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コラム

いま、地域発のクリエイションが面白い!第2弾

懐深い名古屋の地で、「アフリカ×デザイン」「あかちゃん×デザイン」という独自性を育む

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前回のコラム「その地の人々の暮らし方を、働き方を、そして生き方を良くするデザインーー井手 健一郎(リズムデザイン|rhythmdesign)」はこちら

「これからの日本は、地域が元気にする!」――ネットの登場により、日本全国どこにいても、遠く離れた他の地域と、さらには国境を超えて広い世界と向き合うことができる現在。
地域で活動するクリエイターは、その土地の特性を生かしたプロダクトやサービス、表現を生み出すのはもちろんのこと、その魅力を世界に向けて発信することで、業界全体に大きなムーブメントを起こしたり、日本の、そして各地域の魅力を再認識してもらうきっかけをつくることもできるようになりました。
コミュニティの密度が高いからこそ実現する企画、その地に暮らしているからこそ発想できるアイデア。テクノロジーの発展によってそこに情報の発信力、メッセージの拡散力が加わったことで、地域で働くクリエイターができることの可能性は大きく広がりつつあります。
第1弾の好評を受けて実現した、この 「いま地域発のクリエイティブが面白い! Vol.2」には、広告のみならず、プロダクト、パッケージ、空間、建築と幅広い領域のクリエイター9人が登場。地域で働くクリエイターが感じている「限界」、そして「可能性」とは?
等身大で、自分の仕事の今と、未来に向けた思いを語ります。


柴田 始志(アフリカデザイン代表)

柴田 始志(アフリカデザイン代表)

柴田 始志(アフリカデザイン代表)

名古屋のデザイン会社「アフリカデザイン」の代表をしています、柴田始志(しばた・さとし)です。主にカタログやリーフレット、ポスターなど紙媒体を手掛けています。また、パッケージやWEBで、商品の訴求方法から提案させていただく場合もあります。

自然の美しさを学ぶため、1年間ケニアに留学、帰国後に入社したメーカーや友人の間で「アフリカくん」と呼ばれていました。メーカーでのデザインは海外の展示会に参加できるなど楽しかったのですが、社内だけでなく色々なデザインに携わってみたくなり、2004年に独立。覚えやすいようにあだ名をそのまま社名にしました。

また、デザイン会社設立とほぼ同時に、知人とベビー用品の卸や販売。媒体の作成を行う会社「オープンワールド」を立ち上げ、現在も取締役を務めています。

そんな縁で「あかちゃん」と「アフリカ」に関連する仕事も多くご依頼いただいています。

アフリカデザインの名刺にも「アフリカとあかちゃん」の文字が。

「あかちゃん」の仕事のクライアントは、ベビー用品メーカーや、オープンワールドで取り扱うブランド「ハッピーベリー」「ベビスマ」など。「アフリカ」の仕事には、ウガンダで生産したコットンのブランディングなどがあります。また、仕事内容はアフリカに関係ありませんが、旅行・滞在経験がありアフリカに興味のある広告会社の方や経営者の方が、社名に興味を持って仕事をご依頼くださる場合があります。社名に興味を持っていただくケースでは、社長などと直接やり取りをする場合も多く、経営チームと相談しながらブランド全体の見せ方からご提案させていただいています。

オープンワールドの案件を手がける際は、クライアントの立場も兼任することになるため、デザインの入り口から出口まですべてに関わることができるのが面白いところです。時には自分自身の子育て体験を元にデザイン提案をしています。また、クライアントの立場を経験することで、予算に対する厳しい想いや、絶対に売らなければいけない危機感から、デザインに求めるミッションを逆の立場から感じる良い経験になっています。

直接的な意味で、地域らしいものをつくったり、地域ならではの強みを生かしたデザインをしたりすることはありませんが、小さな規模の、ちょっと変わった会社が「あかちゃん」と「アフリカ」という個性を持って会社を続けていられることに、名古屋という地域の小さ過ぎない市場の規模や、色々な役割をまとめて依頼していただける朗らかさが関係しているのかもしれません。

実は名古屋(愛知)には、理由は分かりませんが、たくさんのベビー用品メーカーがあります。なかでも、2009年から長くご一緒しているフィセルさんは、世界に向けて個性的で他にないコンセプトを発信。新しい挑戦をどんどんしている革新的な会社です。当社は、ブランドごとの販売サイトや、企業サイトの提案でご一緒させていただいています。

最近では、「企業サイトが古くなったので、そろそろ変更したい」というサイトリニューアルのご依頼を受けました。それで改めて同社について調べていくと、海に近く自然豊かな蒲郡に本拠地がある意味や、手づくりへのこだわりなど、伝えたい会社の魅力がまだまだたくさんありました。その魅力を、今後会社を一緒につくっていく存在となる、同社を志望する学生に向けて、発信する提案をしました。

重視したのは、美しい地元の環境へのこだわりと、スタッフによる試作品や展示会など自らの手で作っている温かさ。サイトには、私が小さい頃に家族で訪れていた会社近くの竹島の写真を使いました。

愛知県という同じ地域で育ったから選ぶことのできた景色や、見せることのできた会社の様子がたくさんあり、意識していなくても「同じ故郷という共通言語を持っている」という強みは生かされるんだと、改めて振り返ることができた機会でした。

こうした、地元で誇りを持って事業を展開している会社に関わることができる案件は、同じ地域に住む者として誇らしく、また非常にやりがいのある仕事のひとつです。

名古屋での私の仕事は、ほとんどが、こうした地域に密着した案件です。一つひとつの仕事を丁寧にこなすことで、足元から少しずつ地域の力になっているのではないかと思っています。

次ページ 「“アフリカ”に捉われすぎないブランドづくり」に続く