「ブレーン」編集長 篠崎日向子
「ブレーン」新春号では初となる、読者の投票によるベスト広告を発表した。au三太郎、慶早戦ポスター、カロリーメイト、ライザップなど、上位に選ばれた広告に共通しているのは、SNSで拡散され話題になったこと。CMだけではなく、ポスターも同様、例え一か所で掲出されたものであっても、SNSによって全国で“見られる”ことになる。
言うまでもなく、広告とSNSはもはや切っても切れない関係にあると言える。それに伴い、企画段階からSNSでの拡散、話題化を狙った広告も増加。動画の活用とあいまって、こうした手法は企業の大小を問わず、スタンダードになりつつある。
しかしSNSで話題となり、CMや動画の再生回数が増えたとしても、果たしてそれでよいのだろうか。本来伝えるべきメッセージが、きちんとターゲットに届いているのか。その表現や手法は目的にかなっているのか――。“話題”になったことの効果指標については各社各様だが、こうした手法の広告が増えていく中、今後その効果検証をよりシビアに見ていく必要がある。
動画、デジタルクリエイティブが浸透するにつれ、従来の広告クリエイターの領域を超えた発想、表現、手法が求められている。
しかし、一人のクリエイターがそれらを全うするのは難しい。それを実現するためには、新たに求められる領域のスキルを持つ人材を自社内に積極的に採用する、あるいは専門領域の会社と協業していくことが必至だろう。
既に制作会社間での協業が始まり、新ユニットもいくつか登場している。個人としても、会社としても専門性を極めながらも、新しい領域に拡張すべく、知識はもちろん、一人ひとりがまずはその意識を持つ。それが新たなクリエイティブの可能性や領域を切り拓く。
新しい手法や技術に目が奪われるが、求められるものが多様化し、領域が拡張する今だからこそ、広告本来の役割とは何であるのか、その足元を見直す時期が来ているようにも思う。
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