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「商品」の先にある企業や社員の「振る舞い」をデザインする―電通・岸勇希氏

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トヨタ自動車は2011年末、新しいハイブリッド車「アクア」のプロモーション活動として、社員や生活者を巻き込んだ水源の環境保全運動を始めた。

その活動を仕掛けた電通・コミュニケーション・デザイン・センターの岸勇希氏は、生活者にとって、「商品」の裏側にある理念や、企業の振る舞い、経営者や社員の思いが、企業イメージの醸成に大きな影響力を持つ時代になったと話す。―『広報会議』2013年2月号より

メッセージの発信からファクトづくりへ

なぜ、企業の振る舞いが大事なのか。その背景に、情報の透明化があります。これまで、生活者から見える、もしくは感じられる企業イメージは、商品そのもの、または広告などのメッセージが主なものでした。

しかし、ソーシャルメディアの登場以降、生活者が感じ取れる情報には、商品の根元にある、企業の理念や振舞い、経営者や社員の行動や想いなど、より深い部分にまで及ぶようになりました。企業の人格や人柄といったものが、生活者の消費行動に大きな影響を及ぼすようになってきたのです。

企業の振る舞いから“本音”が透けて見えているのに、それを無視してメッセージを「SAY」(発信や発言)するだけで人は動くのか。答えはノーだと思います。「DO」(行動)で示すことが、より重要だと考えるようになりました。正確には「DO」があるからこそ語れるプロセスに価値があります。

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ハイブリッド車「アクア」のプロモーション活動は、水の環境保全活動。「商品」そのものではなく、「行動」で企業としての意思や思いを伝える。

この「from SAY to DO」をコンセプトに全く新しい活動を提案したのが「AQUA SOCIAL FES!!(アクアソーシャルフェス)」です。アクアソーシャルフェスは、通常はCMなど広告に使うプロモーション予算を、全国の、水に関する環境保全活動に使いました。全国の地方新聞社やNPO・団体などの協力を得て、一般の参加者を募集。これまでに全国50カ所でのべ131回の “フェス”を開催してきました。 「未来を楽しく変える」というAQUAのコンセプトを、言葉で語るのではなく、行動「DO」にして示したわけです。

この活動で重要なことは、できる限り多くの、トヨタ関係者が参加しているということです。一般的に、「大企業」に対しては、「上から目線」「支配的」というイメージで捉えられがちですが、そんな日本を代表する大手企業トヨタの社員が、参加者と共に汗を流す。この体験を通じて、「商品」から感じられるものとは別の次元で、トヨタを少し好きになってくれるのです。社員の振舞いを通じてその企業を好きになるということは、商品そのものを好きになることよりも、等身大で生々しい価値だと思っています。言葉「SAY」だけでなく、一緒に前線で汗をかく「DO」。言葉以上に、想いを象徴した振舞いが人の心を動かすと信じています。

アクアソーシャルフェスの責任者であるトヨタマーケティグジャパンの折戸弘一氏は、「このキャンペーンは、1 to 1マーケティングの積み重ねで、マスマーケティングしようという試み」とおっしゃいましたが、まさにその、苦労のプロセスにこそ、言葉では動かない人の気持ちを動かす、大きな価値があるのだと思います。企業の本気さを伝えていくことが、大きな発信になると感じています。
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