飲食事業においては、「テレビに出る」「雑誌に載る」といったメディア露出があるかどうかが、その勝敗を左右します。6月27日に宣伝会議から発売の書籍『取材が来る店』では、メディア、店舗設計・プロデュース、店舗経営の三つの実務に精通する著者が、メディアの目を通して見た魅力的な店のあり方や、店を流行らせるための広報術を伝授します。
『取材が来る店』著者による全3回の連載をお届けします。
吉野信吾(プロデューサー)
『取材が来る店』が6月27日に出版されます。
本書は雑誌『広報会議』に、「小さなお店を流行らせる広報術」として連載されたものに新たな情報を加え、お店にとってより重要度の高い内容をまとめたものです。
これから先の時代、飲食店だけに留まらず、企業、ましてや個人にとっても、広報に力を注ぐことは、非常に重要になると考えています。
この本では、マスコミが、どういう視点で、どんな切り口で、取材先を決めているのか、メディアの着眼点がどこにあるのかを解説しています。
レストランや居酒屋、カフェの食事を撮って、ブログやツイッターでコメントや批評を行う多くの方々にも、どこに着目すればよいか、というプロの視点の向け方は参考になるはずです。
取材依頼が来るような、魅力的な店では、「絶対やらないこと」というのがいくつかあります。
特に飲食店では、タブーな広報・宣伝活動というのが存在します。
しかし、店主はお客を集めたいばかりに、良かれと思って実施している場合も多いのです。
例えば……
あなたが予約して、彼女や彼氏を連れて行ったレストラン。
店主や従業員が表に出て、呼び込みをしていたらどうでしょう?
そんな光景を見たら、お客はドン引き。再訪は絶対にないでしょう。
お客が入っていないから呼び込みをするわけで、自分で流行っていないことをアピールするようなもの。
呼び込まなければならないほど、苦しい台所事情を見せている行為なのです。
しかし、店主は、お客さんが誰もいないと、ついつい表に出て街を観察したくなる。
店側とお客さんの感じ方に温度差がかなりあることに、店主が案外気付いていないことが多いのです。
もう一つお客さんとの温度差が生じやすい例を挙げてみましょう。
それは……
店の自慢に見えてしまう雑誌広告を出すこと。
お店を自分の奥さんだと仮定してみると分かりやすいです。
「どう? うちの奥さんいい女でしょ。よく言われるけれど、オレもそう思うんだよね」
などと、誰かれかまわずにおおっぴらに口走っていたら「馬鹿じゃないの、どこが?」と、たいがい思われます。
他人が「いや~、おたくの奥さんは、本当に才色兼備のいい女だねぇ~」と、あちらこちらで評判にしていたらどうでしょう。そのほうがはるかにいい女としての説得力があると思いませんか?
本書ではいかに他人の目になれるか、客観視するポイントが記されています。
「店が取材される」ということは、メディアの視点で、魅力的な店を客観的に紐解く、ということでもあるのです。
次回は、「お店の広報は、雑誌に限るという理由」をお伝えします。
吉野信吾(よしの・しんご)
1958年生まれ。黄金期の雑誌『POPEYE』の編集者を経て、商業施設や飲食店舗の設計プロデュースを数多く手がける。投資計画から設計、メニュー開発、運営、経営までの一貫した業務経験が豊富。多彩なマスコミ・ネットワークを駆使したプロモーションと、数多くの出版プロデュースも手がける。ラテンアメリカ・スタイルの内装設計プロデュースの先駆者。日経BP『流行る店』、マガジンハウス『もったいない』など著書多数。
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