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飲食店以外にもニーズあり 貸おしぼり業界の未来を切り拓く

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第5号(2015年11月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

 

成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。

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藤波 克之
藤波タオルサービス 代表取締役社長

1974年9月11日生まれ。法政大学社会学部応用経済学科卒。NTTグループ勤務を経て2004年に家業である藤波タオルサービスへ入社。2009年に代表取締役専務、2013年9月より現職。

貸しおしぼり業界で高付加価値商品

飲食店で着席すると出てくる、おしぼり。冬には熱々に温められ、夏にはキーンと冷やされたおしぼりを出されて、心が和んだり、リフレッシュできたという経験のある人は少なくないはずだ。日本ならではのおもてなしのサービスだが、このおしぼりレンタル業界で躍進する企業がある。それが藤波タオルサービスだ。「抗ウイルスおしぼり」「アロマおしぼり」など時代のニーズに即した新商品を開発し、レンタルおしぼりの市場に新しい風を吹かせている。

そんな革新を生み出すのは、藤波タオルサービスの藤波克之氏。創業者である父から事業を引き継いだ、2代目社長だ。日本においてレンタルおしぼり業が生まれたのは、高度経済成長期の頃。それまでも、日本の飲食店ではサービスとしておしぼりを出す習慣はあったが、経済成長の波の中でファミリーレストランに代表される、全国チェーンの大規模飲食店が勃興。店舗規模が拡大すれば、自社だけで対応するのは難しい。ここでレンタルおしぼりというサービスの市場が生まれたのだ。そこでは、藤波タオルサービスはおしぼり以外の飲食店運営に必要な消耗品にも取り扱いを広げることで、飲食店ビジネスと共に成長を図ってきた。

2013年に父の会社を引き継いだ藤波氏。しかし、当初は会社を継ぐつもりはなく、家業とは全く異なる領域の情報通信業界で仕事をしていた。「父が病気をしたこともあり、私が実家に戻らざるを得ないという状況の中で、家業を継ぐことに。両親の背中を見て育ってきたので、レンタルおしぼり業がとても良い商売であるという理解はありました。一方で、世間的にその業態が十分理解されておらず、偏見のために悔しい思いをしたこともありました」と藤波氏は話す。

消毒のにおいに着目 香りを基点に商品開発

レンタルおしぼり業界自体のイメージをアップすることに、自分の使命があるのではないか。そして、その使命を果たすことで、父から継いだ会社をさらに発展させることができるのでは。そんな思いから、新たな展開を模索していくことになる。そこで藤波氏が着目したのが「おしぼりのにおい」だった。

「藤波タオルサービスに入社した頃から、おしぼりの消毒のにおいが嫌だなと思っていたんです。このにおいを変えることで、新しい商品を開発できるのではないかと考えるようになりました」。

20代の頃、マーケティングを学んだ経験のある藤波氏。マーケティングの4P戦略(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:プロモーション)に沿って、女性を対象にしたおしぼりの開発を模索し始める。そこで生まれたのが「アロマおしぼり」だ。さらに藤波タオルでは、この「アロマおしぼり」をさらに進化させ、タオル自体の素材にもこだわり、現在はベトナムに複数のタオル製造協力工場を有する。

シトラス系のアロマオイルの香料を配合した「アロマペーパータオル。」

女性の心をとらえるおしぼりの開発を模索。

商品に合わせて新たな法人営業先を開拓

「おしぼり業界全体のイメージを高めたい!」と熱い思いを語った藤波克之社長。

しかし、これまで通りに飲食店だけを対象にしていると、藤波タオルの高付加価値商品はコスト面で営業が難しくなる。そこで、藤波氏は高付加価値の貸しおしぼりを使ってもらえそうな新たな法人の開拓を始める。

「まず、最初に攻めたのは自動車販売店でした。おしぼりの起源は、江戸時代に旅人が旅籠にたどり着いた時に、水で濡らした手ぬぐいを絞って出したことが始まりと言われています。つまり用途は食事の前だけに限定されているわけではないんです。お客さまに対して、もてなしの心を伝える、ファーストコンタクトにもっとおしぼりが使われてもいいのではないか、そんな観点で着目したのが自動車販売店でした」。

藤波氏のこの読みは当たった。飲食店では高価格に受け取られる藤波タオルの商品だが、販売単価が高く、常に接客の質の向上を目指す自動車販売店のニーズにマッチしたのだ。以後、美容室や高級化粧品販売店など、販路を次々と拡大してきた藤波タオル。その根底にあるのは「伝統と革新」をテーマに業界の商慣習に捉れない挑戦を続ける、藤波氏の経営姿勢である。

「まだまだ、おしぼりという業態の中でも、いろんな商品の可能性があると思っています。特に私がこれまで着目してきたのが、人の五感。香り、触感、見た目や温度などに着目することで、おしぼりの可能性を広げることができたのだと思います」。

藤波氏が考える付加価値は、五感に関するものばかりではない。昨今の世界的な衛生意識の高まりに合わせて、VB(抗ウイルス)おしぼりを開発し、特許を取得した。東京工業大学・慶応義塾大学発ベンチャーとの共同研究を基に、「ポリ酸」の抗ウイルス機能の活用を事業の核に据えて設立したVBジャパンテクノロジーで開発したもので、同社の代表は藤波氏が務めている。VBレンタルおしぼりを導入している店舗には、サービスとして特製のステッカーを配布し、店頭に貼ってもらっている。安心・安全な自社ライセンス商品を消費者に向けてアピールする、プロモーションにも余念がない。

「続きは100万社第5号本誌をご覧ください」


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