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コラム

CSR視点で広報を考える

再び危険視される地震による津波被害

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来たるべき巨大地震に備え東日本大震災から学ぶ

最近、地震に関するセミナーが、各所で開催され始めている。企業における地震リスクの再検証と東日本大震災で機能しなかった事業継続計画の抜本的見直しを、業界の視点から真剣に取り組んでいるからだ。

一般社団法人 日本自動車部品工業会においても、サプライチェーンの事業継続をどのように取組むかを基本に、平成25年3月にBCPガイドラインを公表した。

地震リスクの分析を行う応用アール・エム・エスによれば、現在、予測されている巨大地震とその損失額・損失率は、概ね以下のようになっている。


(OYORMS資料より抜粋)

上記予測でもわかるように、津波による損失額は、地震動と津波の合計損失額と比べても、39%~58%の大きなシェアを占めていて、その及ぼす影響力は甚大である。

また、東日本大震災の津波浸水エリアの被災企業について、アンケート調査やヒアリング調査を実施したケーシーエスによれば、以下のような被災事例があったという。

  • 水産加工業では、水産物を漁獲時期に合わせて1年分を大量に仕入れていたため、津波で冷凍庫自身も被災したことで多額の原材料が全損となった。
  • 建設業では、顧客の受入検査を受ける直前の現場が被災し、引き渡し前であったため未完成工事全てが損失につながった。
  • 金属加工業では、被災した設備・機器は、減価償却後の簿価では300万円程度のものでも、再調達となると中古で3000万円、新品での再調達は1億円にものぼる。
  • 食品加工業では、さらに厳しく、オーダーメイド設備などは中古品がなく、減価償却後の簿価で7000万円相当のものが、新品の再調達・修理などで5億2000万円もかかった。
  • 運輸業では、自動車の減価償却期間が4年~5年であり、車両27台が被災したが、減価償却後の簿価が500万円相当に対して、実際の再調達・修理に4500万円程度かかった。

また、津波の影響で大きな被害が出たものの中には「高圧受変電設備」や「冷蔵庫・冷凍庫等のコンプレッサー」があったという。

  • 高圧受電契約を締結している事業所では、高圧受変電設備(キューピクル)を設置していたが、設置場所が電柱近くの屋外の地面近くにあることが多く、低い浸水深でも大きく損傷してしまった事例が多い。
  • 冷蔵庫・冷凍庫は、ファンやコンプレッサーが地面近くに設置されている者が多く、50cm未満の浸水でもモーターに泥や水が入り込み、使用不可能となるケースが多発した。

さらに、津波特有の問題として、大量の泥が工場内や施設内に堆積し、排出、清掃、消毒、廃棄物処理などに多額の費用がかかった上に、それらの作業に携わる従業員の残業代などの経費も応急対策費用として支出した事例が多かった。

津波の影響では、データの喪失被害も多数確認されている。被災地に設置されていたローカルサーバーに記録していたデータが消失してしまったものや、パソコン・書類が流出してしまい復旧に1年を要したもの、顧客データ等がなくなり、復旧できなかった事例もある。

津波は、広範囲に被害をもたらすため、復旧には政府が直接関与し、長期化することが想定される。東日本大震災では、「仮設事業所」を設置したり、事業規模縮小を余儀なくされた会社も多く散見された。また、被災者が街ぐるみで疎開するなどして、需要構造に変化が生じ、市場規模が大幅に減少などして復旧復興が阻害された現象もあった。

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