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「災害に強い経済社会の構築に向けて」日本経団連が政策提言

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米倉弘昌会長

日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)。

3月5日、日本経済団体連合会は、「災害に強い経済社会の構築に向けて~企業・経済界の取組みと行政に求められる対応~」と題する政策提言を発表した。

その内容は、「企業の災害リスクの整理・見直し」「災害対応力強化に向けた方策」「行政への要請」「官民の連携により取り組むべき課題」の4つの柱で構成されている。
※詳細はウェブサイトからダウンロード可能。

首都直下型大地震の経済被害は112兆円(想定)

災害等リスクの整理・見直しでは

  1. 地震・津波(首都直下地震、東海・東南海・南海地震
  2. 大規模水害
  3. 新型インフルエンザ

をあげている。

現在、中央防災会議と東京都が公表している被災シナリオによると、マグニチュード7.3 規模の東京湾北部地震では、最悪の場合、死者約1万1000 人、負傷者約21 万人、都心部を中心に帰宅困難者約650 万人が発生し、建物の全壊・火災焼失被害は約85 万棟、経済被害は112 兆円に達するとされている。とりわけ、環状6号線、7号線沿いをはじめとする木造密集市街地で広域的かつ同時多発的に発生する可能性が高い火災による被害が甚大となると想定されている。

東日本大震災を踏まえ、津波も含めた被害想定の見直しが必要であり、首都直下地震への備えを強化することは企業にとって喫緊の課題であるとしている。

東海・東南海・南海の連動型巨大地震の経済被害は81 兆円(想定)

東海・東南海・南海地震の3つの地震が同時に発生する連動型巨大地震については、現在、中央防災会議の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」で、地震や津波の規模、被害想定等に係る検討が行われている。2011 年12月27 日の中間とりまとめでは、想定される最大規模のマグニチュードの暫定値は9.0 と発表され、従来の想定M8.7から引き上げられた。

同検討会の専門調査会による被害想定(検討中)は、最悪の場合、建物の全壊、火災、崖崩れによる死者数は約1万5700 人、津波による死者数は約9100 人となり、死者数は最大2万5000人、また、経済被害は53~81 兆円とされている。今後、震度や津波の高さ・到達範囲、火災等の二次災害などについても、より具体的な被害想定が検討される。

大規模水害で利根川や荒川の堤防が決壊すると合計350万人が浸水(想定)

昨年の台風12 号、15 号をはじめ毎年、台風による被害が発生している。また、近年は「ゲリラ豪雨」と通称される局地的大雨が頻繁に発生するなど、大規模水害のリスクが高まっている。

中央防災会議が取りまとめた首都圏における大規模水害に関する検討報告によれば、埼玉県加須市で利根川の堤防が決壊した場合、最悪の想定では、東京23 区内まで氾濫流が達し、浸水面積は約530 ㎢、浸水内人口は230 万人、まったく避難しなかった場合の死者数と孤立者数はそれぞれ約2600 人、約110 万人とされている。

また、同様に東京都北区で荒川の堤防が決壊した場合は、浸水面積は約110㎢、浸水内人口は120 万人、まったく避難しなかった場合の死者数と孤立者数はそれぞれ約2000 人、約86 万人とされている。その際、現状の水防対策では、地下鉄は17 路線、97 駅にわたって浸水するとされている。

新型インフルエンザのパンデミック

鳥から人に感染する新型インフルエンザウイルス(H5N1 型)では、免疫を獲得していないため、世界的な大流行(パンデミック)となり、大きな健康被害と社会的影響をもたらすことが懸念されている。

政府の新型インフルエンザ対策行動計画では、鳥由来の新型インフルエンザの発病率は全人口の25%、致死率については、アジアインフルエンザ等並みの中程度の場合は0.53%、スペインインフルエンザ並みの重度の場合は2.0%と想定されている。

これれらインフルエンザの流行による事業活動への影響については、全国的に従業員本人の罹患や家族の罹患等により、従業員の最大40%程度の欠勤が想定されている。その結果、物流の停滞等により、経済活動が大幅に縮小する可能性がある。

なお、政府は、2012 年通常国会に新型インフルエンザ対策のための法案を提出することを予定している。

災害対応力強化に向けて「地震対策10カ条」

経団連が実施したアンケート調査によると、「東日本大震災に際して、企業の平時からの防災・減災対策が一定の機能を果たしている」という。ただし、想定を超える災害規模の場合は、事前の備えが機能しなかった面もあり、従来の想定の見直しと平時からの防災・減災対策を一層強化していくことを呼び掛けた。

そのガイドラインとして、東日本大震災での事例を踏まえ、「企業に求められる地震対策の10 箇条」を公表している。

  1. 災害対策本部の体制整備と機能強化
  2. 社員とその家族の安否確認手段の多重化
  3. 実践力向上に資する訓練の継続的実施
  4. 全社員の防災意識の向上と社内人材育成の推進
  5. 適正な備蓄品目の選定と備蓄量の確保
  6. 施設の耐震化・不燃化と什器の固定の促進
  7. 流動性資金と復興資金の確保
  8. サプライチェーンへの支援と連携強化
  9. 社内外の帰宅困難者に関する取組みの促進
  10. 地元自治体や地域との積極的な連携強化

電源確保や復旧に向けた対応も課題

さらに、発災後の停電や計画停電に際して、自家発電設備を保有していない施設では事業継続が困難であったことから、非常用電源や自家発電設備などの予備電源(含む 燃料)の確保が重要である。加えて、故障や浸水のリスクを想定して、設置場所にも十分留意する必要がある。液状化や津波対策も改めて見直しが必要としている。

復旧に向けては、初動時の「自分の身は自分の身で守る」という意識の徹底、二次災害防止措置、迅速な避難、負傷者への応急手当、本震や余震、津波、火災等の二次災害などに係る情報収集などの課題があげられている。

業界団体や行政、NPOなどとの連携にも言及

そのほか、東日本大震災で明らかになった事業継続や被災地支援の課題が述べられた後、提言では、業界団体や行政、NPOなどの外部との連携・協力の重要性を述べるとともに、経験を活かし、災害に強い社会を築いていくことが、肝要と締めくくっている。

今回の日本経団連による政策提言は、公表して終わりではなく、実際に各業界団体や個々の企業の災害対策見直しへと発展していくことが期待される。

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