属性を使って、
いきなりメッセージを送ったり、あるいはソーシャルグラフを辿って第三者にコンタクトしたり、
節度をわきまえずにアプローチすれば「世間」からつまはじきの目にあいます。

母屋を借りているのですから文句は言えませんが、
企業が一歩進んだマーケティング施策を実践したい場合には、自ずと限界が見えてきます。

少し前の話になりますが、ある時フェイスブックの英国法人の幹部が、
「近い将来、すべての企業のウェブサイトはフェイスブック上に載ることになる」
といった発言をしたところ
「企業の大切な資産である顧客情報をソーシャルネットワークの一企業に
依存するなどあり得ない」という反発の声も多く聞かれました。

そもそもウェブは自由なものですから、
ビジネスのプラットフォームを特定の枠組みに依存し、
企業の活動が制限されてしまうことには、強い違和感を持つ方も多いはずです。

自前の放送局でユーザーとダイレクトにつながり、メディア間のハブとなる

ところで、筆者は長いことCRMをベースにしたウェブマーケティングのサービスを
企業向けに提供してきました。
言わば、企業とユーザーを繋ぐコミュニケーションのためのサービスです。

筆者の会社がこれまで提供してきたものには、
イベントを自由に設定して参加するユーザーを集めたり、アンケートを取ったり、
あるいはユーザーをグループ化してメッセージを送ったりするサービスなどがあります。
古くから提供してきたこれらのサービスは、
今や、フェイスブックやGoogle+などがあたりまえのように実装しています。
これらはコミュニケーションをより円滑にするためのものですから、
ソーシャルメディアが扱うのは半ば必然なんですね。

こうしたコミュニケーションのための機能をソーシャルメディアがカバーするようになって、
筆者の会社が提供するサービスも徐々に違うスタイルのものに移行していきました。
ひとことで言うならCRMをベースにした「オウンドメディアのプラットフォーム」サービスです。
なぜなら、自社のサイトを単なる「情報提供のためのツール」ではなく、
「メディア」と捉えて意識的に顧客との関係性をつくっていこうと、
企業が考え始めるようになったからです。

例えるならオウンドメディアは自前の放送局のようなもので、
放送網がインターネット、放送設備がウェブサイトです。
そしてオーディエンスに対して直接自前のコンテンツ(番組)を提供し続けることで
顧客とダイレクトな関係性を創り、その関係を維持し発展させていくことができます。

このようなオウンドメディアマーケティングを実践し、成功しているのが
日本マクドナルドの「トクするケータイサイト」や
日本コカ・コーラの「コカ・コーラ パーク」といった先進的な事例です。

いまは、まさに企業がメディアとなって直接顧客との関係をつくり、
自社のビジネスを強化することができる時代なんですね。

一方で、いまは多様なメディアが相互に関係しながら共存する時代でもありますから、
企業は自社のサイトをハブにして、多様なメディアをつないで
自社の商品やブランドの情報を交換して活発化させることを考えています。

やはり企業の要は自社が所有するサイトです。
従来のようなペイドメディアでも他社のプラットフォームに依存したソーシャルメディアでもなく、
あくまでもオウンドメディアを中心に置いて、他のメディアを上手に活用しつつ、
企業独自のマーケティング施策を展開して、その効果をリアルタイムに把握することが必要なのです。

そして、把握した結果をもとに、メディアの最適化を模索し、費用対効果の最大化を図っていきます。
これってマーケターにとっての一つの理想ではないでしょうか。

テレビとインターネットが融合することで正確な視聴分析が可能になり、
おサイフケータイに加えてグーグルウォレットなどのモバイルウォレットが普及して
店舗などのリアルプレイスでの施策効果も
リアルタイムにフィードバックできる時代が来ようとしています。

そうしたデータを自社のサイトに集約して企業自らが分析し、
マーケティング施策やメディアの情報をコントロールしていくことが、
次の時代に企業が大きく飛躍するために欠かせない武器となるのです。

※このコラムは3回連載です。次回は2月23日に掲載します。

井浦知久(いうら・ともひさ)
人工知能系プログラミングを通じて、UNIXやインターネットの開発に従事後、ユラスを設立。オウンドメディアプラットフォーム「MA3」を企画開発し、日本マクドナルド、シスコシステムズ、ガートナー ジャパンなどの外資系有力企業への豊富なサービス提供実績を持つ。

【オウンドメディアマーケティング】