コミュニティの密度が高いからこそ実現する企画、その地に暮らしているからこそ発想できるアイデアや表現…。さらにネットが登場したことで、日本全国どこにいても世界と向き合うことができるようになりました。「土地に縛られる」という物理的な制約もなくなってきた昨今の状況は、クリエイターの仕事にどのような影響を与えているのでしょうか。
地域で働くクリエイターが感じている「限界」、そして「可能性」。6人のクリエイターが等身大で、「自分の仕事」の今を語ります。
CS西広 コピーライター/CMプランナー 久冨和寿
皆さん、はじめまして。福岡の広告会社・CS西広でコピーライター/CMプランナーをしている久冨和寿(ひさとみ・かずひさ)といいます。第1回の土橋さんと同様、僕自身、東京で仕事をしたことはないので、一般論でしか地域を語ることができないのですが、よろしくお願いします。
勝負は15秒間の1秒目で決まる
よく言われることですが、やはり地方と東京の大きな違いと言えば、やはり第一に広告予算があると思います。たとえばテレビCMの仕事では、制作費はもちろんのこと、投下量の少なさが顕著です。自分たちで作ったCMのオンエアを見ないまま、いつのまにか終わっている…ということもザラにあります。
となると理想は「15秒1本勝負」ではないかと、あらためて思っている次第です。「何を今さら」と思われるかもしれませんが、僕はそこを強化していくことが地方のコミュニケーションのあり方として、とても大切だと思っています。地方では、30秒や60秒のCMを提案することは、本当に少ないからです。
「商品の先にある“生活のふくらみ”をいかに語るか」が広告には大切なことだと言われますが、地方の仕事をしている中で、少なくとも僕が感じているのは、その逆です。「15秒のうちの1秒目から、いかにその商品を語れるか」――そんなことを思いながら作ったCMがこちらです。
福岡は博多・天神の新天町商店街の「全力ワゴンセール」テレビCM。全力ワゴンセールだから、ワゴンが全力で走る、という身もふたもない企画ですが、美術担当の方はその全力感を出すために、ギャラのすべてをかけてラジコンを購入し、このワゴンを完成させてくれました。
クライアントの生の声を色濃く反映
また、地方では決定権のある方と直接話をできる機会がたくさんあります。スピーディに仕事が進むことも魅力ですが、その方の思いがダイレクトに伝わる広告が作りやすいのも、大きなメリットだと思っています。社団法人 終活普及協会の仕事もそのひとつです。
「終活」とは、これからの人生をより良く過ごすための活動のすべてを指すもので、わりとぼんやりとしたテーマなのですが、「その中でも悪質な葬儀業者の存在が許せない」との思いを直接聞いたことがきっかけで動き出した仕事でした。「お葬式」という、デリケートとされるテーマを扱った案件でしたが、その思いを聞いた分、迷わずに問題提起の形をとることができました。
最後になりますが、普段仕事をしていて、自分から「地方だから」と思ったことは、あまりありません。クライアントの目的は地場の人たちとのコミュニケーションにありますから、その中でいかにコストも含めてパフォーマンスの高いモノやコトを作れるか、を考えながら仕事をしています。今はネットがあることで、土地に縛られることはなくなりましたが、あくまでその土地で、その時に、きちんと話題になるものを作っていけたらと思っています。
久冨和寿(CS西広 コピーライター/CMプランナー)
最近の主な仕事に、九州通信ネットワーク、城島高原パーク、パチンコプラザ、新天町商店街など。TCC新人賞、FCC賞、福岡広告協会賞、宣伝会議賞シルバーなど受賞多数。
「いま、地域発のクリエイションが面白い!」バックナンバー
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