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コラム

世界一幸せな国で暮らすということ

ギャップイヤー――柔軟な社会が幸せな若者をつくる

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nielsen

世界一幸せな国では卒業の季節がやってきました。私自身もつい先日国際バカロレア高等課程(国際的に通用する大学入学資格を取得する2年間の教育課程)を修了したばかりです。

デンマークの若者の大半は、高校を卒業するとギャップイヤーを過ごします。ギャップイヤーといえば、高校を卒業してから進学するまでの間に勉強から休憩をとり、自分のやりたいことをやって社会経験を積む期間です。そのため、デンマーク人の大学入学時の平均年齢は20歳から22歳くらいで、年齢層も日本と比べると驚くほど広いのが特徴です。

ギャップイヤーをどういうふうに活用するかは人それぞれですが、わりと一般的なのは、一定期間フルタイムでバイトをしてお金を貯め、そのあとに世界各地に旅行するというもの。その行き先は、アジアから中南米からアフリカまで様々で、単に観光を目的にする人もいれば、行き先で小学校の建設などのボランティア活動をする人もいます。

また、北欧には、フォルケホイスコーレという、“民衆の民衆による民衆のための”という成人のための教育機関がありますが、これもギャップイヤーの間の人気の中途地点のうちのひとつ。テストが存在しない、単科大学のような位置づけのフォルケホイスコーレは、誰でも何歳でも通えるうえに、選べるコースの幅広さのおかげで、デンマークの“生涯学習”の理念の実現に大きく貢献してきました。数カ月から1年までのコースを自由に選択し、のびのびと自分の学びたいことを学びながら新しい人々と出会いことができるのが魅力です。国内には80校ほどありますが、その生徒のなかには自分探しのためにやってきた、という日本からの若者もよく見かけます。

1年間から2年間、フォルケホイスコーレで気になる分野の勉強をかじってみたり、保育園でバイトをしてみたり、アフリカに旅行してみたり、自分の長所・短所、そして将来やりたいこと・やりたくないこと発見できるギャップイヤーは、学校では学べないことを学べる、ポジティブな選択肢として、社会でも推奨されています。しかし、もちろんそれが可能なのも、フレキシブルな教育システムや、スローライフという言葉でよく説明されるゆとりのあるライフスタイルのおかげで、とことん猶予できる貴重な時間が与えられているデンマークの若者は、自分自身も含めて、本当に恵まれているな、としばしば考えさせられます。日本でも、ギャップイヤーという言葉は少し注目され始めているものの、実際にそのコンセプトの定着は難しそうです。

さて、私自身もギャップイヤーに突入 することになるのですが、近い将来のプランは、美術系の全日制フォルケホイスコーレに夏から冬まで半年間通いながら、かたわらでバイトをして30万円ほど貯めるというもの。そして、冬が本当に寒くなる頃には北欧を脱出して東南アジアに3カ月ほど放浪の旅に出て、桜の季節に合わせて短期的に日本に戻る、というものです。進路面での最大の目標はデンマーク王立のアートアカデミーに入ることですが、なにしろ倍率30倍の超難関校なため、ギャップイヤーでは入試の準備をするとともに、何でもやりたいことを貪欲に挑戦して、他の可能性も模索しようと考えています。

北欧デンマーク直送の現地情報を伝えてきたこのコラムもいよいよ今回で最終回となりました。いいね!を押してくれた方、シェアをしてくれた方、フェイスブックでメッセージをくださった方、本当にありがとうございます。世界一幸せな国のエッセンスが少しは伝わったでしょうか。

※連載「世界一幸せな国で暮らすということ」は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。