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コラム

いま、地域発のクリエイションが面白い!

名古屋で勝つのは、予算 < アイデア――(大広名古屋支社 コピーライター戸谷吉希)

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 メディア企業も大手クライアントも東京に集中している日本の広告界。東京にいないと、クリエイターとしての仕事にスケールや広がりはないのでしょうか?
 コミュニティの密度が高いからこそ実現する企画、その地に暮らしているからこそ発想できるアイデアや表現…。さらにネットが登場したことで、日本全国どこにいても世界と向き合うことができるようになりました。「土地に縛られる」という物理的な制約もなくなってきた昨今の状況は、クリエイターの仕事にどのような影響を与えているのでしょうか。
 地域で働くクリエイターが感じている「限界」、そして「可能性」。6人のクリエイターが等身大で、「自分の仕事」の今を語ります。


大広名古屋支社 コピーライター 戸谷吉希

はじめまして。大広名古屋支社 コピーライターの戸谷吉希(とや・よしき)です。僕にとっての地方は、地元です。育った場所というよりは、育てていく場所。自分の子どもに近く、自分の子どもを嫌いにならないのと同じで、心から愛している場所です。そんな名古屋も、「名古屋が元気!」と言われていた時代は、もうとっくに終わっていると感じています。広告を作るうえで、他地域と比べて名古屋でも良いところって、もうないんじゃないかな…。とすら思います。でも…。

予算 < アイデア

ローバジェットCMと言うとカッコいいですが、単なる低予算CM…すごく地味な名前に変わります。それは名前のごとく、地味な見え方になります。「そうなると、面白いクリエーティブで勝負するしかない!」となっていたのも、もう数年前の話。今は、その自由なクリエーティブも、決裁権のある人に行き着くまでにいろいろな障害があって、とても辿り着けません。東京にいる方が想像するような地域特有の自由度は、もう名古屋には、ほぼありません。

キレイごとを抜きにして、制作費はクオリティに直結します。「それを乗り超えるのがクリエーティブの力でしょ!」というのは黒船に竹ヤリです。たとえば同じCM企画でも、1800万円の機材・技術で作るものに、300万円で作るものが、汗水垂らして頑張ったところでクオリティ面で勝てるはずはありません。当然のことです。

では、どうするか。今は「クリエーティブ」だけで勝負するのではなく、職種に関係なく、チーム全員の「アイデア」で勝負しないと勝てません。

釣り具のイシグロ ポスター「人と魚を繋ぐシリーズ」
コピーはそれぞれ、「道具が多い趣味に、男は弱い。」「毎日、命懸けで生きている魚に、遊びで勝てるわけがない。」。アートディレクターの平井秀和さん(ピースグラフィックス)とコピーを何度もやりとりして、完成しました。職種関係なく、スタッフ全員がいたからこそできたポスター広告です。
尾張猿田彦神社 テレビCM「お面」編
映像チームと一緒に、何度もビデオコンテを作りながら検証して、提出ギリギリのタイミングで生まれた企画フレーム。

企業間の差別化が難しくなってきている、情報が溢れている、ソーシャルが強いのはどこでも一緒、そして予算がない&自由度がない…(なんだか、書いていてセツナイです)。

ただ、企業を取り巻く環境や、生活者とのコミュニケーション方法が変わってきているのなら、それに合わせていかないといけません。その中で、柔軟に課題・予算に合った提案や、うまく人々の話題に乗せる提案ができる人、そういう人たちが、これからの名古屋の価値になっていくと考えています。

魚屋 魚太郎テレビCM「バーベキュー」編
海の近くの魚屋さんのコマソン&着ぐるみCMです。あえて人通りの多いところで撮影を行い、注目を集めました。

僕はコピーライターで、そのことへの誇りもありますが、そんなことは本当は捨ててしまったほうが良い。クライアントの課題の「良い解決」のほうが、捨てちゃいけない誇りだと思います(と、言いながらも、僕はまだコピーにこだわりたくて、時代との矛盾を抱えて、まだ価値になりきれていません…)

僕たちの目の前には、7年後の2020年に向けた競技場ができたり、新しい建物が増えていくことはありませんから、この件に関して言えば、東京と名古屋では生活者の温度差は変わっていきます。こんな感じで、これから東京と名古屋との違いは、クリエイターにではなく、生活者に出てくるんじゃないかと思います。

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