今年のヒット商品の一角を確実になすであろう、LCC。「格安航空会社」とも表現されるが、タダ安いワケではない。そこには理に適ったヒミツがあるのだ。それは、アタリマエと思っていることを徹底して「引き算」するのである。例えば、通常の航空会社が客室内のサービスを「フルサービス」で提供するのに対し、徹底した省略を行うことなどはわかりやすい特徴だ。
しかし、闇雲に「引き算」すればいいというものではない。[調達]→[販売]→[運行]→[サービス]という、航空会社のバリューチェーンの細部にわたって見直し、「高効率化のための引き算」を行っているのだ。まず、調達機体は統一。顧客ニーズや路線に応じた機体の多様性は引き算だ。その結果、調達条件の有利さや、全路線での使い回しによる運行効率や、メンテナンスも効率化できる。航空券の販売はウェブサイトでの予約を中心として中間マージンを引き算だ。運行は機体にできるだけ多くの客席を作って、低廉な価格で客を集めて搭乗率を高め、高回転で機体を回していくという運行が基本となっている。
上記のような航空会社は、以前なら誰しも考えも付かなかったが、米・サウスウエスト空港やアイルランドのライアンエアーが確立したモデルは国際的にはすっかり定着化して、今、日本市場にも変革をもたらしている。
成熟市場において、製品もサービスも、「中核価値」とは遠い、「付随機能」ばかりが付加され、デコレーション過剰になっていくのが常なところを、大胆な引き算を行う。そのコンセプトの明確さと見極めは多くの業種が学べる事だろう。
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