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電通・菅野薫が語る映像クリエイティブ「統合キャンペーンの時代だからこそクラフトマンシップを!」

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ACCの協力のもと第一線で活躍するクリエイターに、映像クリエイティブについて深掘りした話を伺う短期シリーズ企画。第1回目は現在、広告クリエイティブ業界で最注目の人物と言っていいであろう、電通・菅野薫氏に話を聞きました。

―――菅野さんは、2014年のクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞され、現在、広告クリエイティブの最前線で活躍されている方ですが、まず「電通のクリエイティブ職に所属した経験がない」っていうことが驚きですよね。

正確なことは、僕もよくわからないんです(笑)。いま、僕が所属している電通のCDCという組織は元々ありとあらゆる種目の才能が混在していて、広義の意味でのクリエイティブ集団なんですね。 僕は長らく電通総研とかの研究開発部門にいて、2年前にCDCに来たのですが、それをもってクリエイティブ職になったのかな?自分のやり方で働いているうちにいつの間にかクリエイティブという肩書を持つに至っていた、という感じです。いったいクリエイティブってなんですかね?定義次第ですね。

―――そうなんですか!電通のなかで「クリエイティブ」を名乗ることって、もっと厳格な審査や手続きが必要なのかと思っていました。

確かに3年くらい前までは、かっちりとクリエイティブ職はクリエイティブ職で分けられていました。自分にとっても“クリエイティブ局”はある種、神聖なるゾーンという印象でした。でも、いまは、クリエイティブ職をやめたわけでもなくほかのセクションに所属している人も増えています。コピーライターのままソーシャルやデジタルの仕事をしたりとか。逆にストラテジー出身でクリエイティブディレクターになっている人がいたり。ここ1~2年は電通のなかで部門や職種があまり関係なくなってきたと思いますね。

―――なるほど。では、“クリエイティブ職“という聖域に、外部の部署から突然、菅野さんがやってきて、CDを名乗るに至るには、いろんな摩擦や、やりにくさもあったんじゃないですか?

自分より少し前の世代で、組織が設定していた職種の壁を越境して仕事の幅を広げてきた先輩クリエイターとか、「“クリエイティブ”を名乗ることに、戦いがあった!」と、まるで革命のような話をされていたりしますよね(笑)。自分はおそらく、その先人たちが闘ってポジションを獲得してくださった後だったからだと思いますが、そこまでやりにくさやハレーションはありませんでした。

僕は、自分でクリエイティブを名乗りたいと強く思ってたわけではなかったんですが、素でやっていたことから結果的に仕事が定義されていった感じです。

―――淡々と自分の仕事と向き合っているうちに、結果的にそのアウトプットが評価された、ということですね。しかしながら、菅野さんが過去手掛けられた仕事を見るに、実は菅野さんは相当「ビジュアルの人」なんじゃないか、と思っているんですよ。過去のデータに潜んだストーリーやドラマを、いかに可視化するか、を徹底的にこだわっておられる。

そう言われると、データを扱い、そこから見えてくる真実を表示させるという作業は、アートディレクションに近いのかもなと思います。データ自体には多面的要素があるけれど、この角度からこのように光を当てたときに最も伝えるべき事実が浮かび上がる、という角度を発見し、切り取る作業なので。

僕はフィクションとしてのCMやストーリーテリングの技法は訓練していないのですが、データを読み解く技術はあった。だから、データをもとに、人の足跡やそこに刻まれたストーリーを絵や映像で表現しただけなんです。

次ページ 「ここからは、菅野さんが思う映像クリエイティブについて」へ続く