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コラム

私家版・「通販コピー塾」

長い商品コピーを、最後まで読んでもらうには?

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【前回の記事「広告のコトバが、どんどん弱くなっている。」はこちら

連載第一回目の前回、通販コピーの本質は「説得するボディコピー」であること。そして、それを書くには、コピーライターとしての発想ではなく、ルポライターになったつもりで原稿を進めるのが有効だという話をしました。ルポという客観的な事実を積み上げる手法によって「どうせ広告は手前ミソばかり!」という消費者の固定観念を消すためです。

しかし、ルポルタージュ風にコピーを書き進めていくと壁にぶつかる場合があります。それは文章全体が単調になったり、理屈っぽくなったりして、結果「つまらないコピー」になってしまうことです。つまらなければ途中で読むのを止める。これは通販コピーにとって致命的です。通販コピーで大切なのは「説得」ですが、説得するには長い文章を最後まで読んでもらうための面白さも必要です。

ルポルタージュと聞くと、どうしても事実報道一辺倒のようなイメージですが、ウィキペディアを見てみるとこのようにあります。

  1. 取材記者、ジャーナリストが、自ら現地に赴いて取材した内容を放送・新聞・雑誌などの各種メディアでニュースとして報告すること。略してルポともいう。現地報告。
  2. 事件や社会問題などを題材に、綿密な取材を通して事実を客観的に叙述する文学の一ジャンル。報告文学や記録文学とも呼ばれる。ルポルタージュを執筆する者は、ルポライターと呼ばれる。

(※Wikipediaの冒頭部分のみ抜粋2014年7月1日)

1が純粋に事実を「報道」する意味なのに対して、2には「文学の一ジャンル」とあります。そう、ルポルタージュは文学なのです。 短いものから長いものまで色々ですが、いずれにせよ著者により創られる「作品」ですから、読み物としての面白さも備わっています。

すぐれたルポルタージュ作品は、形式的には「客観的な叙述」ですが、実は書き手の「個」で読ませるものだと思います。題材に対する着眼点の鋭さ、検証方法の独創性、取材の綿密さ。読み手はそうした「固有」の要素から、書き手の思い入れの深さや熱意といったものを感じ取り、心を揺さぶられる。自身に題材への興味がそれほどなくても、読み始めればいつの間にか書き手と一緒に題材について考えさせられ、深堀りしながら結末まで連れて行かれる。

商品コピーに応用したいのは、まさにこのイメージです。

ルポの「題材」を「商品」に置き換えて考えてみましょう。

まず商品本来の機能について調べたり確かめたりしながら事実を綴るわけですが、メーカーパンフレットにある要素を並べるだけなら、先ほどのウィキペディア1の「現地報告ルポ」レベル。誰が書いても誰がしゃべっても似たり寄ったりの内容に終止します。つまり「個」のない平板なコピーです。作品としてのルポに引き上げるためには、もっと読み手の本気を誘う「固有性」を見つけなければなりません。

たとえば、以前に私が携わっていた「通販生活」(カタログハウス発行)というカタログではこんな例がありました。商品は「オイルヒーター」(伊・デロンギ社製)です。日本ではまだあまり普及していなかった当時、本来の特長である安全性や部屋の空気を汚さないことなどをコピー中で訴えますが、なかなか売れません。コピーライターはもっと別の訴求要素がないものかと数ヶ月もの間、あれこれとモニターを続けるうちに、ようやく「これは寝室で使えばいい!」とひらめきました。

もともとオイルヒーターには「温風が出ないから暖まるのが遅い」というデメリットがあるのですが、それを逆手に取って、寝室なら強烈な温風で一気に暖める必要がない。その代わり一晩中つけっ放しにしておいて、いつでも一定温度のぬくぬくがいい!というわけです。商品資料やパンフレットに寝室の言葉はありませんでしたが、「つけっ放し」のリスクを検証した後に、メーカーを説得して「寝室用のヒーター」とうたったところ爆発的に売れました。

メーカーは、「寝室でしか使えない」と誤解されると需要が狭まると考え、あえて売り文句に掲げなかったのでしょうが、コピーライターは「固有」の着眼と執念で、このヒーターの「売り」を見つけ、そして証明したわけです。その孤軍奮闘ぶりの描写は、商品コピーの「面白さ」として充分に機能したと思います。

例にあげたオイルヒーターの場合は、灯台下暗しのような発想が、最終的に「メインの売り方」を発見するという大金星につながったケースですが、通常のネタ探しの手がかりは、もう少しサイドストーリー的なところにあります。開発者はどんな人か? 完成までのプロセスに苦労はなかったか? など、やはり「人」が絡むエピソードにこそ、魅力的な「ドラマ」が隠されているなと経験上は思います。ただ気をつけて欲しいのは、いくら通販コピーといっても文章の長さに制約がありますから、あまり商品の本質的な性能と関わりのない部分に固執していると……いや、ありました!  商品の機能とはぜんぜん無関係なのに大成功した例が!!!

続きは次回に。


向田さんが講師を務める「コピーライター養成講座 ボディコピー特訓コース」