【前回のコラム】「記者会見に失敗し、信用毀損に陥った企業を再生させるには〜『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(2)」はこちら
『リスクの神様』第3話では、一見、サンライズ物産に直接影響が希薄に見えた2つの事件が企業存続をも揺るがす事態に発展し、窮地の中、対応を迫られる危機対策室の活躍を描いている。2つの事件を収束させようと奮闘する神狩かおり(戸田恵梨香)に対して冷静沈着な西行寺智(堤真一)は、サンライズ物産の危機を救うべく究極の対策を模索し、密かに別の行動を起こしていた。
このコラムでは、毎回の放送後に『リスクの神様』の見どころや危機管理と広報の教訓、キーポイントなどを本ドラマの監修者で危機管理の専門家としての筆者の目線から解説していく。
第3話のあらすじ
サンライズ物産が所有するクルーザーが座礁事故を起こした。現場で極秘裏に事故処理した西行寺智(堤真一)、神狩かおり(戸田恵梨香)、結城実(森田剛)らだったが、クルーザーに乗っていたのは、次期総裁候補の民自党代議士・薮谷虎之助(名高達男)と若い女性(エミ レナータ)だった。サンライズ物産社長・坂手光輝(吉田鋼太郎)は、薮谷と女性の密会そのものをなかったことにするよう、西行寺に指示した。一方、広報部の橘由香(山口紗弥加)は、サンライズ物産の企業広告に起用しているアイドルの北条ちなみ(新川優愛)から、「友人が血を吐いて倒れている」と連絡を受ける。由香はちなみの知り合いだという映画スタッフ・高原(若林誠)のマンションに向かい、高原を病院に連れていく。しかし、翌日、ちなみの前にライターを名乗る男・大友(岡部たかし)が現れ、高原の件を切り出す。知らせを受けた由香も大友に会った。すると、大友は、「高原には危険ドラッグの常習者という噂もある」として、2000万円を要求する。
第3話の教訓—神様だって、すべては救えない。
第3話では、サンライズ物産所有のクルーザーが座礁事故を起こして、船内にいた次期総裁候補の代議士と謎の美女が負傷する場面から始まる。ニュースの価値は、主にその登場人物とその状況を作った関係者で決まる。二人はなぜそこに居たのか、なぜ坂出社長は代議士にクルーザーを貸したのか、関係者は口を閉ざし、坂出社長は、ただひたすら危機対策室に事態の鎮圧だけを命じる。まだ、この時点ではサンライズ物産と代議士、さらに代議士と謎の美女との間に深い闇が隠されていることを危機対策室は知らない。
一方、サンライズ物産のCMキャラクターに抜擢されていたトップアイドルの北条ちなみ(新川優愛)の周辺でも脅迫事件が発生し、事態は複雑な展開を見せる。北条ちなみと不適切な関係が懸念される映画スタッフの高原譲には危険ドラッグ常習者という噂もからむが、ちなみ自身が否定し、こちらの事件も事実関係が判然としない。
追いつめられた危機対策室は、メディア、関係者などから情報を収集するが多くの情報は得られない。そうした中、重要な手がかりが謎の美女の携帯電話から発覚する。高度なセキュリティロックで厳重な情報管理をしていたと見られる美女の携帯電話のロックを解除し、デジタルフォレンジック(対象となるハードディスクから証拠となるファイルを探し出したり、サーバーのログファイルからアクセスの記録を割り出したり、破壊・消去されたディスクを復元したりして証拠となるデータを押収したりといった技術が該当する)を用いて携帯電話の中に記録されている情報を解読していく。
多くの危機対策の中でも、このような地道な情報収集や分析・解析が重要な手がかりにつながることがある。パソコン、サーバー、ネットワーク機器、携帯電話、情報家電などに潜む内部資料や極秘資料にも眠った重要な証拠・手がかりは存在する可能性がある。
危機対策室は、小さな手がかりを突破口として、単なる不倫スキャンダルかと思われたクルーザーの座礁事故の裏に、サンライズ物産が代議士に依頼して行政や司法関係者に根回しし、業務改善命令や訴訟沙汰を揉み消し逃れていた過去をあぶりだす。さらに、その代議士には日本と国交がない軍事独裁政権国家であるベニグスタン政府関係者(謎の美女)と何らかの目的で秘密裏に接触していた事態が現実を帯びてきた。
2つの事件は、関係者の協力が得られないまま、あばく側と守る側との情報戦となり、両方の事件の鎮圧に躍起となる神狩かおりは苦戦を強いられる。そんなかおりになぜかクールな西行寺。彼には誰にも伝えていない究極の秘策があった。
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