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北欧発アパレルの日本版を開発、創業社長が取り組むブランド化~シリーズ「ブランドマネジメントの今」第7回

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2008年創業「誠や」(東京・渋谷)代表取締役 三原由梨乃氏の場合

日本の老舗や中小企業が、積極的にブランドマネジメントに取り組み始めている状況について、レポートしている本シリーズ。今回は2008年に介護支援サービスで起業した、新興企業「誠(まこと)や」による取り組みを紹介。海外発のアパレルブランドを日本市場向けに展開しようと取り組む、創業社長のブランドマネジメントの考え方とは。

※『宣伝会議』15日発売号にて、宣伝会議主催のブランドマネージャー育成講座と連動して連載中のシリーズ「日本企業とブランドマネジメントの今」より抜粋。本記事は2012年3月15日発売号に掲載されたものです。

福祉先進国の風景にヒント、経験もとに「脱・介護服」へ

2008年に創業した「誠や」は現在、介護やユニバーサルデザインのアパレル事業など、ライフスタイル支援に関わる5つの事業に取り組んでいる。中でも現在、最も注力しているのが、スウェーデン発の着脱しやすいアパレル製品を扱うブランド「オーサステンマルクデザイン」の日本展開だ。現在、日本市場向けの製品開発を進めている。

「オーサステンマルクデザイン」はスウェーデンの元准看護師、オーサ・ステンマルク氏が立ち上げたブランドである。身体が不自由な人でも着やすく脱ぎやすい衣服のカテゴリーとして、スウェーデンではトップシェアを誇る。機能性だけでなく、ファッション性も併せ持っているのが特徴だ。

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“着やすく脱ぎやすい”衣服のカテゴリーとして、スウェーデンではトップシェアを誇る「オーサステンマルクデザイン」。このブランドの型紙を踏襲し、日本独自の製品展開に向けて準備を進めている。

誠やの代表取締役、三原由梨乃氏が「オーサステンマルクデザイン」に出会ったのは、起業したのちに地元の商工会議所主催のツアーで北欧を訪れたことがきっかけだ。三原氏は現地で高齢者向け施設を視察した際に、介護を必要とする人々も健常者と変わらないおしゃれを日常的に楽しんでいた風景を目にする。その様子に日本とのギャップを感じたのが大きな契機となった。

実は三原氏自身も、20代の頃から十数年にわたり父親の介護を経験している。「日本でも“介護服”というジャンルがあるが、機能性を重視しすぎて、デザインがあまりに日常服とかけ離れてしまう製品がほとんど。家族に着せたい、とはとても思えなかった」といい、今までにないコンセプトのブランドを立ち上げようと決意する。

型紙を踏襲し独自製品開発、日本流のロングライフデザイン

ただ、スウェーデンの製品をそのまま輸入販売するわけではない。型紙は同じものを使っているが、日本人向けにセミオーダー形式の独自製品を開発していく。「気候や湿度が違うので適した生地も異なり、何より日本人の衣服に求める縫製のクオリティは欧州よりも高い。より日本人の感性に適したブランドに育てていきたい」。

日本版「オーサステンマルクデザイン」では、品質にこだわるとともに、日本の伝統文化である着物のように、長く代々愛される衣服を扱うブランドを目指す。そして「介護服としても使える製品だが、あくまでも一般のアパレル。ユニバーサルデザインでも介護服というカテゴリーでも売らない」という信条もある。誰でも日常的に、長く楽しめるような衣服でありたい――。

そのような考えから優れた繊維・縫製技術を求め、茨城の結城紬などの織元や日本各地の繊維組合、研究機関などと連携し検討を重ねてきた。「ファッションの地産地消とともに、将来的にはユニバーサルデザインという壁すらも超える、新しいジャンルのアパレルブランドとしての展開を目指したい」と意気込む。

ネガティブな課題を解決する、“孫の手”のような企業目指す

三原氏は2012年2月、このブランドをどのようにコントロールしていくべきかという課題を解決しようと、宣伝会議のブランドマネージャー育成講座を受講した。

起業する以前は不動産営業や人材開発などに携わってきたため、当然ながらブランドマネジメントの実務に関わったことはない。商品開発やブランド構築はもちろん、物流管理や販路の検討など、社内外の協力者から多数のヒントを得て進めているという。

今や介護は誰しも直面する問題であり、“する側・される側”ともにナイーブな悩みや不安を抱えてしまうものである。それでも介護の経験者として、「いつかは訪れる“死”というものに対しても、ポジティブでありたい」というのが三原氏の一貫したスタンスだ。今後はそのような誠やの、そして経営者である自分自身の姿勢を伝えていくブランディングも課題となりそうだ。

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「誠やが目指すのは“孫の手”のように、いざ必要になったときに“あったら便利”だと思ってもらえる存在」。イメージは、漫画「サザエさん」に出てくる町の酒屋の“三河屋さん”。「誠や」という社名には誠心誠意という意味だけでなく、気軽に声をかけてもらいたいという思いも込められている。

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誠や 代表取締役 三原由梨乃氏
(Yurino Mihara)
1977年生まれ。東京都出身。不動産営業・人材開発などを経て、2008年に「誠や」創業。東北福祉大学社会福祉学科通信学部在学中。

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