復活なるか、10年以上の赤字鉄道
実は最終回の直前、「あまちゃん」からは素晴らしいプレゼントがありました。内々にNHKから打診があり、能年玲奈さんが沿岸部にお礼を兼ねた取材に行くというものです。
三鉄は、北リアス線(北鉄のモデル)と南リアス線に分かれています。震災の影響は南リアス線の方が甚大でした。久慈を中心とした北運行部が毎日「あまちゃん」効果を享受する中、汗をかきながら復旧作業に従事していた南運行部の社員たちは「いいな、うらやましい」を連発するばかりでした。
そこへ飛び込んできたのが、大船渡市での番組撮影でした。能年玲奈さんが来ることは、社長や私などごく一部にだけ知らされており、社員にも秘密にしました。社員への通達は、「サプライズゲストを招いたNHKの番組でGMTの『暦の上ではディセンバー』を全員で踊ろう」というもの。「ゲストは太巻か?」などと笑いながら、社員は二日間、徹夜で猛特訓しました。
9月23日(日)、大船渡市盛駅前に特設会場が設けられ、多くの市民も集まりました。GMTの曲が流れ、ユーモラスな三鉄社員のダンスが始まりました。観客は大笑いです。突然その社員たちの真ん中に能年さんが現われました。一瞬静寂、間をおかずに大歓声が鳴り響きました。南運行部の社員たちにとっても、とても大きなプレゼント。ようやく「あまちゃん」が南リアス線にも来てくれたのです。
「天野アキです。北鉄に乗ってやってきたどー」の挨拶に、会場は大興奮。観客の一人が「潮騒メモリーを歌って」と突然のリクエストをすると、事務所のマネージャーたちの「ダメダメ」の仕草をよそに「いいですよ」と簡単に引き受け、なんとアカペラで歌い出しました。これには会場全体が割れんばかりの拍手、パニックです。「来週終わるげど、最後まで見てけろ」との挨拶、素晴らしいサプライズでした。
「あまちゃん」は、とにかく被災地を元気にしてくれました。ドラマ化はご当地の観光に大きく寄与しますが、次の番組が始まるといつの間にか消えてしまうのも通例。しかし「あまちゃん」効果は、まだまだ続く気配です。三鉄お座敷列車は10月14日で終了しましたが、最後まで予約で満席。大友良英ビッグバンドのコンサートは、売り出しと同時に完売しました。全国からたくさんの人が、三陸を訪れるきっかけとなりました。
「朝の連ドラ「あまちゃん」で人気沸騰! “北鉄”(=三鉄)の本当にあった話」バックナンバー
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