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コラム

CSR視点で広報を考える

食品偽装の深い闇を探る!

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筆者は、本業として危機管理のコンサルタントを生業としていることから、食品偽装問題についても例外なく企業の危機管理対応のプロとして緊急要請されることが多い。この種の事件で、最も驚くべきことは、食材受け入れの窓口となる品質管理部門、製造や品質、表示の法的検証を行う法務部門、業務全体の監査を指揮する監査部門のいずれも機能していなかった点にある。

日々行う業務の流れが止まらぬよう、ベルトコンベアーのように同じ作業が繰り返される中、誰も気がつかず、長い年月、違反行為が止まらなかったことに深い闇がある。とはいえ、何もなかったわけではない。食通のお客様が懸念を抱き従業員を問いつめたり、お客様相談室にお問い合わせがあったり、部下の1人が上司に確認したり、と小さな声は確かにあり、そして埋もれていった。

食品偽装の多くは、そのような企業風土を醸成した経営体質に問題があったことに他ならない。食材を提供するものは、美味しいもの、鮮度のよいもの、生産地の確かなものを仕入れ、調理し、商品としてお客様に味わって頂くことを目指していたに違いないが、どこかのタイミングで「利益」という罠にはまり、生きていくために大きな犠牲を払ってしまった。ホテル、百貨店、レストラン、いずれも、「味が変わらなければ」「素材の見分けがつかなければ」「品質に問題がなければ」と、自分自身を納得させるかのように偽装を繰り返した。

今から数年前、山のように積み上がった在庫をかかえた販売店では、どうにか商品を売り切ろうと賞味期限を改ざんした。「賞味期限は消費期限と違い、まだまだ期限を伸ばしても美味しく食べられる」と主張したが、そもそも販売側で一度適切に判断されて付けられた賞味期限を在庫が残ったから付け替えるという考え方そのものが許されない。

仕入れ金額が値上がり、定価を維持できなくなれば、材料を偽装し、安い偽物で代用、一瞬で消費される消費材を意図的に悪用した優良誤認行為が蔓延した。いわゆる産地偽装問題である。「定価が上がればお客様は食べてくれない。お客様のために調理する側が技術でカバーしてやっていくしかない」と内容的には悪くないが、していることは違法行為である。

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