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コラム

戦略PR視点で、大学・地方・アートを考える

【特別講義】先生!学生が考える「コンセプト」と、プロが考える「コンセプト」。そのレベルの違いはどこにありますか?

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【前回のコラム】「【特別講義】先生!「企画」と「アート」、乗り越えられない壁があるって本当ですか?」はこちら

筆者は昨年4月から、山形県にある東北芸術工科大学の企画構想学科で教鞭を執っている。1月19日には、筆者の知人でコトバ&グラフィックデザイナーのくすきはいねさんを東京から招いて、企画構想学科の3年生と1年生を対象にした「企画書のデザイン」の演習&講義をお願いした。今回は講義終了後、はいねさんと実施した対談の後編である。

デザインやアートを軸に日々、講義を実施しているわけだが「コンセプト」なるものをいかに生み出すのか、ハウツーで教えるのは非常に難しい。インターンの学生や、若く経験の浅いスタッフと対峙したことがある読者の皆さんにも、そのような経験があるのではないだろうか。そんな筆者の実感をはいねさんにぶつけ、議論してみた。

はいねさんは広告会社や制作会社でデザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクターの経験を経て2012年5月に独立。肩書きにとらわれず、プロデュースからデザイン、コピーライティングまで手がけている。


くすきはいね(写真右)
コトバ&グラフィックデザイナー・アートディレクター。 広告制作、リーフレットや名刺、HPのデザイン・制作までお仕事承ります。「文房具カフェ」プロデュースも。 食べること、飲むこと、笑うこと。ワインだいすき。コスメだいすき。

クリエイティブの力が地域に「人・モノ・カネ」の循環を作り出す

片岡:大学での講義では、僕はマーケット・イン(市場や購買者という買い手の立場に立って、買い手が必要とするものを提供していこうとすること)の立場で目的志向で話をする場合が多いです。

だけど、一周回って、その発想だけだと最近は解決できない課題が多い気もしています。だからといって、反対にプロダクトアウト(提供側からの発想で商品開発・生産・販売といった活動を行うこと)になるわけでもないけれど。

先にクリエイティブやアートの持つチカラがあり、そのパワーが、地域に需要や良い「人・モノ・カネ」の循環を創造していくようなことが実際にあったりするよね。

例えば、ネットの世界だけど、マーケティング思考で、需要やニーズを「満たそう」という目的の作品よりも、もっとピュアな芸術性やクリエイティビティが、評価されバイラル拡散する。特に動画作品とか。

YouTubeにエレクトーンで「スター・ウォーズのテーマ」を演奏するすごい少女がいて、その演奏は決してマーケット・インなわけではないけど、そこで演奏されたサウンドトラックやエレクトーン業界にとっては大きなパブリシティ効果になっている。

はいね:確かにそうですね、それって意図的なものではない分、アート側が計画的にそれをビジネスとしてやっていくのはどうしても難しいけれどマーケティングやPR側からすればそういったものをこう、効率よくつまんでいくことは有効ですね。感度を高く保って、そういったクリエイティブをプロダクトアウト的にうまくPRに活用していくというバランス感覚が必要になってくると思います。

片岡:今まで、デザインとかアートに口出ししなかったのは、そこは自分のプロフェッショナルではないというある種の「逃げ」もあったけれど、ああいう「エレクトーン少女」の存在を実際に知ってしまうと、あれには「勝てない」と思ってしまうのもある(笑)

次ページ 「アーティスト志向の学生が社会性を身につけるためには?」へ続く