ソーシャルメディアの現状
約1億人とも言われるインターネットユーザーを有するソーシャルメディアは、その利便性や情報交換のスピード感から、性別を問わず、広範囲の年齢層、職業層にわたって利用され、一方でユーザー間でのトラブルや書き込みされた内容に伴い企業などへの風評被害も多数発生している。
ソーシャルメディアは不特定多数に情報発信をすることを前提にしており、ブログ、facebook、ツイッター、ユーチューブ、グーグル+、ミクシィ、グリーといったサービスがあるが、特に以下の機能を持つサービスはリスク管理上、要注意である。
- 誰でも情報発信に参加できる。
- 情報発信内容はインターネット上に流通する。
所属する会社名を公開し、一方でメディアトレーニングを受けていない素人集団が、著作権や法律上の問題への配慮、人権や中立性への配慮に欠ける発言を展開するリスクを包含している。これまでにも、製品やサービスの宣伝をしようとした発言が反感を呼び、かえって製品やサービスの評判を落とす結果となる事例も散見される。
反感が連鎖すると、ソーシャルメディア上では「炎上」という現象が一気に発生する。また、ある人の発言を簡単に他の人に伝える機能として、ツイッターでは「リツイート」、facebookでは「シェア」機能があり、タッチ一つで拡散することができる。伝え先は友人・知人などで、そもそも相互に信頼関係が厚いため、拡散のスピードも早いのが特徴のひとつである。
ソーシャルメディアにおける危機的事例
最近の事例では、書き込み者の素性が、ソーシャルメディア上で自ら個人情報を開示している場合のほか、つぶやきの連鎖の過程で他の投稿者から情報開示されて、発信者の個人名や所属企業が明らかになる事例も散見される。そのような場合、所属企業に批判が集中し、思わぬ事態に企業側が緊急対応を余儀なくされることも少なくない。
また、企業側が発生事態を把握し公表する前に、ソーシャルメディアを通じて多くの情報が提供されてしまう事例も散見される。
2012年4月に起きた化学工場の爆発事故では、深夜に発生したにもかかわらず、インターネット上で以下の情報が飛び交った。
- 爆発1分後にはツイッターで「何かすごい音がした」との発言
- 5分後には2ちゃんねるのスレッドが立ち、さまざまな憶測が飛び交う
- 1時間後にはYahooニュースや朝日新聞デジタルなどのメジャーなニュースサイトが、事故の第1報を知らせる
- 事故発生直後から周辺の状況はビデオで撮影されており、後にYouTubeにも投稿される
このように、インターネット上では、誰も企業側の都合を待って、行動してくれない。我先にと多くの情報が寄せられる。押し寄せる取材や問い合わせに対して、ソーシャルメディアの運用責任者は寡黙になるのではなく、情報がなくても「現在事実関係を確認しています。」と第1報することが重要である。迅速な第2報が提供されるためには、危機管理時のレポートラインに、広報やソーシャルメディアの運用責任者を加え、正確な情報を速やかに獲得できるように配慮することも不可欠である。
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