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日本はインターネット選挙後進国。理由は誹謗中傷が恐いから ――ツイッター議員の半分以上がSNSを使いこなせていない

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西田 亮介 立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授
小野塚 亮 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程

「ソーシャルメディアの王様」は日本の政界にも誕生するか

ワシントンポストはオバマ大統領を「ソーシャルメディアの王様」と呼び、その後共和党もソーシャルメディアを駆使するようになり、今年の大統領選は史上初のソーシャルメディア選挙とも言われている。では、日本の政治家のソーシャルメディア活用の状況はどうなっているのだろうか。

アドバタイムズ(5月18日)の太田 英基(世界一周バックパッカー)氏の連載「世界に出遅れている日本のインターネット選挙」にもある通り、アメリカはもちろん、イギリス、フランス、ドイツ、お隣の韓国でも選挙活動にインターネットが活用されている。

日本でも10年以上前からインターネット選挙活動を解禁するための運動や法案が議論されてきた。民主党はインターネット選挙解禁をマニフェストに掲げて政権をとった。
が、いまもインターネット選挙活動は解禁されていない。
インターネット選挙推進派のある国会議員はその理由を、「性格的なもの」という。

「誹謗中傷だらけになったらどうするんだ」
「敵対候補から悪口ばっかり書かれたら立ち直れなくなる」
「悪質な書き込みを防ぐ方法がない以上、賛成できない」

国会議員のあいだではいつもこの話題になるという。
性格の問題に加えて、日本の政治家は有権者と直接コミュニケーションできるソーシャルメディアを使いこなせていないという問題もある。
気鋭の若手社会科学者らによる、最新の研究から、ツイッター議員の半数以上が、双方向な機能を使いこなせていないことが明らかになった。

「ツイッター議員」の誕生

「ツイッター議員」という言葉から何を思い浮かべるだろうか。

ツイッター議員とは、ツイッターを利用してコミュニケーションや宣伝に活用している政治家のことを指している。いつの間にかインターネットのなかでそのような呼称が広まった。

『平成23年版 情報通信白書』はグリー、ミクシー、モバゲータウンなどのユーザー数が2000万人を越えたことを記している。これらのサービスは日記を介した私的交流やゲームの利用が中心だった。だが、同白書によると、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアも1300万人近くのユーザーを持つようになった。ソーシャルメディアは情報交換や就職活動、転職、自己PRなど実用用途に用いることもできる。

このような情報を耳にすると、ツイッター議員は、ツイッターという新しいメディアを駆使して、国民と相互に意見の交換を行い、新しい政治的影響力をもつようになったのではないかと期待したくなる。

インターネット黎明期から欧米を中心に「〇〇が政治を変える」という言説が存在していた。ソーシャルメディアの情報伝播の特性には拡散性、速報性、相互浸透性といった特徴がある。しかも低コストでいわゆる一般的な個人と政治家のような公共性を帯びた著名人が直接情報をやり取りすることができる回路となっただけに、自ずと期待は高まる。

では、果たして日本のツイッター議員たちのコミュニケーションは実際にはどうなっているのだろうか。筆者らは暫定的にツイッターを利用する国会議員に絞って研究を始めた。

~中略~

「ツイッター議員」の4類型

分析から得られた4つの類型の特徴を整理すると、「A群:双方向性が高く、伝播力も高い議員」「B群:双方向性が低く、伝播力が高い議員」「C群:双方向性が高く、伝播力が低い議員」「D群:双方向性が低く、伝播力も低い議員」と呼ぶことができる。なお、それぞれの類型が全議員に占める比率は、それぞれ11.7%、18.8%、16.4%、53.1%であった。

これらの分析は「ツイッター議員たちはソーシャルメディア上で頻繁に他者と情報交換し、影響力を持っている」という仮説に対して否定的であることを示唆する。そもそも半数以上のツイッター議員らはツイッター上であまり他者と情報交換を行わず、かつ影響力を持ちえずにいる可能性がある。

~中略~

ツイッターを使いこなす若手議員

本稿で紹介するのはベーシックな定量分析の結果のみであるが、それでもいくつかの示唆が得られる。新しい政治を体現するかのように思えるツイッター議員たちの半数は「双方向性が低く、伝播力も低い議員」であり、うまくツイッターの技術特性を活かせずにいる可能性がある。

当然といえば当然だが、適切に使いこなしている議員らはフォロワー数といった潜在的な政治的影響力に関連する数字が大きくなっている。
詳細は割愛するが、個々の議員クラスタの内実を見ていくと興味深い。たとえば使いこなしている議員らは比較的若く、当選回数の少ない議員が多かったり、あまり使われていないアカウントのなかには「なりすまし」を防ぐために暫定的にアカウントだけを開設している例もあった。

※詳細は『人間会議』2012年夏号(6月5日発売)「ソーシャルメディアの本質」特集でお読みいただけます。ご予約はこちらから。

西田氏

西田 亮介(にしだ・りょうすけ)
立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。1983年京都生まれ。慶應義塾大学大学院・政策メディア研究科後期博士課程単位取得退学。専門は情報社会論と公共政策。情報と政策、ソーシャルビジネスなどを研究。講義ではメディア・リテラシーなどを担当。最近の共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)『大震災後の社会学』(講談社)など。
小野塚氏

小野塚 亮(おのづか・りょう)
1987年群馬生まれ。一橋大学商学部卒。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程二年。経済学、ネットワーク論、倫理学、プログラミング技術を基礎にメディア論を専攻。ソーシャルメディアと政治・制度に関する研究を行っている。最近の学会報告に「ソーシャルメディアは政治家を雄弁にしたか―Twitter を活用する国会議員の双方向性と伝播力の分析―」(日本公共政策学会)がある。

『人間会議2012年夏号』
『環境会議』『人間会議』は2000年の創刊以来、「社会貢献クラス」を目指すすべての人に役だつ情報発信を行っています。企業が信頼を得るために欠かせないCSRの本質を環境と哲学の二つの視座からわかりやすくお届けします。企業の経営層、環境・CSR部門、経営企画室をはじめ、環境や哲学・倫理に関わる学識者やNGO・NPOといったさまざまな分野で社会貢献を考える方々のコミュニケーション・プラットフォームとなっています。
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