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コラム

最新米国小売業からプロモーションをハカる。

O2Oを生活者・買い物客の視点でハカる。

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O2O(オンライン・ツー・オフライン)について考える際に、日本におけるスマートフォンの普及率やPC環境を知ることと、リテールとメーカーの2つの視点のハカり方について、このコラムでも触れてきました。

今回は、最も大切な「生活者・買い物客」の視点からハカりたいと思います。「売り手」と「作り手」の視点からだけで捉えると、展開や効果にズレが生じます。では、生活者とネットとリアル店舗をつなぐそれぞれの場面において、何が影響をするか、それらを上手に捉えた日米のリテールの展開事例から考えたいと思います。

まずは、生活者がネットの情報に触れる時

情報への最初の接触がリテール企業のウェブサイトやメール配信から始まる場合、まずはこのサイトの構成・表現がポイントとなります。商品のラインアップや値段のほかに、構成・表現が買い物客自身の関心ごと(自分ごと)に触れる「テーマ」であることが大切になります。

これは、売り場における訴求やテーマづくりと同様ですが、ウェブサイトやメールの中で商品やサービスが、より魅力的に、より簡潔にキモチのスイッチを押す仕組みや表現になっていることがポイントです。さらにECサイトとの違いは、このキモチを「リアル店舗に行きたくなる」ものにつなげる工夫が必要な点です。

そのアイデアの一つに、売り場や商品を通じて体験・実感できる〈五感〉の追求があります。サイトの中で描かれる世界観やシーンが、聴覚・視覚を刺激して、売り場や商品の「楽しさ」「おいしさ」を連想をさせるものであれば、「買い物しに行こう」というキモチを一層高めることができます。

生活者を買い物客へ

また、オンラインで刺激された生活者をリアル店舗へ導く直接的な方法として前回のコラム(第16回コラム「だれがShowrooming(ショールーミング)を行うのか?」)で取り上げた「サンプリング」があります。

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米国のウォルマートでは、テスト段階ですが「無料サンプル品(freebie at walmart)」と書かれた青色の自販機(横のロゴマークが付いています)を、ウォルマートの店頭に設置しています。自販機はサンプル品の取り出し口のみで、コインやお金の投入口はありません。無料サンプルの取り出し方は、自販機の前でスマートフォンからFacebookにアクセスし「フリービー・アット・ウォルマート」でチェック・インすると自動的に洗剤や歯磨き粉などのサンプル商品が出てきます。今回のテストに参画したメーカーはプロクター&ギャンブル(P&G)社でした。

受け取り専用ロッカー

また、米国のEコマースの業界では、アマゾンとセブン-イレブンが提携して、アマゾンで注文した商品をセブン-イレブンの店舗で受け取りをしたり、シアトルでは「アマゾン・ロッカー」と呼ばれる宅配ロッカーを設置するなどのテストが行われています。オンラインで注文してもらい、その後リアル店舗への来店につなげる方法です。写真は、店舗に置かれた受け取り専用ロッカーです。

買い物客の求める二つのもの

来店につなげるには、価格であったり量やサンプル品などの物理的な面でのお得感と、前述のような五感に訴え掛ける二通りがあります。この五感訴求の中には、売り場づくりとしての演出や店員(店舗によってはクルーやスタッフ、より専門的な知識を持つコンシェルジュやマイスターなど呼び方はさまざま)による安心や愛着といったものも含みます。

人気のお店や施設には、このような店員の存在が必ずあります。東京ディズニーリゾートは、アトラクションの楽しさや数々のショーと合わせて、これらの存在がベースを作っている気がします。「買い物客に必要な本当の接客やサービスとは何か?」これらが背景にあり、それをネット上の情報として上手につなげることも、O2Oを成功に導く材料となります。

最後に、「O2Oをネットからリアル店舗への来店や買い物行動の促進」と意味づける中で、この夏に街ナカでユニークなプロモーションに触れたので紹介したいと思います。

それが「IKEA SUKIMA GALLERY」(7月31日から8月5日まで)です。店舗の一部や商品が街に出て来て、ソーシャルメディアを活用してリアル店舗への来店やカタログ利用に導く展開です。

気温が30度を軽く超える7月末の昼過ぎ。会社の近くを歩いていると、ふと目を止めた先の店と店の隙間に置かれた家具やルームセットにIKEAのロゴサイン。

キャット・ストリート(東京・表参道)沿いの約1キロにわたるエリアに、下の写真の様な隙間を利用した展示が全部で14箇所ありました。

 
街にあふれるスキマに、部屋づくりのアイデアをつめこんだSUKIMA GALLERY
右の写真は、同時期のIKEAのリアル店舗での展開。

カタログとミネラルウォーターと上記のフライヤーを 入れたオリジナルのショッピングバックが手配りされていました。

当日立会いのスタッフにより配布されていたフライヤーには「狭い空間やデッド・スペースを有効に活用するアイデアを実感してもらう」とありました。今回のキャンペーンは、同社が8月1日に制定している「や(8)っぱり家(1)の日」に合わせて実施されたもの。それぞれの展示には、ナンバリングがされており、Facebookで「いいね」をクリック・応募すると抽選で各1名、総計10名に、展示されている家具やルームセットが購入できるギフトカードが当たる懸賞企画を行っていました。

このIKEAの企画は、街の中の隙間を切り取って『自社の商品で理想の空間を実現する』ことで注目を集め、ウェブサイトへつなげて、リアル店舗やカタログの利用へと導くことを目的にしていました。リアル店舗で実感してもらうことを、サイトやほかの場所(スペース)でいかに期待してもらい、関心を寄せてもらうかを考える時、こうした「クリエイティブで五感を刺激する、意外性あるシナリオづくり」は、やはり大事だと実感しました。

倉林武也 「最新米国小売業からプロモーションをハカる」バックナンバー