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追悼・岩崎俊一氏、コピーの作法「うまいこと言え。」

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コピーライター、クリエイティブディレクター、そしてエッセイストとしても活躍した岩崎俊一氏が12月20日に死去した。享年67歳。
通夜は12月26日午後6時、葬儀は27日午前11時から東京都町田市森野1-11-14 湘和会堂町田で。喪主は妻けい子さん。

岩崎氏は、1947年京都市生まれ。70年同志社大学文学部文化学科心理学専攻卒業。大毎広告、レマン、マドラを経て79年岩崎俊一事務所を設立した。
多くの企業・ブランド広告に携わり、これまでにTCC賞、ACC賞、ギャラクシー賞大賞、読売広告賞、朝日広告賞、毎日デザイン広告賞、日経広告賞、カンヌライオンズほかを受賞している。
また、東京コピーライターズクラブには1977年の入会後、TCC賞審査委員、TCC幹事としても長きにわたって尽力した。
これまでの主な作品に、「21世紀に間に合いました。」(トヨタ自動車)、「美しい50歳が増えると、日本は変わると思う。」(資生堂)、「人は貧しいという理由で死んではいけない。」(日本フォスター・プラン協会)、「やがて、いのちに変わるもの。」(ミツカン)、「今日を愛する。」(ライオン)、「きたえた翼は、強い。」(全日空)、「トンボが動いている。人が、何かを生み出している。」(トンボ鉛筆)、「幸福は、ごはんが炊かれる場所にある。」(プレナス ほっともっと)、「木と生きる幸福。」(住友林業)、「年賀状は、贈り物だと思う。」(日本郵便)、「人の心が、年の初めに届く国。」(郵便事業)ほか。

12月27日から西武池袋本店で、谷内六郎の絵と岩崎俊一のコピーで綴る昭和展「昭和というたからもの」が始まる。本展の作品は、谷内六郎の郷愁とやすらぎに満ちた日本の原風景と、岩崎氏の独自の視点で切り取られ、生まれた言葉たちとの出会いにより作品化されたもの。展覧会に合わせて、オリジナルカレンダーも発売となる。展示は、2015年1月5日まで。

岩崎氏を追悼し、「ブレーン」2014年10月号「超新訳コピー・バイブル」に寄稿いただいた原稿をあらためてご紹介します。

うまいこと言え。

岩崎俊一

首都高を走っている時、アーチにかかっている交通安全標語が目に入った。
「早く帰るより 無事に帰るほうが ずっと大切」
言っている事は正しいですよね。どこも間違っていない。
では良い表現かと言われたら、良くはない。
下の句の「ずっと大切」がいかにもきれい事で、実感に乏しくて、読む者に迫って来ない。
俺ならこうは言わんぞと、よせばいいのに早速言い回しを変えてみた。
「早く帰るより 無事に帰るほうが ずっと早い」
交通事故に遭った人ならこの感覚はわかるはずだ。
その後処理は、それはそれは時間のかかる悪夢のようにめんどくさい作業である。
ガンになった人が診察を受けた。
付き添いで同行した奥さんが、担当の先生に訴えた。
「この人食欲がないものだから、食事を取らずに
クッキーとかケーキとか甘いものばかり食べて困るんです」
先生は答えた。それはいけませんね、などと甘いことは言わない。ずばりこう宣告した。
「あなたの食べているもの、それ、ガンの餌ですから」
鮮やかな表現である。
聞いた本人は震えあがった。エサ!?俺はガンの育ての親か!
その日から彼はクッキーを一切口にしなくなった。
コピーライターの仕事を分解すれば、
コンセプト作りと言葉探しの2つに大別される。
どちらも大事であることは言うまでもないが、特に僕は、
後者の「どう言うか」こそコピーライターという仕事の真髄だと考えている。
ものは言いよう。
どんなに大事なこと、必要なことを言っていても、
言いかたがつまらなければ役に立たない。
同じ中味をテーマにしても、
結果は「言いかたが上手」な者の圧勝なのである。
うまいこと言え。
これが、岩崎俊一からの助言である。