どこのオフィスでもおなじみの、住友スリーエムの「ポスト・イット® 製品」。「メモを書いて、貼って、はがして、また貼って」という使用方法にピッタリな程よい粘着力がこの製品の中核的便益である。しかし、それだけなら今日、類似品が山と販売され、100均でも購入できる。そこで登場したのが、ポスト・イット® 手帳用製品「ポータブルシリーズ」だ。商品は今年9月に発売されたばかりだが、売上は当初予想を上回って上々ということだ。
誰でも便利に使える商品は、すべての人から愛されるかといえば、必ずしもそうではない。コモデティー品はほかでも用に足りるので簡単にブランドスイッチされてしまうのだ。では、どうすればいいのか。まず、万人受けではなく「ターゲットを明確にする」ことが必要だ。そして、「自分にピッタリ!」という「自分ならではの価値(Relevant)」を感じ取ってもらうことが肝要なのである。
「ポータブルシリーズ」のターゲットは、ポスト・イットにオフィスで慣れ親しんだOLだ。同商品は事務用品としてのポスト・イットを自分の手帳に用いていたものの、「自分の手帳にしっくりこない」「可愛くない」という潜在的なニーズギャップを捉えた。そして、「様々な用途に対応する各種リフィル」と、リフィルを自分の好みに合わせて組み合わせ持ち運べる「可愛いケース」を発売したのである。自分の使い勝手に合わせてカスタマイズできるという点も「ピッタリ感」を醸成している。
だが、「そもそもターゲットを絞ったら数が売れなくなる」という懸念を呈される向きもあるだろう。しかし、世の中幅広くターゲットを設定して売れるほど単純ではなくなっている。もはや「誰からでも愛される」が「誰からも愛されない」に転じる時代。ターゲットをはっきり定めて確実なファンを確保し、売上を積み上げていくことが重要なのである。ポスト・イット® ブランドの微に入り細をうがつようなターゲット設定と、その価値提供から学ぶべき所は大きいだろう。
金森努「あの商品、このサービスがヒットするワケ」バックナンバー
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「あの商品、このサービスがヒットするワケ」バックナンバー
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