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コラム

CSR視点で広報を考える

STAP細胞論文問題のコンプライアンス視点から見る分析

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天国と地獄の縮図となった小保方記者会見

この問題が収まる頃には、さらに多くの学者や専門家が議論を重ねることになるだろう。それだけ、この問題はこれまでと違う大きな課題や危機管理の視点における禍根を残したと言える。

理化学研究所に所属し、細胞生物学者である小保方晴子氏が、人類史上、画期的発見とも思われるSTAP細胞について記者会見を行ったのは、つい2カ月半前の1月28日だった。

STAP細胞とは、外からの刺激で体細胞を初期化することにより、全ての生体組織と胎盤組織に分化できる多能性を持った細胞で、小保方晴子氏のチームが世界で初めてその作製方法を確立したことを発表したことで、学者、マスコミはもちろんのこと、世界中の人々が絶賛することになる。

そこからわずかの間に論文には偽装の懸念がもたれ、小保方晴子氏周辺では、「不正」「改ざん」「捏造」というキーワードが張り付いている。現在も依然として真実は詳らかになっていないが、これほどまでに短期間の間に天国と地獄を垣間見た者は例を見ないだろう。

自ら公表し、傷口を広げてしまったSTAP細胞論文問題の光と陰、成功と失敗にはどんな課題や問題があったのか掘り下げてみる。

画期的発見の記者会見

STAP細胞発見の記者会見は、熱気と活気に溢れた会場で、まさに興奮のるつぼの中、行われた。PR記者会見の成功の秘訣は、

  1. 組織団体のアカデミック性、知名度
  2. 発表者の個人的魅力
  3. 発表内容のサプライズ性
  4. 何よりも「世界初めて」という記事ネタとしてのブランド

である。

理化学研究所(正式には「独立行政法人理化学研究所発生・再生科学総合研究センター」 )という知名度、小保方晴子氏の発表者としての魅力、プレゼン能力、この発見に伴う将来的な生物分野における科学的発展、その作製方法における世界初の確立は、あらゆるPR公表術における成功を裏付けるもので、実際にそれは現実のものとなった。

さらに言えば、報道の視点からも「科学分野」での公表であり、裏付の保証が担保されているものとの理解が深く、信憑性の高い情報として記事が書かれ、世界に配信されることになる。

次ページ「類を見ない失墜報道」に続く

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