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【嶋浩一郎×田端信太郎×本田哲也×谷口マサト】2014年の広告業界を振り返る(前編)

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2014年も残すところ1カ月を切りました。今年も次々と新しい手法や概念が登場した、日本の広告業界。今回は博報堂ケトルの嶋浩一郎氏、さらに今年『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』を共著で刊行した田端信太郎氏、本田哲也氏、『広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門』(宣伝会議)を刊行した谷口マサト氏の4名の広告・メディア業界の論客に集まっていただき、2014年を振り返っていただきました。<本文中・敬称略>

広告業界を席巻した2014年のバズワード

——今年も、広告業界には様々な手法・概念が登場しましたが。

嶋:今年に限ったことではないけれど、ここ数年コミュニケーションの世界で起きている変化って、いろんな垣根が解けてなくなりつつあるということですよね。田端君がよく、コントローラブル、アンコントローラブルの軸、プッシュとプルの軸で分けた4つの象限に分けて、コミュニケーションの世界で起きていることを説明するけど、この図で言えば、トラディショナルな広告はプッシュ型で完全コントローラブルですよね。デザインもコピーも決められるし、出稿するスケジュールも決められるから。

広告業界の人たちは、長いこと4象限のうちの1つの枠しか扱ってこなかったから、それが一気に4象限に広がってしまい、アワアワしているのがここ数年の状況だと思います。

広告業界の人たちが使う「バイラル動画」とか、「ネイティブアド」みたいなバズワードって、たいていこれまで広告業界の人たちが扱ってこなかった象限に位置する手法に名前を付けただけだったりする。

PRをやってきた人は、もともとアンコントローラブルな世界を扱ってきたわけだし、コンテンツを作ってきた人は、プル型の世界を扱ってきたわけだから、それらは決して新しい手法ばかりではないのだけれど。

1970年代から多くの人がテレビを見たので、コミュニケーションのメインのチャネルはテレビになってしまった。そもそも歴史を遡ればティファニーが銀食器を使ってもらうためのマナーブックを作り、ミシュランはドライブしてもらうためにガイドブックを作っていたわけですから。これとか完全に今で言うコンテンツマーケティング!

本田 哲也 氏

本田:あくまでコントローラブル、プッシュ型のフィールドからは新しい手法に見えることが、バズワードになっているという嶋さんの指摘、最もだと思います。

一方で世界的なPR業界の視点で見ると、逆の景色も見えてきます。具体的には今、PR業界が、逆にコントローラブルなものに寄っていこうという動きがあるんです。私が属しているフライシュマングループも、ペイドメディア領域に進出していこうという動きがあります。でもPRエージェンシーには、クリエイティブディレクターみたいな人がいないままにやってきたので、まさに嶋さんはこの領域のクリエイティブディレクターですけど、アメリカでは意外と少ないので、そこは課題になっています。

次ページ 「あらゆるところで、垣根が決壊している」へ続く