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コラム

戦略PR視点で、大学・地方・アートを考える

「先生!ステマって何ですか?」「ステマとPRの境界線はどこですか?」「PR会社ってウラで何をやってるんですか?」

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【前回のコラム】4限目「先生!先生は企画をパクったことありますか?」「パクりとインスパイアとの境界線はどこですか?」はこちら

本日のアジェンダ

  • 「ステマ」って何ですか?
  • ステマとPRの境界線はどこですか?
  • PR会社って「ウラ」で何をやってるんですか?
  • クライアントとPR会社の担当者とは事前に何を相談するのですか?
  • PR会社って何だか誤解されてません?
  • ステマはどうすればなくなりますか?
  • PRの仕事って、何がそんなに面白いんですか?

近年、「ステマ(ステルスマーケティング)」という言葉が広く用いられるようになりました。この「アドタイ」でも3年ほど前になりますが、「ステマの境界線」について書かせてもらいました。

「ステルスマーケティング」と「マーケティング」の25の境界線を戦略広報の視点で考える

しかし相変わらず「ステマ」が具体的にどういった行為のことなのか。通常のマーケティング活動との境界線はどこなのか、明確な区別がなされていません。芸能人が関係する「ステマ」ばかりがセンセーショナルに取り上げられたりします。どう考えても古くからある普通のPR活動に対して「あれステマじゃない?」などと個人ブログなどで面白半分に揶揄するケースもみかけます。

そこで今回は「ステマとマーケティングの境界 Ver. 2015」として、PR会社の役割も含めて私が教鞭を執る大学の学生にも分かるように解説していきます。

先生!「ステマ」って何ですか?

「ステマ(ステルスマーケティング)」という言葉が、まだあまり知られていなかった2009年から2010年にかけての話になりますが、私はWOMマーケティング協議会のガイドライン作成委員(プロジェクトリーダー:藤代裕之さん)として、藤代さんのほか、濱田逸郎さん、山口浩さん、岡本真さんたちと共に、WOMマーケティングのガイドラインを作成しました。

ガイドラインは、関係性明示と社会啓発の2つの原則を示したシンプルなものです。ポイントは、依頼者と情報発信者の関係を明らかにすることで、消費者(読者、聞き手など情報の受け手)が判断できるようにすることです。

WOMJの基本理念に「消費者の利益にならないものは、WOMマーケティングではない。消費者が正しく、多様な情報を得る権利を最大限尊重する」と書いてある点をより明確に示したものです。

<WOMマーケティング活動ガイドライン>(発表当時)

関係性明示の原則:WOMマーケティング事業者は、どのような関係性において、WOMマーケティングが成立しているかについて、消費者が理解できるようにしなければならない。関係性とは、原則として金銭、物品、サービスの提供とする。

社会啓発の原則:WOMマーケティング事業者は、1が実現するように必要な啓発活動を行うとする。

[引用]WOMマーケティングのガイドラインを発表しました ガ島通信:2010.3.13

当時、JARO・JIAA主催の講演などにもお呼びいただき、度々解説をさせてもらっていました。このガイドラインは、その後の追加改定を経て、現在も引き継がれています。

まず、ステマはやってはいけません。これは大前提です。両者の垣根が下がっているように見える方もいるかもしれません。しかしその「境界線」は明らかです。

先生!ステマとPRの境界線はどこですか?

「ペイドパブ」であるにも関わらず「広告」の表記がない記事は消費者に優良誤認を導く可能性があります。記事を偽装した「広告」を掲載したりして、宣伝とはわからない形で宣伝を行い消費者を欺く行為が「ステマ」です。やってはいけない行為には、第三者的な立場を偽装して、消費者が宣伝と気付かれないように商品を宣伝したり、クチコミ情報を発信したりする行為も含みます。

「ペイドパブ」の本質は(偽装された)「広告」です。見た目は「記事」であっても、媒体名、掲載枠、掲載時期、掲載内容などは、クライアントが支払う媒体料金に応じて交渉され事前に確定します。

一方、記事(編集部)への掲載を促進する活動は「ステマ」ではありません。多くの企業がプレスリリースを発行し、記者会見を行います。これらは「掲載」を促進するパブリシティ活動でありPRの一環です。

また、直接メディアに担当者が個別に出向き、新商品の説明を行うような場合もあります。逆にメディア側の記者やライターが企業を訪問し、店舗や開発者にインタビューをすることもあります。メディア露出に際してメディアに媒体費を支払いません。掲載枠、掲載日時、掲載内容等は事前に保証はされません。

メディアへ持ち込む「ネタ」の内容と同時に、持ち込む時の「切り口」や「タイミング」などで掲載の可否が決まります。ここがPR担当者の腕の見せどころになります。

以上のように、「ステマ」と通常のパブリシティ(PR活動の一環)との境界線は、本当は明確です。

企業が行うリリースは、古くは企業の広報担当者が個別に名刺交換などを行ったメディア関係者や新聞記者などに、FAXなどの一斉送信機能を使って送られました。これはほんの15年くらい前までの話です。その後、メールが普及したので、PDFやワードファイルを添付する形に変わりました。

しかし、ネットが普及し、企業が行うプレスリリースの目的や意味が様変わりしてきました。それまでは、マスメディア(新聞・テレビ・雑誌・ラジオ)での露出を通じて社会に情報を伝播させることを目指していましたが、近年はマスメディアに限らず、ネット上での情報拡散が目的の1つとして数えられるようになりました。

特に中小企業やEコマースを行う企業は、マスメディアでの露出よりも掲載の可能性が高く、ビジネス(購買)に直結しやすいネットメディアでの露出を重視することも多くなりました。

企業からのリリースをPR会社が代行して発行することがあります。では、リリースを発行した後、企業の広報担当社や一般的なPR会社はいったいどういう活動をしているのでしょうか。

次ページ 「先生!PR会社って「ウラ」で何をやってるんですか?」へ続く