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コラム

中国で広告一筋7年目

日系企業、成功への糸口

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ここ数年、本当に多くの日系企業が中国に進出してきています。安い人件費を求めて工場などで進出していた昔とは違い、現在一番多いのは、中国を市場としてみている、広告会社のクライアントになりえるような企業です。ただし、本当に成功している、と言える会社はごく少数だと思います。今回は、日本企業は中国でなぜ成功しにくいのか、について書かせていただきたいと思います(もちろん成功しているといえる企業も少数ではありますが、あります)。

中国は戦国時代です。競争相手は日系企業だけなく、外資系や中国ローカル系と、日本国内より圧倒的に激しい競争環境がここにはあります。販売されている車種が世界で一番多いマーケットは、上海というデータもあります。

ここで、中国に進出しようとしている日系企業の動きを想像します。

企業の担当者がそれなりに中国のことを調べるのですが、4Pのなかでプロモーションはやはり最後です。まずはどんな商品を製造して販売するか、いくらぐらいで売れそうか、どういうルートで物流は……ということを研究します。外資系企業ならではの法規制、金融規制、資金繰り……考えるべきことは山ほどあります。

万博時にリニューアルされた上海のタクシー

そしてやっと進出の目処がついたころ、日本本社の社長や役員かが出張してきます。中国のタクシー(上海では初乗り150円)やマッサージ(1時間1000円)、キャバクラ(略)などを経験し、中国人社員の人件費(大卒新卒月給4万円)の話などをして、物価が安い=広告費も安い=準備すべき広告費も少なくて済む、と勘違いするんですね。これが大問題!!

実は中国の広告媒体費は、ものすごく高い。例えばテレビCM。湖南衛星という民放で一番の人気チャネルのゴールデンタイムの「快楽大本営」という番組に15秒CMを一回流すと250万円くらい。ちょうど日本でフジテレビ月9(月曜夜9時からのドラマ枠)の15秒1回が250万円くらいの計算になりますので、単価は同じくらいですね。もちろん人口や視聴率が違うので単純には言えませんが、計算するとパーコストは軽く東京キー局を超えます。

雑誌広告では、日系のRayやMinaの中文版が大人気で、発行部数は100万部以上と言われています。この媒体価格は4C1Pで100万円以上もします。欧米系女性誌、VOGUEやmarieclaireでは、200万円以上することもザラです。

例えば、下記はビール会社の2009年、2010年の広告費のグラフなのですが、バドワイザーや青島ビールがものすごい広告予算を投下していて、日系3社は見る影もありません。

この機会に私は声を大にして言いたいのですが、中国に進出するなら、ガッツリやったほうがいい! もう、ものすごく本気でドンと来て欲しい!! もしそこまで投資出来ないなら、やり方を考えたほうがいい! 例えば上海は諦めて地方から攻めるとか、イチかバチかカンヌが獲れるかもしれないような斬新奇抜なキャンペーンをやるか、とか。(*数字は中国の国営テレビ局CCTV子会社CTR社によるもの。単位1000人民元。概算なので正確でない可能性があります)

中国の広告はまだ「告知」の傾向がとても強く、最近世界中で流行しているような「エンゲージメント」というレベルまで来ていません。広告を大量に出稿する、もしくは有名タレントを使って、「お金がある企業だから安心な製品つくってまっせ」と消費者に伝えることが目的(ここ2、3年でやっとプロダクト・プレイスメントの映画やマイクロムービーなども出てきて、製品に情緒的価値を与えたりする試行錯誤をしているような気がします)。

日本の会社の商品は(現時点では)、中国製や海外製よりも絶対にいいですし、製品には語れるだけの歴史や哲学などのバックグラウンドがあることが多いと思います。ただし問題は、日本からは業界NO1や2、3のスターの会社が中国に進出してきて、上記のような広告予算の圧倒的な差があるのに、日本で取っていたような「リーダー戦略」しか取らない。僕は、いつもクライアントさんに、「圧倒的スターになるか、誰にも嫌われずに誰にも好かれないか、それとも10人に1人に好きになってもらえればいいのか、どれを目指しますか?」と聞くのですが、僕は現状ではほとんどの日本の会社は、最後の一つ、10人に1人に好きになってもらう方法しか、成功する可能性はないのではないかと思っています。

多くの日本の会社が中国でまだ成功できていないのを見て、本当に歯がゆい思いで一杯です。日本企業が中国でモノを売るお手伝いをしたくて、僕はここで仕事をしています。広告屋が言うのもヘンですが、その手段がPRでも店舗でもいいと思っています。広告会社の枠を超えて、進出検討時に最初から全部一緒にお手伝い出来れば最高です。日本でもそうですが、広告会社が最後のP(=プロモーション)だけをやる時代はとっくに終わっているのですから。

いつでも是非お気軽にお声がけください!(←営業してしまいました!すみません!)

第3回「中国人スキ?キライ?」はこちら

重松 俊範「中国で広告一筋7年目」バックナンバー