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コラム

CSR視点で広報を考える

100%子会社で重大犯罪発覚! 親会社の社長はどこまで責任をとるべきか?-『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(9)

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【前回のコラム】「経営者に梯子を外された経理部長の無念!経営者が指示した「不正会計」に対して企業再生は可能なのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(8)」はこちら

『リスクの神様』第9話では、サンライズ物産が100%出資した子会社サンエアーズ社で重大犯罪が発覚する。親会社から出向している社員が中心となり、国の許認可を受ける際に不正にデータを改ざんした疑いが持たれる。

その結果、許認可を得た「工業用硫化水素除去装置」は210社の企業に販売され、その従業員の安全に脅威を与え続けていることが判明。さらに、坂手社長のメタンハイドレート開発への過剰投資問題、サンライズグループで起きた一連の危機の背景、30年前の事件の真相と、それぞれの問題や事件が急速に動き始める。

これまでにない展開の早さと危機対策の動きが見逃せない。西行寺はなぜ、サンライズ物産に来たのか? 彼はサンライズ物産にとって本当に天使なのか、それとも悪魔なのか?クライマックスが近づく中、徐々にその真相が明らかにされる。

このコラムでは、毎回の放送後に『リスクの神様』の見どころや危機管理と広報の教訓、キーポイントなどを本ドラマの監修者で危機管理の専門家としての筆者の目線から解説していく。

第9話のあらすじ

西行寺(堤真一)は、メタンハイドレート開発事業の会計資料を調べていた。そこに、衣服が血で汚れた坂手社長(吉田鋼太郎)が現れる。坂手は「一緒にいた相手が吐血して倒れた」と説明、西行寺は結城(森田剛)にこの件を対処するよう指示する。

同じころ、かおり(戸田恵梨香)は、サンエナジーに出向中の由香(山口紗弥加)と会っていた。由香が、危機対策室からの聞き取り調査で帰国したことを知らなかったかおりは、戸惑いを隠せない。深夜、対策室に呼び戻されたかおりは、サンライズ物産が100%出資したサンエアーズが、工業用硫化水素除去装置の認可を通すために検査数値を改ざんしていたという事実を知らされる。調査を進める中、環境事業部長の峰岸(伊藤正之)が、サンエアーズ開発部主任ののぞみ(黒坂真美)に「どんな工夫をしても成功させろ」に強く迫っていたことも明らかになった。

そんな中、坂手の還暦を祝うパーティーが開かれ、民自党総務会長の薮谷(名高達男)らが出席する。この会場で西行寺は、坂手にサンエアーズの件を報告した後、密かに薮谷にも接触する。その後、西行寺は、坂手や環境事業担当常務の永嶋(羽場裕一)らと話し合い、株価下落を最小限に抑えるため、週末の東京市場終了後にサンエアーズの件を公表することにするが…。

第9話の教訓—サンライズグループに蔓延する不正連鎖のスパイラル

第9話は、子会社サンエアーズ社でのデータ不正改ざん事件のほか、これまでサンライズグループで発生した事件の背景、坂手社長自身が関与したと思われるメタンハイドレート開発への過剰投資問題などがあぶり出されていく。不正は「元凶を断つ」ことが重要だが、その意味で各事件は「トカゲのしっぽ切り」に終始し、不正連鎖のスパイラルは依然、サンライズグループ内で続いていた。

サンライズ物産は、親会社として子会社へ社員を出向させ、成果至上主義を擦り込み、失敗を許さない企業風土を長い間にわたって醸成していた。親会社の「鉄の意思」は、「不正を行っても成功させろ」という暗黙の了解・部下への指示という形で伝達され、サンライズグループ全体の業績牽引に大きな影響を及ぼしていた。西行寺は、その元凶の始まりが自身の父親が関わった30年前の事件と密接に関係があったと密かに考え、危機対策室の種子島に調査を依頼していた。

過去の事件や危機は単独に発生したと思われていたが、その背景や原因を辿っていくと、一つひとつのパズルがはまり、何かが完成した。それが果たして西行寺が求めていた答えだったのか、彼がサンライズ物産に来た理由であったのか、その謎の解明は最終話に引き継がれる。

これまで、西行寺の手腕を買い、危機対策によって自らの責任を逃れ続けてきた坂手社長、そして経営陣に対しても、西行寺は、メスを深く刺し入れて、サンライズ物産という大きな闇に最後の大手術を行う決心を固めていた。

第9話の見所:「リスクの神様」の名台詞のオンパレード

「リスクの神様」では、これまでのストーリーの色々な危機の局面で、危機対策の重要なセオリーとも言えるキーワードがさりげなく使用されている。第9話では次々と発生する危機的事態に対応すべく、西行寺や他の対策室メンバーが惜しげも無くそれらのキーワードを連発している点が見所のひとつだ。

「私には全ての真実を話してください。あなたの言葉に嘘があると、守れるものも守り切れなくなります」

西行寺が坂手社長に対して語った一シーンだが、危機管理を行う者は、あらゆる情報にアクセスしていなければならないことが鉄則であることを物語っている。

さらに、西行寺は、「あらゆる情報を入手するのが危機対策だ」「不祥事の全容を把握する。それが危機対策の基本だ」と語っている。

一方、不祥事発覚から公表のタイミングについて、「外部から不正を指摘されてからでは、何をやっても手遅れになる」「不祥事はできる限り速やかに公表する」ことが重要と何度も力説する。公表の遅れは、危機対策において致命傷となる点について、過去のストーリーでも何度も語られてきた名台詞だ。

また、サンライズ物産の永嶋常務が「こんな不祥事を公表すれば、坂手社長の足下をすくおうとする輩が現れないとも限らない」と公表を止めようと詰め寄るシーンでは、「会社の勢力争いに気を遣って情報を隠ぺいすれば、罪の上に罪を重ねることになります」とかおり(戸田恵梨香)がきっぱりと跳ね返すシーンも痛快なシーンだ。

次ページ 「第9話の見所:リアリティを追求したらこうなった!」へ続く