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コラム

広告のやり方で、スポーツを創ってみた。

キャッチコピーではなく、キャッチ概念を書く。

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【前回のコラム】「ハンドソープボールが生まれた夜」はこちら

僕は今、
高知県の仕事に携わっています。
後輩の大瀬良君から
「コウチの仕事やりませんか?」と誘われ、
本気で「COACH」だと勘違いし、
「ファミリーセールに行けるぞ!」と勝手にテンションが上がり、
途中から「高知」であることに気づいて青ざめつつも
元々四国が好きだったこともあり、
関わらせて頂いている仕事です。

僕らに課されたミッションは一つ。
「高知県への移住者数を増やすこと」。
かなりの難題です。
さぁどうしよう。

この仕事には、あるキーマンがいました。
いい意味でヤクザのような風貌をした、
クリエーティブ・ディレクターの安田さんです。
安田さんは高知育ちで、高知大好きで、
ひたすら語尾に「ぜよ」がつきます。
「今から飲みにいくぜよ」
「もっといい企画もってきてほしいぜよ」
「代ゼミぜよ」
最後のはただの回文ですが、
いずれにせよ尋常ならざる土佐愛に溢れた方です。

そんな安田さんは「土佐ペディア」と呼ばれるほど、
高知情報を完璧にインプットされている方で、
ひたすら高知の事を教えてくれました。
カツオがおいしいとか。四万十川がキレイとか。日本酒がおいしいとか。
まぁ嬉しそうに語るんです。
で、高知の人を沢山紹介してくれて、
その人のことも自慢します。
周りの人も、明るい明るい。
一緒にお酒を飲むと、みんなとても楽しいんです。
でも次第に僕は、ある事に気づきました。

この人たち、異常なまでに人懐っこい。

パーソナルスペースが狭いどころか、
皆無なんじゃないかしら。
と思うくらいズリズリと距離を詰めてきます。
とにかくおせっかいで、超絶フレンドリー。
暑苦しい。だけど、不思議とそれが心地いい。

歴史を紐解くと、高知にはお遍路の流れで
「出会った人はみんな大事」という、
熱い風土が根づいていることが分かりました。
誰に対しても、まるで家族のように振る舞うのです。

そこで僕はふと思いました。
高知を「人口73万人の県」として捉えると、
他県と比べて特色がありません。
でも、「73万人の家族」として捉えるのはどうだろう。
そんな大家族はきっとないはずです。

ただ、企業や団体を家族として捉えるメタファー自体は、
新しくありません。むしろ常套手段です。
このようなケースでは、多少違和感のある言葉に
落とし込むくらいが良い。
考えたのがこちらです。

高知家(こうちけ)。

まさかの「県」いじりです。
この事を何人かに話したところ、
「大胆だね」「失敬だ」
等と言われたのですが、
日本語に馴染みが薄い帰国子女の僕は
抵抗なく「県」を手放すことができたのです。
(そう。僕は都合良く自分が帰国子女であることを振りかざします)

高知県が、高知家という一つの大家族になること。
それは、47都道府県が、47都道府県家になるような、
ささやかなパラダイムシフトが起きること。
ちょっとドキドキします。

次ページ 「高知家がもたらした効果。」へ続く