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コラム

33歳、現場プロデューサーが考えるエージェンシーの未来

モチベーションを共有するところからビジネスは立ち上がる。―スマホアプリ「スタンプメッセンジャー」のプロデュース―

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エージェンシーにおけるプロジェクト/ビジネス発足について、自分の経験を通した具体事例などを交えて過去3回触れてきましたが、そのシリーズも今回で最後となります。

4月12日にピクルスさんとの共同事業として、Facebookのメッセージで(チャットアプリのような)スタンプのやりとりが出来る「スタンプメッセンジャー」というスマートフォンアプリをローンチしました。

電話番号で繋がっていなくてもFacebook上の知人・友人であれば、スタンプ(やもちろんテキスト)を送りあうことができます。

本アプリの詳細については上記リンクをご覧いただくか、実際に使ってみていただくとして、本稿では、ローンチに至った背景や考え方、進め方などについて触れてみます。

そもそもの「開発しよう!」と思い至った経緯ですが、昨年8月、あるクライアント業務における「スマートフォン領域への取り組み」について、ピクルスさんと一緒にブレストしていた際、

「最近、チャットアプリ、流行ってるよねー」
「Facebookでもチャットできるよね」
「でも、スタンプ送れないじゃない」
「なら、作っちゃえばいいんじゃない?」

といったノリで、原案は生まれました。当初はそのクライアントのアプリとして提案するつもりだったのですが、どうも予算的にハマりそうにありません。そのときから、(クライアント案件としてだけではなく)事業モデルとして成り立つかどうかも並行して模索しました。

当初は、事業モデル方向には、いまいち踏ん切りがつかなかったのですが、その8月のとある金曜日深夜、ピクルス代表のタナカミノルさんからFacebookでメッセージが入っていました。

「突然だけど、電話ください」

翌日、電話してみると、メシでも食べながらガッツリ相談しよう、とのこと。早速お店を決めて、土曜夜に男2人でしっぽりと話し合ったのですが、タナカさんから「どういうスキームになろうと、アプリのプロトタイプは僕の判断で先につくっちゃいますね。なので、会社対会社ではなく、個人として一緒に取り組みたいです」と言っていただけたことがグッと心に残りました。

やはり会社と会社としてぶつかると、どうしても登場人物が多くなってくるので、当初意図していたところからズレていきやすいものです。それをタナカさんはよくご理解されていての発言だったと思います。

それならば、ということで、(当初から事業を会社に預けていくのではなく)なるべく自分が主導する形で進めていこうと思いました。

まず、時を同じくして自分のミッションの1つとして上長と相談しながら進めていた「会社の武器となるプロジェクトづくり(※結果として、前々回に触れた「Cha-noma」、前回に触れた「PROTO_CUL」が生まれました)」に本アプリ事業も含めよう、と決めました。

そして、10月にプロトタイプができたタイミングで、上長に対し、本アプリの可能性とリスク、会社としてどう取り組むべきか幾つかのパターンなどを説明していき、結果、具体的に動かしていこう、ということに無事なりました。

それ以降は、本アプリの広告商品をつくり、媒体資料を用意し、社内の営業に声を掛け、セールスに動く、といった活動に移っていったのですが、ここでやはり頼りになったのは既存のクライアント案件や関連案件、および関係性のある社内各所でした。(今までも触れてきたことですが)やはりここでも現業とのシナジーがありました。

ほぼ全容が固まってきた段階で、リリースに向けての準備に入りました。いつ審査を通過するか、正確な日時は予測できないため、アプリのPRリリースは事前の準備がしづらかったのですが、会社の広報部とよく話し合い、いつ審査を通過しても当日(か通過時間によっては翌日)にはリリースが出せる体制を整えておくなどの対応策を考え、無事リリースすることが出来ました。

以上のような経緯や考え方があった上で、本アプリはローンチに至りました。

経験してみて、まず、どのようなビジネスにも共通して言えるだろうことは、人が起点になる、ということです。向き合っている人の意図や想いを汲み取りながら前に進めていくのが大切だとつくづく思いました。
相手が何を考えているか、どのようなことにモチベーションを感じているかを理解しようとしないと、どんなに良かれと思って考えたことでもうまく機能しません。ある程度の想いは共有した上で、あるラインからは相手にゆだねていくことも必要となってきます。

過去3回で、エージェンシー内におけるプロジェクト/ビジネス発足のポイントとして、「中核メンバーの情熱」「現業で生まれつつあるプロジェクトの芽を育てる」「社内への刺激と指針としての機能」を挙げてきましたが、これらのベースにあるのはやはり、社内外の関係各所の方々のモチベーションを理解することです。
つまり、中核メンバーは何を志向していて、それは現業とどうシナジーし、社内外にどういった影響をもたらし、どのような新たなモチベーションを生み出すのか、そういったことをイメージし、都度ウォッチし、理解しながら進行していくことが重要だと考えます。また、まずそういったスタンスに立つこと自体が、逆に各方面からの理解を得るのにも大切だと思っています。

以上、3回に渡り、プロジェクト/ビジネス発足の具体事例を紹介してきました。
次回は本コラムの最終回となりますので、今までのまとめに代えて、改めて本コラムのテーマ「エージェンシーにおけるプロデュース機能」について書いてみようと思います。