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成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。
吉田達也(よしだ・たつや)
アップストリーム 代表取締役
1972年、東京生まれ。大田区の大地主で、不動産事業を営んでいた父から、30億円の借金があることを告げられ、借金を返済し、また先祖代々の土地を守るため、会社員を経て27歳の時に起業を決意。14年かけて借金を完済。「うしすけ」「のむろう」などのブランドで飲食事業を展開する。
ドッグカフェの一場面から閃き
全国で約1万頭の犬が飼育されているといわれる日本。ペット関連ビジネス市場は1兆4000億円の規模があり、さらにその市場は拡大を続けている。そんなペット市場で新機軸のサービスを打ち出し、愛犬家たちの支持を受けている会社がある。愛犬と一緒に焼肉を楽しめる店「うしすけ」を展開するアップストリームだ。アップストリームは1998年に設立。都内を中心に複数の飲食店を経営してきたが、2007年に東京・お台場に愛犬連れで入店できる「肉菜工房うしすけ台場店」をオープン。現在は東京・大田区の「和味焼肉 うしすけ本店」と2店舗で、愛犬連れOKの対応をしている。
「『うしすけ本店』がオープンしたのは、1999年のこと。焼肉店は外食産業の中でも成熟が進んだ市場で、ブランド牛を扱うだけでは、なかなか差別化ができないという課題を感じていました」とアップストリーム、代表取締役の吉田達也氏は話す。どうしたら「うしすけ」ならではの価値をつくれるだろうか…。悩んでいた吉田氏は、ある場面に遭遇する。
「当時、日本でもドッグカフェが流行り始めていて、私も犬を飼っていたので、時々出かけていました。そこで、ある女性アーティストの方を見かけたのですが、大きなラブラドルレトリバーが寝そべっている横で、普通に食事をしていて、その姿がとにかく、かっこよくて。ドッグカフェはすでにあるけれど、もっと違う飲食業態で犬と一緒に入店できる仕組みをつくれれば、大きな差別化要素になるのではないか。愛犬と一緒に入れる焼肉店のアイデアは、ここから閃めきました」。
そもそも「飲食店が繁盛するカギは味、価格、雰囲気、サービスの4つと言われているが、成熟化した時代には、それらに加えて、その店に行く“理由付け”が必要」と考えていた吉田氏。「愛犬と一緒に食事をしたいから『うしすけ』に行こうという理由は十分、差別化要素になりうるはずと考えた」と言う。
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