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なぜ日本企業の「デジタル・シフト」は壁にぶつかるのか?<デジタル・シフトVol.1>

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文・田島 学氏 アンダーワークス 代表取締役社長

購買、さらに購買後も点在するデジタル接点

画像提供:shutterstock

私はインターネットの登場以降、約20年にわたって企業におけるインターネット(今ではデジタル、テクノロジーですが)の活用を支援する仕事に携わってきました。アンダーワークスは2006年に創業し、以後デジタルマーケティングにおける、上流部分の戦略策定に特化したビジネスを展開しています。

この20年の自分自身の仕事を振り返ると、企業のデジタルマーケティングに求められる役割の変化を感じます。

インターネットが登場した1990年代、デジタルは企業にとって新たなチャネル、メディアが増えたという位置づけでした。当初はWebサイトの開設から始まったため、このデジタルはプロモーションの軸で捉えられ、商品やブランドの「認知」など消費者との最初の接点になることが多かったと思います。いわば、既存のチャネルとデジタルを分断していたと言えるでしょう。

しかし今では①情報収集、②購買、さらに③購買後の使用シーンにおいても、デジタルのが浸透しています。消費者の購買プロセスのあらゆる場面にデジタル接点が点在する「デジタル・シフト」した現在のような環境下では、マーケティングを「立体的」に捉えた施策を実施しなければ、消費者にとって適切な体験(デジタル・エクスペリエンス)が提供できません。

具体的には「(顧客)データ」「チャネル」「テクノロジー」の3つの軸を組みあわせたエクスペリエンスの提供が私の考える立体的マーケティングです。このコラムでは全6回に渡り立体的マーケティングを実現し、企業のデジタル・シフトを推進するための考え方を解説していきたいと思います。

デジタル・シフトする消費者の日常

情報収集から購買に至るまで、消費者の日常がデジタル・シフトしていることは、ご自身の生活を振り返っても理解いただけると思います。そして、このデジタル・シフトは従来では、到底実現できなかった一人ひとりの消費者のニーズを実現できる環境を整え、消費者の意識や情報収集行動、購買行動に大きな変化をもたらしています。

時間や場所といった物理的な制約を超え、消費者のニーズが実現できる環境が整いつつあります。

「いつでも、どこでも、すぐに」のニーズは、最も物理的な制約が多かった購買時点においても同様に強まっています。米国ではEC化率がすでに約6%に達していると言われていますが、日本ではまだ4.37%(2014年・経済産業省調査)。日本においても、この比率は今後、高まっていくことは確実です。

これまでのECはリアル店舗をオンラインに置き換えただけの「デジタル版通信販売」の意味合いが強かったと思います。ところが最近は、既存の財・サービスをインターネットで販売する販売“量”のシフトだけでなく、“質的”な転移も進み始めています。

その一つが一度注文すれば、自動的に特定のタイミングで購入が完了し、商品が手元に届く「サブスクリプションコマース」です。そして、サブスクリプションコマースには2つの種類があります。一つがAmazonの「定期お得便」に代表される調達型の定期購入型。生活日用品の購入の際などに、注文の煩わしさが省けることが価値となっています。

もう一つが特定のテーマにおいて業者側が商品の内容を毎回セレクトしてくれる定期購入サービス型です。代表的な例としては、世界中のビューティーアドバイザーが、ユーザーのためにセレクトしたサンプル製品を毎月届ける会員制サービス「GLOSSYBOX」が挙げられます。後者のモデルはキュレーション機能、セレンディピティ(偶然の出会い)創出が大きな価値となっています。

次ページ 「デジタル世界でコア・コンピタンスを再現する」へ続く