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Welcome to the DIGITAL MARKETING!〜『マーケティングプロセス別デジタルテクノロジー導入』

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情報の非対称性が崩壊し双方向の関係へ

デジタルテクノロジーが浸透したことで、企業と消費者の間の情報の非対称性が崩れた、というのもよく指摘されることです。

それまでは、情報発信には多額のインフラ投資が必要だったため、一部のメディア企業しか、発信者になることができませんでした。それがテクノロジーの進化は、情報発信に関わるコストを著しく下げ、誰もが情報を発信できるようになっています。

企業がマス広告を使って、一方的に消費者に情報を発信していた、これまでの流れが双方向へと変化し、さらに企業だけが情報を持っていて、消費者は情報を持っていないという非対称の状況が崩壊したのが今の時代です。

これによりマス広告を始めとするプッシュ型のプロモーションが中心だった、企業のマーケティング活動は大きな転換を余儀なくされています。

しかし、今の環境だからこそできる、新しいマーケティングの取り組みも進んでいます。ここでは、マーケティングの各プロセス別に代表的なデジタル活用施策を紹介していきます。

PROCESS 1「商品開発×デジタル」

スマホの浸透、それに伴うソーシャルメディアの利用シーンの増加で、日常的に情報発信をする消費者が増えています。

ネット上、特にソーシャル上には、消費者の生の声が溢れていると言えるでしょう。そうしたソーシャル上の声を収集・分析し、商品開発やサービス改善に活かそうとする取り組み「ソーシャルリスニング」を行う企業も増えています。

ソーシャル上の投稿を収集・分析すると聞くと、企業にとってネガティブな、脅威となるような投稿を発見するためのリスク管理の一環というイメージを持つ方も多いと思います。実際、小売り流通、サービス業など、お客様と社員の直接接点が多い業態では、リスクマネジメントとしてソーシャルリスニングを取り入れている企業が多くあります。

しかし、ソーシャル空間には無料でアクセスできる消費者の声が無数に眠っていると考えれば、「守り」の活用だけでなく、商品開発に活かすなど「攻め」の活用にも広がっていきます。

また、オンライン空間にその企業の商品のファンや商品に関連したテーマに関心を持つ消費者を集めたコミュニティを作り、その場を使って新しい商品開発のアイデアをリサーチするなどの活動も広がっています。オンラインコミュニティを活用した調査手法である「MROC」(*3)も、3年ほど前から日本でも広がり始めています。

こうした背景にあるのは、従来の調査票を用いた「アスキング」型だけでなく、より自然な形で消費者の声を知る「リスニング」型のデータ収集に対する期待感があります。


*3【MROC】
Marketing Reserch Online Communityの頭文字をとったもの。オンライン上で特定のテーマに対して関心を持った人たちを集め、コミュニティ内の自然な会話の中で、消費者インサイトを発見するリサーチ手法

PROCESS 2「販路開拓×デジタル」

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今年8月に経済産業省が発表した「平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(図2)によると、日本の EC 市場規模(B2C)は約11兆2000億円で、前年比で17.4%の増加。全ての商取引金額に対する、電子商取引市場規模の割合を示す「EC化率」もB2C で は前年比0.6ポイント増の3.7%となっています。

これまで小売り・流通経由でしか商品を販売できなかった、お客様と直接接点がなかったメーカーにとっても、ECというチャネルはダイレクトにつながり、単に商品が売れるだけでなく、お客様の理解につながるという点から、活用が進んでいます。

試作品、基幹ブランドのターゲットやイメージとは異なる新商品を開発・発売する際など、まずは自社ECという限られたチャネルだけで小さく始めるなど、テスト的に活用するケースもあります。

PROCESS 3「顧客体験×デジタル」

さらに販路領域の最近のデジタルテクノロジー活用の一番大きな話題は「オムニチャネル」(*4)です。

オンライン、オフラインを自由に行き来し、いつでも、どこでも、好きな時に商品を購入したいと考える消費者にストレスを感じさせないため、販売における、あらゆるチャネルをシームレスにつなぐのがオムニチャネルです。

