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コラム

山本一郎と燃ゆるICT界隈

データサイエンティストって、ぶっちゃけどうなの?――西内啓×田中幸弘×山本一郎 ビッグデータを語り倒すの巻(2)

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第一回「ビッグデータは幻想なのか?」(掲載中)
 西内さん、田中さんのプロフィールはこちらから
第二回「データサイエンティストって、ぶっちゃけどうなの?」(今回の記事)
第三回「パーソナルデータで広告界の地殻変動は起きるか?」(掲載中)

広報担当者にもリーガルセンスが必要になってきた

山本:さらに言えばBtoBだけじゃなくて、BtoCにも目を向けないといけない。2014年の一番の課題は「コンシューマーに対してデータの使用目的とか用途をいかに明示するか」だと思うんです。

「あなたたちの生活における利便性が向上するので、あなたたちの情報をこういう風に使いますよ」と。BtoCで納得してもらうためには、まずは企業内でデータ利用のコンセンサスを落とし込んでいかないといけませんよね。

田中:そうですね。企業のどの部門がデータ管理にコミットしていくのか、決裁権限の規定が曖昧になりがちですし。データって言ったって、本来型のビッグデータの話も、「いわゆる『ビッグデータ』」の話も、個人情報、個人信用情報の話もある。

データ管理は、これらを会社として、特に上場会社は内部統制とコンプライアンスの一定水準以上の注意義務を満たしながら管理しないとけない。コンプライアンスの考え方を書面に落とし込めている企業と、そうでない会社とでは理解にずいぶん差がある。データに関わる人材開発についてでも同様です。

山本:内部統制やコンプライアンスを司る部門ではパーソナルデータの処理とか、その他の問題が山積みですが、よく社内でミスマッチを起こすのは営業部門などラインではなく、むしろシステム部門ですね。

「会社の業績改善のためにデータを活用しよう」というと、いわゆる “ デキるシステム部門 ” からNP完全問題(編集部注:難しさが指数関数的に増大していく問題のこと)など、比較的「そこに金と労力をかけても、成果には効率よくつながらないだろ」という難題が降ってきます。

社内でデータのプロと思われるシステム部門と、現場から数字を吸い上げてくるライン部門とで意識を合わせたコミュニケーションをしておかないと、せっかくデータ解析のための投資を行ったにもかかわらず、どこにも出口のない高速道路みたいな仕組みになってしまうんですよね。

西内:ああ、それは間違いなくありますね。

山本:一方でちょっと微妙だなと思うのは、実際は「企業コミュニケーションとビッグデータを組み合わせることで、絶対に成功するんだ」って言えるような事例ってそんなに出てきてないんですよ。

新しいマーケティング手法は色々登場していて、そこにビッグデータを絡ませれば皆、やりきった気分になる(笑)。例えば、SNS経由で集まった雑多なデータをテキスト分析して、何となくユーザーの空気感らしきものをつかんで満足しちゃって。

田中:「なんとなく『ビッグデータ』」ですか(笑)。然るべきデータを持ってるだろうと思われてるところには、外部からホンマもんの「真正『ビッグデータ」」関連も、「なんちゃって」も「なんとなく」も「いわゆる」もいろいろ声かけられることが多いかもしれないんですかね。

集められたデータを扱う上で、外部のコンサルティング会社との付き合い方にも注意が必要かなと思いますね。やっぱり、その企業の業態とか実態を知ってもらった上で、データの扱いについては適した判断をしてもらわないと。「何のために『ビッグデータ』に投資してるんだよ」って話になってしまう。その意味では外部と接しやすいセクションでもちゃんと勉強しないといかんでしょう。

山本:社内の議論ではなく、お客さまを見て効率化や、引き上げるべき項目を選び込め、という話になりますね。例えば、企業の公式ツイッター活用なんかは結局リテンション(既存顧客の囲い込み)じゃないですか。

なんとなく、既存顧客と会話して、それでソーシャルリスニングもできてしまっている気になっているというか。あるいは、ツイッターの「中の人」をやってる広報担当者がたまに爆発したりする場所と言うべきか。

田中:アハハハハハ(笑)。爆発、ありますね。

山本:ああいう企業のSNS上のコミュニケーションもビッグデータ時代にどう変わるのか、っていうのは気になりませんか?お客さまと対面する担当者のコミュニケーションの質の良し悪しによって、獲得できるユーザーのデータ量が変わることもありうるわけで。

さらにそのデータを社内でフィードバックして商品設計とか、マーケティングに活かす方法も実はよくわかってない。なんとなく「売上が上がったらしいよ」っていう話で終わることもあれば、一歩間違えるとネットで叩かれて終わり、なんてこともある。

総括をする必要はあるんですが、例えば商品ごとに効果測定しようといっても、データから根拠ある情報を導き出すことはほぼ無理だと思います。そう考えるとなかなか難しいんですよ。

田中:広報の話が出ましたけど、上場会社の場合、IRの機動性があるかないかですべてが決まってしまう。

広報担当者の理想を言えば、顧客のパーソナルデータを扱う際に関係する法的な枠組みや行政の動きも分かった上で嘘をつかず、機敏に動けるか。これが重要です。

山本:おっしゃる通りですね。

田中:つまり広報担当者にもリーガルセンスが必要になってきたということ。特にデータコンサルティングという領域に踏み込んでいくと覚悟を決めた企業は、上場会社であればあるほどリーガルセンスは不可欠です。ただし、広報担当者は前に出すぎちゃいけません(笑)。

山本:前面に出まくっている広報担当、多いですからね。それで大炎上、っていう。

田中:だからその辺の、データを扱う現場で何が起きているかとか、どんな論争が起きているか、まったく共有されていないんだと思うんです。

山本:どの企業も「ビッグデータが重要だ」とか言ってる割に、ネットでどんな風にデータを吸い上げていくのか、メソッドを持っていないですからね。せいぜい「ツイッターで情報集めてマーケティングに活かしましょう」っていうレベルで、戦略がなかなか立てられない。また、立ったとして、それを実施した後で定期的に検証することもできない。

西内:往々にしてあるのが、「自社の製品についてどんなことが語られているのか知りたいので、口コミ計測のツールを入れました」というパターン。でも世の中で相当メジャーな商品でも、大したツイート量が集まらなかったりする。

「テキストマイニングするレベルじゃなかったね。じゃあとりあえず、結果に目を通しておいてくださいね」って話で終わり。

山本:まぁ、テキストマイニングが役に立つのはコンシューマー向け製品くらいじゃないですかね。コアな商品ほど信者とアンチがついてて、ネットでの評価がノイズだらけになってしまうタコツボ化は激しくなっていますし。

西内:よっぽど国民全員が認知しているような消費財ならいいですけどね。その中で、なおかつメインの購買層がツイッター上でアクティブな人たちっていうとかなり限られてくるんですよ。最終的には「ツール入れるほどじゃなかった、ツイート検索して全部読めば充分だったよね」というオチになる。

田中:母集団自体はビッグデータと言い得ても、でも、それをいかに有意性のある要因が何かを考える姿勢があり、実際の市場での自分たちの具体的なスモールデータの活用との接合まで持っていくかが重要ということなんでしょうかね?

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