文化勲章の親授式が3日、皇居・宮殿で行われ、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発でノーベル医学生理学賞の受賞が決まった京都大学の山中伸弥教授教授(50)ら6人に、天皇陛下から勲章が手渡された。日本のノーベル賞受賞者は、10年の根岸英一・米パデュー大学特別教授、鈴木章・北海道大学名誉教授(化学賞)に続いて19人目。生理学・医学賞は1987年の利根川進博士以来、25年ぶり2人目の受賞となる。
12月10日の授賞式を控え、山中教授のこれまでの研究の歩みやiPS細胞の可能性についての報道はまだまだ続きそうだが、そんななかで度々指摘されるのが日本の理数離れやアメリカなどと比較した場合の科学技術開発の研究予算の少なさだ。
そんななか、教育学博士の舞田敏彦氏は、OECDが3年間隔で実施している国際学力調査のPISAの結果に基づいて、日本の理科の授業の問題点を指摘する。その問題点とは、「知識注入的な授業に偏っていること」だった。
PISAの結果が報道されると、とかく読解力や科学的リテラシーが何位といった順位に注目が集まるが、実はこの調査では学力調査だけが行われているわけではない。各国の生徒の家庭環境や学校生活を把握するための設問が入った調査が行われており、その対象は生徒だけでなく、学校も含まれる。
OECDは回答結果が入力された段階のローデータ(未加工データ)を公開しているため、データをダウンロードし、研究テーマに即した自前の分析を行うことも可能となっている。舞田敏彦氏はこのデータを用いた分析により、日本の高校理科教育の特徴、問題と今後の課題を明らかにした。
理科教育では、実験や討議によって、事実を明らかにしていく考え方を身につけることが重要だが、舞田氏の分析によると、日本の理科教育では、実験や討議よりも知識を注入することに偏っていることが明らかだ。
教授のスタイルは、「既成の知識を湯水のごとく注ぎ込む注入主義」と、「子どもの諸能力の開発を目指す開発主義」に分類される。舞田氏はPISAの調査対象となった57か国、33万8,590人の生徒についてのスコアを計算し、その分布を参考にして3つの群に区分した。その3つの群とは、開発主義的な授業のスコアの高い「開発群」、知識注入主義的な授業を受けている「注入群」、その中間の「中間群」に分類したところ、日本では極端な知識注入型の教育が行われていることがわかった。
日本、韓国、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアの7か国の中で、日本は開発群の比率が最も少なく、わずか6.4%となっている。韓国も似たような結果であるのに対して、アメリカとロシアは、開発群が半分を占めている。ヨーロッパの3国は、日韓と米露の中間となっている。
さらに、舞田氏は、57か国のデータを比較し、日本が全体の中のどこに位置するかを明らかにしている。横軸に注入群、縦軸に開発群の生徒の比率をとった座標上に、57の国を位置づけた結果、知識注入群が最も多い、右下の端に位置している。
舞田氏は、知識注入型の授業を全否定するつもりはないとしたうえで、実験や討議を行う開発主義の授業とのバランスをとることが必要ではないかと問題提起している。
詳細は「高校理科の授業スタイルの国際比較‐舞田敏彦」で読むことができる。
舞田敏彦(まいた・としひこ)1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。武蔵野大学、杏林大学兼任講師。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。著書に『47都道府県の子どもたち』(武蔵野大学出版会)、『教職基本キーワード1200』(実務教育出版)などがある。
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