その実現に際しては、オンラインとオフラインの在庫情報や顧客データの統合、さらに物流インフラの整備に加え、評価の仕組みの見直しなども必要です。

例えばECサイトのマーケティング活動が、リアル店舗にお客様を送客し、そこでの売上拡大に貢献するケースなども考えられますが、多くの企業がオンラインとオフラインのチャネルを見る部門が異なります。

部門の壁を超えた互いの貢献を評価し合える仕組みがないと、システム面だけを統合しても、オムニチャネルは十分には機能しません。

このように、実現に際しては大きなハードルがありますが、前ページで触れた「販売チャネル」の断片化が今後、ますます進んでいくことを考えれば、オムニチャネル対応は必須のテーマとなっていくでしょう。


*4【オムニチャネル】
オンライン、オフラインを問わず、複数のチャネルをまたいで顧客データベース、商品在庫・販売情報を一元管理することで、消費者のニーズにいつでも、どこでも、対応できるようすること。個々人の購買ニーズがいつ、どこで発生しても対応ができるようにすることで、消費者のストレスを回避し、満足度、ロイヤルティを高めることを目的とする。

PROCESS 4「広告・プロモーション×デジタル」

広告・プロモーションの領域もテクノロジーの浸透で進化を遂げています。

最初の変化はマスメディアに比べて広告枠の安価なネットメディアが登場したことで、広告を活用できる企業の裾野が大きく広がったことがあります。

その後、広告配信の技術「アドテクノロジー」が大きく進化を遂げました。配信技術の進化が目指すところとは、狙ったターゲットにより効率的に広告を届けることです。

ある企業や商品のサイトにアクセスした後、他のサイトに行っても広告枠に、その企業・商品の広告が掲出される経験のある方も多いでしょう。この背後にあるのは、一度サイトを訪問したユーザーを追跡して、他のサイトでも広告を出すことで再度、訪問をしてもらうことを目的とした「リターゲティング広告」という技術です。

リターゲティング広告は、ユーザーのオンラインでの行動履歴を元に、そのユーザーが興味を持つであろう領域を推測し、その関心に合った広告を配信する「行動ターゲティング広告」の1つです。アドテクノロジーの領域では「枠」から「人」へということが言われています。今後もターゲティングの精度を向上させる取り組みが進んでいきます。

PROCESS 5「顧客のロイヤル化」

日本のような成熟化した市場では、商品の機能競争が行き着くところまで行き、需要を喚起しづらい環境と言われています。

毎回、大量に広告を打ち、新規顧客を獲得するモデルから、既存顧客との関係を深め、リピート購入を促す方向へと成熟市場の中では、マーケティングの方向性も変わってきています。

LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)といった考え方がでてきたのも、こうした流れを受けてのことです。

既存顧客に対するフォローも、これまで人的営業が担っていた部分をデジタルテクノロジーの活用で効率化が可能です。従来からあるメールマガジンも顧客データの分析とそれに基づくメッセージ配信で効率を高めることが可能ですし、常につながるソーシャルメディアは特にファン層とのコミュニケーションに有効です。

またソーシャルメディアで、商品・サービスに関するクレームを呟いているような顧客に積極的に話しかけ、問題解決を図る「アクティブサポート」という手法も出てきています。

デジタルチャネルを通じて得られるお客様に関するデータ分析することでお客様を深く知る。さらに、限りなくワントゥワンに近い顧客対応もデジタルツールを活用することで、コストを削減しながら可能になっています。購入後のコミュニケーション活動、ロイヤリティを高める施策にもデジタルが活用できる余地は多くあります。

商品開発から、購入した後まで。24時間、365日消費者とつながることができるデジタルのチャネルは、マーケティングのあらゆるシーンでの活用が広がっています。

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