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コラム

i(アイ)トレンド

昨年のニュースキュレーションアプリに匹敵する伸びを見せるか? 2015年は音楽定額配信サービスが飛躍の兆し

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前回(6月24日掲載)のコラムでは、音楽配信サービスの最近の盛んな動きについて紹介したが、ここに来て、その動きの加速を裏付けるような現象が顕著に出てきている。「ユーザー獲得のための大量のマーケティング投資」である。

筆者は昨年、話題のニュースキュレーションアプリ動向(1)「大手各社、会員拡大へ広告強化」という記事を執筆したが、それと似たような現象が今、音楽配信サービスに起きている。ニュースキュレーションアプリの時には新興のベンチャー企業が目立っていたが、音楽配信ではすでに巨大な顧客ベースを持つ大手インターネット企業(サイバーエージェント、LINE、Apple)が主役となり、大規模なマーケティング投資を行っているのが特徴だ。

AWA、LINE Music、Apple MusicがテレビCMを開始

音楽配信サービスに参入した3社のテレビCMから、各社の思惑を読み解いてみたい。

AWAは人気のシーン別プレイリストが鍵となるか?

AWAのTVCM

エイベックス・デジタルとサイバーエージェント(CA)が事業展開するAWA(アワ)のCMは、全体的にインターナショナルな“クラブ”や“DJ”のイメージを出しており、CM中に音楽を聴くときのムードや聞くシチュエーションを言葉にして出している(HAPPY, EXCITED, RELAX, LOVE, SAD, DARK, MORNING, SLEEP, STUDY, WORKOUT, PARTY, DRIVEなど)。特定のタレントにフォーカスすることなく、音楽もオリジナルを作成して使用している。

実際にAWAでは、著名人や専門家、個人が作ったプレイリストが人気で、良く聞かれているということである。

「プレイリストは日々増えており、1人で100以上のプレイリストを作っているユーザーもいる、人気のプレイリストは1万人以上にお気に入り登録されているものもある」「8曲を単位とするプレイリストは30分ほどの長さになり、集中して作業をしたいときやある気分に浸りたいときにぴったり、よく聞かれる時間帯は自宅~通勤まで、帰宅時、夜寝る前」(CA広報・上村嗣美氏)。

また、プレイリストをつくることにより、「すべての曲が生きている“捨て曲が無い”状況を作りたかった」(CA藤田晋社長)という。また「AWAのロゴを左右対称にこだわったほか、ネーミングやビジュアル、また特に音楽プレーヤーとしての使いやすさにはかなりのこだわりを持って臨んだ。昔CDを買っていた層も狙っているので、音楽を所有している感も出したかった」(同)ということである。

実際に、CM発表イベントでは小室哲哉氏らをキャスティングし、音質も64、96、128から320kbpsの高音質まで対応しており、狙っている世代もバブルを経験したような世代が含まれるではないかと考えられる。

30秒試聴が可能な新世代音楽コミュニケーションツール:LINE MUSIC

LINE MUSICのテレビCM

LINEのテレビCMを見ると、ティザー編では女子学生に扮した桜井日奈子さん、サービス開始後の本編(~聴く編~)では雨の日に自宅でスマホを片手にカーリー・レイ・ジェプセンの“I Really Like You”を聴きながら踊っている小松菜奈さんと、人気上昇中のモデルをキャスティングしていることが特徴として挙げられるだろう。

そしてキャッチフレーズとして“音楽をLINEしよう”と音楽をコミュニケーションツールとして使う新しい提案をしている。LINE MUSICには有料課金サービス時には“学割”も用意されていることから、まずはLINEのヘビーユーザーである若い人向けにアピールしたいという姿勢がCMとも相まって見えるのではないだろうか?

LINE MUSICは6月11日にスタートしたが、開始日は秘密だったためにその朝、情報番組で開始が報道された時には「毎分10万人以上のアクセスがあり、システムが耐えられなかった」(LINE舛田淳 取締役)という現象が起きたという。またLINE MUSICにもプレイリストがあり、「プレイリストは予想以上の利用率」(同)ということである。

しかし、筆者が考えるLINE MUSICの最大の強みは、そのコミュニケーションサービスとの親和性である。

LINE MUSICは楽曲を自分のタイムラインにシェアする機能を持っており、有料サービスに加入しなくても30秒間の視聴が可能なため、スタンプ的に使うことが可能である。また、有料サービスは30日単位で更新(自動更新ではなく)されるために、「好きな時に、手軽に音楽配信を聴ける」サービスとしてユーザーの会話のなかで広がってゆく構造になっている。

手軽に使えるが「LINE MUSICは本格的な音楽サービスを目指しており、音質なども通信環境によって最適化するなどのきめ細かいサービス開発を行っている」ということで、64, 192, 320kbpsの中から通信環境に合わせた最適な配信が行われる(Apple Musicは256kbps固定、AWAは64, 96, 128, 320kbpsを選択)。“簡単なのに音質がいい”というところもLINE MUSICの強みとなっていくのではないか?

次ページ 「音楽の歴史を訴え、スケール感を演出するApple Music」に続く