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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

鈴木健×田川欣哉×佐渡島庸平「イノベーションが加速する時代にコンテンツのつくり方はどう変わる?」【後編】

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3人それぞれが考えるいい「コンテンツ」の定義とは?

佐渡島:お2人はものをつくる上で、何が「いいコンテンツ」だと考えていますか。

田川:プロジェクトの中では、勝利のタイミングが2回あるんです。まず1回目は事業者(クライアント)の社内的な決裁が通って事業化が決まるタイミング。2回目は、その事業が市場で勝つ瞬間です。1回目で勝つことにフォーカスし過ぎて2回目で負ける場合もありますし、2回目で勝てそうなアイデアでも1回目をクリアしないと実現しません。その2つを、バランスを常に気にかけて判断しています。

個人的には1回目の勝ちに費やす時間をできるだけスピーディーに抜けていくことが大事だと思っています。1回目の社内的な勝利に重きを置かないで済むような決済の仕組みを事前につくることなどが、この展開の早い市場ではとても重要です。そして、2回目の勝ちに継続的にフォーカスできる環境づくりに時間を使っています。

鈴木:スマートニュースの社内でも、良質な情報とは何かをよく議論します。だいたい次の5つになると思います。

①サバイブ(生存)するための情報。天気・災害・戦争についての正確な情報。
②世界の見え方を変える情報。調査報道やオピニオン、分析記事など。
③仕事のための情報。経済やファイナンス、ライフハックなどに関する情報。
④生活のための情報。ライフスタイル、ローカルニュース、交通情報など。
⑤楽しむための情報。エンタメ、スポーツ、カルチャー、グルメなど。

あえて、どの情報の価値が高い、低いと僕は言いたくないんです。それぞれが重要であり、人生を豊かにします。僕個人としては、良質な情報というのは、その人の人生を変える情報だと思っています。

佐渡島:先日、会社の公認会計士と話し合っていて「いい作家に見えるようにすることが大事」と言われたんです。じゃあ「いい作家」って何なのか。単純に考えれば、売れるのがいい作家です。しかしマンガの世界では、単行本が売れるタイプの作家と、雑誌に連載されることで雑誌が売れるタイプの作家がいます。雑誌から単行本にメディアが変わるだけで「価値ある作家」の基準は簡単に覆ります。うちの会社にとって「いい」とは何だろうと考えていたので、質問させてもらいました。

最後に、未来に向けての話を聞かせてもらってもいいですか?

鈴木:2016年からは、新機能を次々と出し、プロダクトをどんどん変えていきます。日本やアメリカだけでなく、世界のありとあらゆるところでコンテンツが読めるようにする。そして世界中のほとんどの人がスマホを持つ時代になったときに、SmartNewsが最高のニュースアプリとして信頼されるようになっていたい。その先に目指すのは、民主主義のプラットフォームをつくること。メディアだけでは世の中は変わらないので、その先も見据えて取り組んでいきたいです。

田川:takramの組織の中にダイバーシティをしっかり組み込んでいきたいと思っています。人材のダイバーシティが、アイデアやコンセプトを生むということはよく言われる話ですが、それがきちんと事業化のプロセスの中で機能していくということを目指したい。それが今の僕の大きなテーマです。

今日はデザインエンジニアリングの話をしましたが、最近takramでは純粋なビジネスプランニングやブランディングの仕事も増えています。そういった新しい部分を会社として発信していくことも、次の一歩になると考えています。

電通報でも記事を掲載中


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鈴木健(すずき・けん)

スマートニュース株式会社 代表取締役会長 共同CEO。1998年慶応義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。情報処理推進機構において、伝播投資貨幣PICSYが未踏ソフトウェア創造事業に採択、天才プログラマーに認定。著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房、2013年)。東京財団研究員、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主任研究員など歴任し、現在、東京大学特任研究員。2006年4月 株式会社サルガッソー設立、代表取締役社長就任。2012年6月スマートニュース株式会社(創業時社名:株式会社ゴクロ)に共同創業者として参画、取締役に就任。2014年6月 代表取締役会長共同CEO就任。SmartNews米国版ローンチのため米国法人SmartNews International. Inc.を設立、Presidentに就任し、2014年10月 日米のニュースを同時に楽しめるSmartNews 2.0を日米同時リリース。海外メディアとの連携を進めながら、世界中の良質な情報をなめらかに発信中。

佐渡島庸平(さどしま・ようへい)

株式会社コルク代表取締役社長。2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエーターのエージェント会社、コルクを設立。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)、『ダムの日』(羽賀翔一)、小説作品では『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の編集に携わっている。

田川欣哉(たがわ・きんや)

デザインエンジニア/takram代表/RCA客員教授。ハードウエア、ソフトウェアからインタラクティブアートまで、幅広い分野に精通するデザインエンジニア。主なプロジェクトに、トヨタ自動車「NS4」のUIデザイン、日本政府のビッグデータビジュアライゼーションシステム「RESAS -地域経済分析システム-」のプロトタイピング、NHK Eテレ「ミミクリーズ」のアートディレクションなどがある。日本語入力機器「tagtype」はニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選定されている。東京大学工学部卒業。英国Royal College of Art修了。LEADING EDGE DESIGNを経て現職。Royal College of Art客員教授。