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コラム

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ネット選挙解禁で何が変わるのか?

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皆さんも報道などで既にご存知のことと思うが、4月19日に参議院議員本会議でインターネットを使った選挙運動を解禁する公職選挙法改正案が全会一致で可決、成立した。筆者は昨年の衆院議員選直後のコラム「今度こそインターネット選挙解禁となるか?インターネットと選挙に関する動きをまとめてみた」に記したように動向を注視していたが、ある程度筆者の予想に準じた法案が成立し、次回の参院議員選挙より活用されることに大きな意義を感じている。ただし、誤解している人は少ないであろうが、ネット選挙といっても実際の投票ができるわけではなく、主に選挙期間中や選挙後の告知活動に関する変更ということになる。

主な変更点は選挙期間中の文書の配布と選挙後の挨拶

今までの公職選挙法では「文書図画」を頒布する方法としてインターネットなどを認めておらず、候補者や政党は選挙期間になるとサイトやSNSでの情報発信が制限されていた。つまり候補者や政党は基本的に選挙期間中ホームページやSNSの更新を避けてきたのであるが、今回の改正でホームページやSNS、電子メールなどでの文書図画の頒布が可能になった。

また、選挙後の挨拶行為は「信書」以外は禁止されていたものを「インターネット等を利用する方法」にも拡大したのである。昨年の衆院選ではSNSにて当選報告していた議員に公職選挙法違反の疑惑が報じられていたのである。さらに政党に限り、選挙期間中に自身のサイトにリンクする形での有料広告が可能となったのである。

個人として気をつけなければいけないポイントは「電子メール等(電子メール、SMS)」の利用が禁止されていることであろう。政党から来たメールを友人や知人にメールやSMSで転送すると法律違反になるので気をつけたいところである。本件は少々わかりにくいところもあるが、逆に何らかの規制をかけておかないとメールやSMS(ショートメッセージングサービス)はSNS(ソーシャルネットワーク)と違い、個人が不特定多数に送信できることができるため慎重になっているものと考えられるのである。

ネット選挙で変わると予想されること

では、今回の選挙では何が変わるのであろうか? 筆者なりにいろいろ予測をしてみたい。

  1. 投票率への影響
    筆者が特に注目しているのはこの部分である。従来の公職選挙法では投票率の低い若い有権者になかなか選挙に関する情報が届かなかった。特にSNSが解禁されることにより、この部分が大幅に変化することが予想される。というのもSNSの主役はまさに投票率の低い若い世代であり、SNSの本質は可視化にあるからだ。SNSを通じて政党や候補者あるいは有権者の行動が可視化されそれがシェアされる形で広がることにより、“投票“という行動に移る可能性が高いと筆者は考えている。また、仮に投票という行動に移らないとしても、しない理由がはっきりしてくることにより、政治に関する“質”が高まってくるであろう。
  2. 候補者への影響
    選挙期間中のSNS解禁ということは候補者にも大きな影響を及ぼすことが考えられる。というのもSNSにより可視化された情報は非常に速いスピードで広がり、その情報を拡散することは通常は止められないからである。候補者は常に有権者に見られる存在としての意識をせずにいられないために気を使ったり、自身のSNSを頻繁に更新する必要に迫られるため“ネット選挙疲れ”といった言葉も出てくるのではないかと予想している。また、全く選挙区が関係なくても候補者のSNSが炎上することにより他の候補者にも影響が及ぶのでそのような側面もクローズアップされてくるのではないか?
  3. 大政党は有利か?
    選挙期間中の有料広告が可能になったので一部では資金力のある大政党に有利であるという見方が広がっているが、本件に関して筆者は必ずしもそうではないと考えている。まず、広告は政党に限り自社ページへの誘導という形で許されているので、広告で広がることよりもサイトの中身がSNSで広がることが中心になると考えられるということ。むしろ、サイト内で有効に有権者に訴求ができれば小さな政党でもSNSで大きな流れを作ることができるかもしれないと考えている。

ただし、それは有権者の意見がいろいろな政党は候補者に偏在するのかそれともバンドワゴン効果等で統一が進むのかで変わってくるであろう。インターネットではいいお店であれば全国で商売ができるように選択が進むという現象が考えられるが、これはむしろ市場が成熟してからの方が強く現れるので、新しい手法が導入された最初の選挙では送り手も受け手も手探りの状態で、むしろバンドワゴン効果で投票が集中するという現象も起こるのではないかと考えている。

そのほかにも、ビッグデータ解析やソーシャルリスニングによる政治戦略の変更など見えない部分でも多くの動きが出てくるであろうがその話は実際の選挙が近づいてきた時期にまた論じてみたいと思うのである。皆さんはどうお考えだろうか?