特例的にアートディレクターからプランナーに転向
佐藤:昨今の現代美術館でやったのもクレームなんて当たり前だよ。
権八:文部科学省に対する檄文の。
佐藤:会田の展示にはクレーム来ますって。その前の六本木でやった「天才でごめんなさい」もいろいろ言われましたけど、当たり前で、そもそもあれを一堂に会することがまずいよね。それ用につくってないから。1個1個そのつど見るようにつくっているのに一堂に会したらそりゃ気持ち悪いよ(笑)。
澤本:そうだよね。女子高生をミキサーにかける絵などはちょっと。
佐藤:すごかったですね。僕も気持ち悪いと思ったもん(笑)。ヒルズのあれは展望台とセットになっていて、展望台に行った人は無料で見られたんですよ。俺が見ている最中におばさん3人が「いやーー!」って駆け抜けて行ったり、黙っちゃう親子連れとかけんかしてるカップルもいた(笑)。
権八:ヒルズの上の一番最上階で。
澤本:でも、いつの間にか偉大なアーティストに。
佐藤:巨匠ですよね。だから、絵を描けば儲かるんですよ。でも、描かないの。全然描かない。嫁さんが「描いてくれ、描いてくれ」と言うけど描かない。海外にコレクターがいて、次の作品を待ってるんですって。すごいですよ、あの描かなさ。
一同:笑
佐藤:すぐ酒を飲んじゃう。「ファンです」という人が来ると「本当ですか? 僕も君みたいな人に会ってみたかったんだよ」と言って、めっちゃ緊張して酒を飲んじゃうから、ベロベロになって。面白いんですよ。
中村:佐藤さんはアート職だったんですか?
佐藤:アート職で入りました。
権八:そうか。そういう成り立ちの話。もう20年ぐらい聞いていないけど。
佐藤:知ってるよね、君。
権八:もともとアートディレクターで入ってるのに。
佐藤:そう、どさくさまぎれにプランナーになって。普通なれないんですよね。
中村:そういう転向ってあるんですね。
佐藤:珍しいです。アートディレクターから入って、プランナーになるのってなかなかないんですけど、当時、局の編成替えのどさくさでしてもらったんですね。
澤本:もともと希望はしてたの?
佐藤:してました。だから1年経ったときに僕のメンターだった込山さん(※注 JR東日本「青春18きっぷ」キョンキョンの「ジャンジャカジャーン」などで有名な巨匠AD)に「アートディレクター辞めたいです」と言ったら怒られて。「ふざけんな、お前」って(笑)。それで次の年から杉山恒太郎部に入り、そこに古川裕也さんなど野獣がいっぱいいたわけですよ。白土謙二さん、佐々木宏さんもいて、大変なことになったよね。
澤本:すごい局でしたよね。
権八:電通4CD局ね。何かで読んだけど、ある日、会社に行ったら佐藤雅彦さんが床に寝ていて、壁に何か書いてあったと。
佐藤:「答えは必ずある」と張り紙に書いてあって寝てた。「ない」と思いながらみんな仕事をしていた(笑)。
権八:仕事で何日も徹夜してるってことですよね。
佐藤:そうですね。寝ないほうがアイデア出るって。出ないですけど。
中村:権八さんは電通で新人だったとき、由紀夫さんと近い部署だったんですか?
権八:僕は大学2年のとき、クリエイティブ塾に行っていて由紀夫さんが先生でいらして、いろいろ見てもらったりしました。入社してからも4CDで、当時は岡さん、多田さん、由紀夫さん、大島征夫さん、佐々木宏もいるし、白土さんもいるみたいな。
中村:モンスターがうじゃうじゃいる(笑)。
権八:恐ろしい魑魅魍魎がいっぱいいて(笑)。配属のとき4CDに入りたいと思った記憶がありますね。
中村:そのとき新人の権八さんは由紀夫さんから見て、どんな方だったんですか?
佐藤:僕はクリエイティブ塾で先生でしたが、「軍手をプロモーションする広告をつくってください」という課題でとんでもない企画というか、エキセントリックな企画で。度胆を抜きつつ、2年生でまだ電通にいれられないんで、「こいつは捕まえておかないとどこかにいっちゃう」と。そもそもモテたよね。就職のときにいろいろな企業の方から声が掛かって。
権八:そうですね、放送局とかね…。まあ紆余曲折あり電通入って。その、軍手の企画のときは、たぶんですけど、ソ連人みたいな(笑)。それは、そのときソ連人という言葉が好きだったんですよ。理由はないんですけど、ソ連の人が軍手をして何かを触るみたいな。そういうものだったんですけど。
佐藤:「ソ連人」みたいな、シズる言葉というか、それ来るなという言葉とか音をを見つけるのが上手な人がいるなと。権八は上手だった。だけど、ストーリーがあるわけじゃなくて、ノリやドライブ感で何とか乗り切るというタイプ。今もあまり変わってない。
一同:笑
権八:あはは。グルーヴ感というかね(笑)。
佐藤:キャラクターとグルーブさえあればCMはできますからね。
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