究極の対面販売を目指す
コミュニティの作り方の事例を紹介する前に、最近のEコマースの世界について話すと、「究極の自動販売機」と「究極の対面販売」のどちらを選ぶかということが大きなテーマになっています。
究極の自動販売機というのは、価格の安さ、配送のスピード、品ぞろえといった利便性を追求してお客さまに選んでもらう、Amazonが選んでいる道です。
もうひとつの究極の対面販売というのは、魚屋さんで大将と雑談をしていく中で自然と買い物をするようなイメージです。そういう買い物の仕方がネットで実現できると面白いだろう、というコンセプトで、楽天は「ショッピングイズエンターテインメント」と掲げています。
利便性を追求するとAmazonなどと比較の対象になってしまうので、そうではなく、楽天に出店する中小のショップの方には「究極の対面販売を追求しましょう」とすすめています。
ブランディングが自然に進むコミュニティ」
そうした事例のひとつとして、「レモン部」を紹介します。
三重県の「花ひろばオンライン」という園芸のお店が4年ほど前に始めたもので、社長がレモン部の「顧問」、レモンの苗の購入者が「部員」として、みんなでレモンを育てるというコミュニティです。
1年間の1期30名限定で、現在4期まできています。
商売としては、苗木を1本売るだけなのに、1年間部員の面倒をみないといけないので、手がかかる割には直接売り上げにつながりません。
ただ、レモン部をきっかけに、お店のスタッフと部員であるお客さんの間に、人と人との距離が近いやりとりが始まり、スタッフは前向きに仕事に取り組み、開始1年半を過ぎた頃には月商の記録を出すほどになりました。
3期目にフェイスブック上に「部室」を作るとコミュニケーション量が爆発して、ひとりの書き込みにコメントが100件以上つくようなことが起こりはじめました。
レモン以外の話題も盛り上がり、誰かがアップした鉢や肥料が話題になって、同じものを買う人が何人も現れ、メンテナンス系の商品が売れるようになりました。
で、何が起こるかというと、楽天の店長さんが集まるイベントなどで名刺交換をするたびに「あ、あのレモン部の」と言われるようになったんです。
要は、ただの苗木屋さんだと覚えてもらえないところが、レモン部をやったことで自然にブランディングが進んでいたことになるわけです。
苗木やガーデニングの商品を買うときに、一番最初に思い出してもらえるポジションを自然にとれているし、部員にとっては価格を比較することなくこのお店で買うことが普通になっています。
コミュニティを作るには、今はいろいろなところにツールはそろっているので、システムは不要です。
どっちかというと、自分がプロとして誰かに伝えられる、伝えると喜んでもらえるコンテンツをどれくらい持っているかが肝で、そのコンテンツを一定期間、接点を確保した形でお客さんとコミュニケーションをとれる場を作ることができれば、誰でもうまく回りはじめるのではないかと思います。
というわけで、最近思うのは、売り手と買い手の立ち位置じゃなくて、共通のビジョン、レモン部の場合は育てる楽しみを一緒に味わいましょう、ということですけど、同じ方向を向いた人たちが、社長もスタッフもお客さんも一緒にチャレンジする、プロジェクトを進める、そんなスタイルの商売の仕方があるのではないかと思っています。
(次回予告)
次回は 相模屋食料 です。
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