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コラム

編集会議コラム〜コンテンツの裏側潜入!〜

弱小書籍編集部がベストセラーを連発するまで(1)

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『プレジデント』を発行するビジネス専門誌の老舗、プレジデント社。雑誌は有名だが、書籍編集部は発足以来、年間でかなりの赤字を出し、一時は廃部も検討されたほどだった。しかしマーケティング部の傘下に置き、「製販一体」の部署にしたとたん変貌を遂げ、黒字転換。ベストセラーを連発するようになった。その秘密とは?

「桂木君、書籍編集部長として書籍部に異動してくれ。引き継ぎは明日からしてくれればいいから……」

当時『プレジデント』編集次長だった私に、上司(現社長)の言葉は“左遷宣告”に聞こえた。

プレジデント社は、雑誌『プレジデント』や『dancyu』を発行する中堅出版社でそのメインビジネスは雑誌だ。一方、私が所属する前の書籍部は社の看板事業とは言えなかった。雑誌部からベテラン編集者が異動して 書籍を年に4~5冊ほ どつくる、採算性はあまり重視されていない部署だった。そのせいで毎年かなりの赤字を垂れ流していて負債額は膨らむ一方。一時は廃部も検討されたこともある。花形部署から一転、お荷物部署への異動。「いったいオレは何をやったというのだ」と天を仰いだ。

しかし、泣き言を言っていても何も始まらない。幸い、友人に何人か書籍編集者がいたので話を聞くことにした。そこでわかったのは書籍と雑誌の「売り方」の違いだった。雑誌は大きな部数を刷ってそれを各書店に配分。発売期間に何%売れるかというビジネス。

一方、書籍は最初は5000~7000といった小部数を書店に効率的に配分し、売れたら重版をしてさらに売り伸ばしていく。また書籍は初期費用が発生する新刊よりも減価償却が済んだ既刊本を売ったほうが出版社は儲かるということだった。

なるほどと思った私は、雑誌時代に作った書籍『プロフェッショナルマネジャー』という翻訳本を図解版『プロフェッショナルマネジャー・ノート』として世に出してみた。これは既刊本の本編と図解版を一緒に売れれば利益は高まると思ったからだ。この作戦は成功し8万部ほどの部数になり、本編も売れ、利益貢献ができた。

この年はほかにも『トレードオフ』(5.5万部)『鈴木敏文の話下手でも成功できる』(6万部)『人生逆戻りツアー』(4.5万部)などが連続ヒットし、一挙に黒字転換。なんと数千万円の営業利益を上げることができた。しかし、そんな「まぐれ」は何度も続かなかったのである……。


プレジデント社 書籍編集部部長兼書籍販売部長 桂木栄一氏(かつらぎ・えいいち)
1965年神奈川県生まれ。90年早稲田大学社会科学部卒。同年プレジデント社入社。日本航空機内誌『アゴラ』編集部を経て『プレジデント』編集部。同誌副編集長、編集次長を経て、2010年より現職。『プロフェッショナルマネジャー』『鈴木敏文の「統計心理学」』『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』『成功はゴミ箱の中に』はいずれも10万部を超すベストセラーとなった。