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コラム

CSR視点で広報を考える

株主総会間近、経営者の電力不足対応に株主が注目

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全国で電力不足に!今年の夏の事業継続に株主からの質問は集中!?

今年も株主総会まであと1カ月を切り、秒読み態勢となった。例年、多業種で不祥事が発生しているなか、内部統制の強化だけにとどまらず、地震やゲリラ豪雨などの自然災害対策に加え、喫緊の課題として節電対策や事業継続計画に株主の関心が集まりそうだ。

5月18日に経済産業省より「夏季の節電メニュー(事業者の皆様)」が公表されると、関心の高さを証明するかのように、しばらくはサイトアクセスが集中して一時的に閲覧ができない状況が続いた。気象庁の長期予報でも今年の夏は九州・四国・関西と猛暑の可能性が指摘されており、関西電力および九州電力管内での電力供給に危機感がつのっている。

比較的安定供給が可能な東北・東京電力が数値目標なしの節電となっているが、他の電力会社管内では厳しい節電要請が公表された。特に、関西電力の15%以上の節電、九州電力も10%以上の節電と管内の企業には厳しい状況が続く。一方、一番厳しい関西電力管内においても電気事業法第27条に基づく電気の使用制限を行わないとしている。

現時点では計画停電の実施までには至っていないが、気温の急激な上昇、火力発電所のトラブル停止などにより需給ひっ迫が想定されれば、警報が発令され、鉄道の間引き運転、公共施設の冷房設備の停止、企業への生産調整要請などの後、管内の段階的計画停電にシフトする可能性も少なくない。

前述の「夏季の節電メニュー」(事業者の皆様)を見ると、オフィスビルで15%以上を節電しようとすると、執務エリアの照明を半分程度間引きするだけで13%の節電効果があるとしている。これだけを見ると「15%以上節電」は、それほど難しくないと考える人も少なくないだろう。しかし、実際、多くのテナントが入る雑居ビルが多い関西エリアなどでは、すべてのテナントに要請して照明器具を一定量外してもらうことはかなり難しいと考えるべきである。

そうなると、使用されていないエリアの消灯および空調の停止、室内温度を28℃、長時間離席する場合のOA機器の電源オフなどを全館徹底した場合でも12%節電を確保したにすぎない。この他にもエレベータ設備を止めたり、自動販売機の電源を切るなど色々な利便性の犠牲を払って15%以上を実行する必要が出てくる。レストランやホテルなどは顧客サービスが命だけにどこまで照明等の設備の間引きができるか微妙なところである。ましてや多くの電力を使用する工場を有する製造者にとって15%以上の節電は並大抵のことではできない。デマンドコントローラー(使用電力監視装置)を導入し、電力の使用状況の厳しい監視を経て、確実な実行が果たせることになる。

こんな状況の下、「需給検証委員会」は、関西電力管内で、昨年の東京電力管内で想定されたピーク電力不足よりも厳しい状況になる恐れがあること、九州電力、北海道電力および四国電力管内でも電力需給ひっ迫が見込まれる可能性があることを指摘している。

関西電力管内での15%以上節電要請は、昨年の需要実績対比で14.9%減、2010年対比では18.4%減と非常に苦しい状況にあり、単に要請ということではなく「確実な実施」が期待されている。それだけに一歩誤れば、直ちに緊急措置が講じられる危機に陥る状況も想定範囲と考えておかねばならないだろう。

節電計画の着実な実行と計画停電実施の際の事業継続計画の策定

電力不足への対応はもはや想定外のリスクではない。詳細なシミュレーションと対策、さらに万一の際の事業継続計画がなければ経営者としての責任が果たせないと考えるべきである。株主総会の単なる質疑対策としてではなく、事業全般に及ぶ重大リスクとして真剣に検討すべき課題としてとらえるべきものである。

東電管内では昨年、電力使用制限令(電気事業法第27条)の適用を受け、休日・祭日を生産日とするピークシフトやインフラ設備のピークカットなどを求められた企業が多くある他、計画停電という緊急措置も経験した。電力不足というリスクがどれだけ重いものであることを彼らは身をもって経験しており、今年の対策は万全であるところも多い。一方、関西や九州に本拠地を置く企業の一部には、電力不足の脅威を未だ感じていない経営者も多くいるように感じる。「そうなったときにはどうにかなる!」(Follow the fortune)というような無責任な考えは捨てるべきだ。

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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