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コラム

CSR視点で広報を考える

カネボウ自主回収問題徹底検証――老舗ブランドゆえに背負う「高潔さ」と期待される「危機管理対応」(上)

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「カネボウ」に何が起きたのか?

老舗企業の「カネボウ」が、製品のリコール対応に関連して、風評に揺れている。筆者は、7月4日に自主回収の発表を聞いたとき、2つのことをすぐ思い浮かべた。1つ目はカネボウの回収行為には「誠実さ」はあるのか、そして2つ目は老舗ブランドとしてふさわしいステークホルダー対応ができるのか、であり、「隠蔽」や「稚拙な対応」の結果、かつての「スノーブランドの崩壊」の再来があるのではないか、との危惧であった。

名門企業に期待されることは、単にその場かぎりの対応だけでなく、その歴史に恥ずかしくない「高潔さ」と「誰もが納得できる危機管理対応」である。その2つにおいて現時点で満足できる結果はまだ得られていない。現在も続く第三者(弁護士など)による調査結果を待つしかない。

「雪印事件」から学びとれなかった「カネボウ」

「カネボウ」に何が起きたのかを触れる前に、なぜ「雪印事件」や「スノーブランド崩壊」を思い浮かべたのかについて説明しておく。「雪印事件」は、21世紀の危機への警鐘として、2000年6月27日に発生した。

事件発覚後の稚拙な危機管理態勢は、記者会見の度に矛盾が噴出、新たな嘘を生み出した。21世紀の風評リスクの原点である「隠蔽」というキーワードの発現である。社長が「寝ていない!」と、数時間もの間、耐えに耐え抜いた記者会見後の一瞬の油断を突かれてコメントした言葉は、まさに消費者に向けて数秒で発信されるテレビのカット割として繰り返し放送され、ブランドは報道制作者側の期待通りに瞬く間に地に墜ちることになった。

黄色ブドウ球菌を中心とした大規模食中毒事件は、報道後、ほぼ毎日記事に掲載され、株価は23日間で619円から406円まで34.4%まで下げることになる。「被害者6千人超」、「社長初記者会見『寝てない発言』」、「虚偽説明繰り返す」、「実態把握せず発表」、「返品再利用、返品製品を素手で開封」「雪印社製品返品の山、処理しきれず異臭も」などの見出しが新聞の社会面に毎日踊り、否応なく消費者は雪印のマイナスイメージを植え付けさせられた。

当時はテレビ報道と2ちゃんねるの書き込みが全盛の時代で、「雪印事件」もまたこの影響を大いに受けた。しかし、スノーブランドを崩壊させたのは2度目の不祥事となった「雪印食品偽装詐欺事件」である。

雪印乳業の事件が起きてからほぼ1年半が経過した頃、国内産牛肉にBSE(狂牛病)にかかったものがあるとの農水省の発表を受けて実施された国産牛買取制度を悪用し、雪印食品が国民の税金で賄われている助成金を騙し取ろうとする偽装詐欺事件を起こしたのである。スノーブランドの崩壊は、消費者の不買運動や2ちゃんねるの書き込みよりも早く、雪印グループ全体の株価急落という形で顕在化した。

この事件が報道された2002年1月23日より3日間の株価は、雪印食品そのものよりも、その株式の60%以上を保有する親会社「雪印乳業」に大きな影響を与えた。前述した雪印乳業の食中毒事件では23日間をかけて34.4%を下落させた雪印乳業だが、雪印食品の偽装詐欺事件では関連会社株ということで、実にわずか3日間で同じ34.4%を下げる結果となった。

さらに注目すべきは、その下落率に関連して、この3日間で上場しているグループ3社合計の時価総額が270億円も失われたことである。その後も下落のスピードは止まらず、雪印食品の株価は12日後には26円まで暴落、一方、雪印乳業の株価もまた、100円を切るところまで転がり落ちた。

株価

名門企業にあってはならないキーワードは「嘘」と「隠蔽」である。それを2度にわたって行ったスノーブランドは、崩壊の道を歩み、雪印牛乳は「メグミルク」とブランド名を変更、コーポレートカラーも「青」から「赤」に変わった。

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