山本 達郎(北京龍楽広告有限公司(北京ログラス)代表)
コネ社会、中国。大学への入学も就職もビジネスの取引も、医者の手術でさえも金と人脈次第とも言われるこの国で生きるために不可欠なのが「グワンシー」と呼ばれるビジネスネットワークだ。一方、3億人以上がSNSのアカウントを開き、日々2億件ものつぶやきが発せられ、オンラインのコミュニケーションが急速に発展する。ソーシャルメディア上では誰もが発言権を持つようになり、この社会はどう変わっていくのか。中国でのSNSの発展の過程と共に検証する。
中国で不可欠の「グワンシー」
中国は法治国家というよりも、人治国家であるとはよく聞く言葉である。ビジネスでも「グワンシー(关系,Guanxi)」と呼ばれる人的ネットワークによって取引が決まることが多い。このグワンシーは「関係」を中国語の発音で表したものだ。中国人や中国企業と取引をしようと思ったら、グワンシーの意味を理解し、駆使していくことが必要不可欠だ。
中国では「誰だれを知っている」「コネがある」ということは、日本とは比べ物にならないくらい重要だ。特に政府系機関への人脈などはその最たるもので、まともに申請すれば許可が下りないか、下りるまでに数カ月、下手をすれば1年以上もかかるようなものも、わずか数日で下りることもある。
そもそも、なぜこのようになったのか。歴史的に見ると文化大革命が大きな1つの要因だったと言える。それまで是とされてきた知識や思想、孔子や儒教などが否定され、従来の価値観が根底から覆された出来事であった。以来、中国人は自分の身は自分で守るしかないと考えるようになったのだ。自分を大切に、そして、自分の家族、親戚、仲の良い友人、つまり朋友(=ポンヨウ)は極端に大切にする。他にも、老郷(ラオシャン)と呼ばれる同じ出身地の者や、老同学(ラオトンシュエ)と呼ばれる同じ学校の出身者も大切にする。また、誰に紹介され、共に食事をし、白酒(バイジュウ)と呼ばれる、アルコール度数の高い(50°を越すようなものが多い)お酒を乾杯しあったなどという関係が、グワンシーとなっていく。こうした血縁や人の繋がりは日本よりもかなり重んじられる。
ネットの向こうの友だちと1人っ子
さて、この家族だが、1979年に始まった「1人っ子政策」により、33歳以下は基本的に1人である。両親とその祖父母の6つの財布を持った「小皇帝」と呼ばれ、激化する受験戦争とも相まって、かなり過保護に育てられる。兄弟のいない彼らは、自宅のパソコンからIM(インスタントメッセンジャー)であるQQを立ち上げ、ネットの向こう側にいる友だちと繋がるのである。
山本 達郎(やまもと たつお)北京龍楽広告有限公司(北京ログラス)代表
1980年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。在学中に「ログラル個人指導塾」を立ち上げ、3年間経営を行い売却。大学卒業後、中国 北京語言大学にて中国語を学び、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)でPre-MBAコースを修了し、帰国。2006年4月に、中国で北京龍楽広告有限公司(北京ログラス)を設立。2011年、アエラの「中国に勝った日本人100人」に選ばれる。 著書に『中国巨大ECサイト タオバオの正体』・『中国版ツイッター ウェイボーを攻略せよ!』 (共にワニブックスPLUS新書)
※続きは『人間会議』2012年夏号(6月5日発売)「ソーシャルメディアの本質」特集でお読みいただけます。ご予約はこちらから。
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